その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西川英彦さん、佐保圭さんの『 文系マーケターのためのゼロからわかる統計分析 』です。

【はじめに】統計分析が苦手なままでいいですか?

マーケティングに役立つ統計分析を身に付ける

――困ったなぁ。

西川英彦教授(以下、西川) どうしました?

――マーケティングの報告書を読むと、調査データのところに統計分析の結果が書かれているんです。

西川 調査データや、そこから導かれる結論がどの程度信頼できるかを確かめるには、統計分析が欠かせませんからね。

――でも、難しい専門用語や数字がずらっと並んでいると、文系の私にはもうチンプンカンプンです。

西川 なるほど。難しい専門用語や数字から入るのではなく、マーケティングの調査や戦略づくりに生かせる程度の理解で十分、ということですね。

――そうなんです。専門家レベルじゃなくて、意味がわかれば十分です。

西川 それなら大丈夫です。文系の方でも、基本的な統計分析の考え方を理解して、簡単な分析ができるようになるのは、それほど難しいことではありませんよ。

――統計の知識がゼロでも?

西川 ゼロからでも問題ありません。

――でも、統計って難しい計算をするイメージがあって……。なんだか数式はどうも苦手です。

西川 心配いりません。中学で習う数学の知識があれば、統計分析がどんな考え方で計算され、どのように結果が導き出されているのかは、十分イメージできます。

――式が難しそうですが……。

西川 少し難しい式が出てくることもありますが、その式が何を意味しているのかがわかれば大丈夫です。

――なるほど。考え方がわかればいいのか。

西川 そうです。式そのものよりも「なぜその分析をするのか」を理解する方が、マーケティングではずっと重要です。

――でも……。

西川 何か気になりますか?

――マーケティングの資料って、棒グラフに差があれば、「効果があった」と書かれていることも多いですよね。本当にグラフだけで、そう判断していいのでしょうか?

西川 そこが重要です。ただ、その差が「たまたま生じたもの」なのか、「統計的に意味のある差」なのかは、見た目だけではわかりません。

――じゃあ、数字の読み方を知らないと、判断できないということですか?

西川 その通りです。この本では、「結果をうのみにしないための統計分析の見方」、つまり、データの結果をどう読み、どう判断するかを身に付けてもらうことを、とても大切にしています。

――それなら、ぜひ知りたいです。でも、計算はどうも苦手で、分析できないかも……。

西川 実際の計算は、無料の統計分析ソフト「R」(アール)に任せてしまえば大丈夫です。データを入れて実行すれば、面倒な計算はRがやってくれますし、結果もきちんと表示してくれます。

――Rって、難しそうですが……。

西川 最初は少し戸惑うかもしれませんが、基礎からゆっくり試していけば、誰でも使えるようになります。自分で操作してみると理解がぐっと深まり、データ分析がだんだん楽しくなってきますよ。

――苦労はしたくないけど、最小限で身に付くならうれしいです。

西川 では、学びの段階を次の3つに分けましょう。

【この本の学び方】
・基礎編:調査レポートや資料に書かれた統計結果の意味を理解する
・Rで実践:実際にRを使って統計分析を行ってみる
・より深く:統計分析の考え方をもう一歩深く理解する

――「基礎編」だけでも、大丈夫ですか?

西川 はい。「調査レポートに書かれた統計結果の意味がわかればいい」という方なら、基礎編だけで十分です。

――「Rで実践」は、その次の段階なんですね。

西川 その通りです。実際にRを使ってみることで、「基礎編」で学んだ知識がより実践的に身に付きます。

生成AI時代にRを学ぶことに意味はあるのか

――Rが計算してくれるなら、あとはラクですね。でも、最近だと生成AI(人工知能)を使えば、そもそもRを使わなくてもよさそうなものですが?

西川 確かに、生成AIの進化はすさまじいですし、誰でも簡単に使えて便利ですよね。分析の手順を教えてくれたり、結果の説明をしてくれたりします。ただ、生成AIをうまく活用するためにも、統計の基礎は必要です。理由は大きく2つあります。

――2つですか?

西川 1つは、生成AIが示した分析結果をうのみにしないためです。その分析が適切かどうか、出てきた数字や結果をどう読みとるべきか、その結論をマーケティングの意思決定に使って構わないかどうかは、自分で判断しなければなりません。

――生成AIの説明はわかりやすくて助かるのですが、出てきた結果をうのみにしてはいけないということですね。

西川 はい。もう1つは、日常の業務の中で「これはデータで調べられるかも」と気付くためです。どんな分析で何がわかるのかを知らなければ、現場の違和感にそもそも気付くことも、それを問いにして調査や分析につなげることもできません。

――確かに、分析できると知っているからこそ、現場の違和感に気付き、それをデータで調べてみようと思うのかもしれませんね。

西川 その通りです。そうした問いがあってはじめて、生成AIに分析を手伝ってもらうことができます。

――結局、何を調べたいのかが曖昧なままでは、生成AIをうまく使えないわけですね。

西川 そうです。そして、Rを使って自分で分析してみると、データから結果が出てくるまでの流れを体感できます。その経験があるからこそ、生成AIの分析結果も、自分の頭で確かめながら使えるようになるのです。

――だからこそ、実際にRを使ってみることに意味があるんですね。では、最後の段階、「より深く」は?

西川 さらに理解を深めたい人のための内容です。マーケティングに役立てるという目的なら、「基礎編」と「Rで実践」で十分です。

――なんだかワクワクしてきました。知識ゼロからでも自分で分析までできるようになるんですね。

西川 順を追って理解していけば、誰でもできるようになりますよ。

――ぜひ教えてください。

西川 では、一緒に統計分析の世界をのぞきにいきましょう。


【目次】

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