その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は神谷有弘さんの『 知能化・電動化が進む車載製品の信頼性を支える 熱マネジメント 』です。
【はじめに】
熱の分野に関して学ぶべきものをまとめたいと思った時、その範囲をどこまで広げるかについて考えてみました。熱は、私たちの暮らしの中で身近な存在です。しかし、なんとなく分かっているつもりでも、厳密に説明を求められると、どうもきちんと答えられない。そんな感覚が「熱」にはあるのではないでしょうか。
この本は、放熱を中心にまとめています。熱を理解した上で、放熱を含めた「熱マネジメント」を考えたいと思い、熱に関わる工学分野を整理してみました。
熱の正体を明らかにし、その利用を考える基礎的な分野として「熱力学」があります。また、熱がどのように伝わるかを理解するための基礎として「伝熱工学」があります。これらの学問を発展させたエネルギー変換には「熱機関」があります。そして、「熱」エネルギーを効率的に利用する分野として「熱工学」、あるいは「エネルギー工学」があります(最近は環境と効率的エネルギー利用を実現させることが、循環型社会の実現「SDGs」でも謳(うた)われています)。
「熱」「電気」「化学(燃焼を含む化学反応)」「機械(運動)」の各エネルギーの相互変換の集大成として、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)があります。その分野は「自動車工学」につながっています。本文でも触れますが、実は「熱」という表現は正確ではなく、厳密には「熱エネルギー」であり、これを簡便にするために単に「熱」と表現しています。
このように、「熱」に関わる分野はすそ野が広く、さらに相互の関連性が高いので、熱マネジメントを考えるためには、それぞれの分野についての専門書をある程度は読めるくらいの理解が必要となります。 そこで、各分野に関して導入部分にも触れながら、本書をまとめることにしました。
本書は、基礎編、実務編、将来編の3部構成となっています。
第1部の基礎編では、第1章で熱の正体を理解し、続く第2章では、その熱利用のための基礎知識の整理を行っています。
第3章では、引き続き理論に基づき、どのように熱エネルギーを利用するかという考え方を説明しています。そして、第4章では、様々なエネルギーが最終的に熱エネルギーになる場合、そのエネルギーは損失として対象物の温度上昇という現象になるので、対象物の温度上昇を抑制する手法を理解するための熱の伝わり方を説明しています。
第2部の実務編では、第1章において空調と駆動、製品の熱制御を1つの熱制御システムとしてどのように考えるかについて簡単に整理しています。続く第2章では、一般的な車載電子製品の熱設計の基礎知識を整理しています。
第3章では、第2章での考え方を基に、センサー製品と制御製品〔電子制御ユニット(ECU)〕、アクチュエーター製品のそれぞれについて、固有の熱設計について事例を基に解説しています。そして、第4章では、その中でも、アクチュエーター製品として様々なインバーターを取り上げ、その設計思想と熱設計の考え方を解説しています。第5章では、車載電子製品に使用する熱対策用材料に求められる特性をまとめました。そして、実務編の最後となる第6章では、第4章で取り上げた各種インバーターの構造を理解しやすいように分解構造を紹介し、そのポ
イントを解説しました。
第3部の将来編では、第1章で今一度、熱エネルギーを含めた様々なエネルギーの性質を整理し、利用するためのヒントをまとめています。そして、最後に第2章として、車両の電動化における必須部品であるインバーターの製品動向を車両プラットフォーム設計の視点も取り入れて整理しました。
車両の電動化で必要な部品は、インバーターを中心としたパワーエレクトロニクス製品です。扱う電力が他の電子製品と比べて3桁以上大きいので、その動作による損失が生む発熱量が大きいという特徴があります。そこで、その発熱処理を行うための放熱技術を中心に解説しました。
インバーターの熱設計を理解するためには、インバーターの構造を理解することも大切です。第2部実務編の第6章を参考に各インバーターの放熱設計を考えた製品全体のバランス設計について思いを巡らせてもらえたら幸いです。
神谷有弘
【目次】








