その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は増田由紀さんの『 家族みんなが楽になる!親にスマホをもっと使ってもらう本 』です。

【はじめに】

 「親にスマホをあげたけど、結局、電話にしか使っていない」
 「こんなこともわからないの? とケンカになって以来、気まずい雰囲気」
 「説明が面倒で代わりに操作していたら、それが当たり前になってしまった」

 この本を手に取ってくださったあなたには、もしかしたら、そんなご経験があるかもしれません。

 はじめまして。増田由紀と申します。千葉県浦安市で25年以上、シニア世代向けのスマホ・パソコン教室「パソコムプラザ」を運営しています。

 パソコン教室としてスタートしたその場は、2011年の東日本大震災で転機を迎えました。あのとき、報道で目にした光景が今でも目に焼き付いています。避難所の壁を埋め尽くす、安否確認の手書きメモ。それを食い入るように見ている人々。その姿は胸を締め付けるものでした。

 でも、私の手の中では、スマホでラジオやテレビが利用でき、SNSには大量の情報が飛び交っています。この圧倒的な差に「パソコンだけを教えている場合ではない。これからはモバイルだ」と直感し、最初はタブレット、次にスマホと、レッスン内容をシフトしていき、今に至ります。

 次の転機は2020年のコロナ禍。猛威を振るう感染症を前に、私たちは隔離を余儀なくされ、特にシニア世代は外出自粛を求められました。

 教室では、早い段階でオンラインレッスンに切り替えました。ある日のレッスンで、一人暮らしの生徒さんが「先生、私、笑ったの1週間ぶりよ」とおっしゃいました。孤立とはこういうことか、と現実を突きつけられた瞬間でした。教室はその後、本格的にオンラインスクールへ移行しました。

 また私は、友人たちの多くの「後悔」も耳にしました。

 「親父にもっと早くデジタルに慣れてもらえばよかった。今、入院中で面会もできない。もう無理かもしれない。せめて、心待ちにしていた初ひ孫の顔だけでも見せてあげたかった……」
 「両親がビデオ通話してくれれば、もっと気軽に様子を聞けるのに。教えに行くこともできないし。増田さんが言っていたように、早めに使わせておくんだった」
 「父が『スマホを使ってみたい』と言ったときに『無理無理!』って突っぱねちゃったけど、由紀さんの話を聞いていたら、父にもできたかもしれないって。父の願いを聞いてあげればよかった……」

 その一方で生徒さんたちは、オンラインで孫の結婚式に参加し、習い事を続け、仲間とのおしゃべりを楽しんでいたのです。この経験を通して 「できないのは年齢のせいじゃない」と悟りました。知っているか、知らないか。隣で伴走してくれる人がいるか、いないか。ただそれだけなんだと。

 これまで延べ1万5000人を超えるシニアの方々と接する中で「私にスマホが使いこなせるだろうか」という不安な表情を何度も目にしてきました。同時に、ほんの少しのきっかけで「できた!」と、ぱっと明るくなった表情もたくさん見てきました。「自分にもできた」という自信は「もうちょっとやってみよう」に変わり、その方の世界がどんどん広がります。

 この本は、そんな私の講師経験から生まれた「親にスマホの使い方を教えるための、お子さま世代に向けた一冊」です。

 「親の質問攻めにあうのは大変そう」
 「何度も同じことを説明するのは疲れる」

 そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、 親御さんがスマホを使えるようになって一番助かるのは、何を隠そうあなた自身です。

 親御さんが「自分でできる」ようになれば、他人頼みの状態から自立できます。 親のスマホデビューを後押しし、伴走することは、新しい時代の「親孝行」と言えるのではないでしょうか。

 この本では、シニア世代がつまずきやすい場面を、登場人物の会話形式でご紹介しています。親御さんが自分で復習できるよう、手順のページも設けました。

 この本のゴールは、ただ操作を覚えることではありません。 親御さんが自立し、スマホを使って自分の「好き」や「楽しい」を見つけ、自信を持って使いこなせるようになることです。

 最初はどうしても、あなたの手助けが必要です。でもその先に、双方が楽になる未来が待っています。この本がそのお手伝いができることを、心から願っております。

増田由紀


【目次】

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