その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はスティーヴン・ケイヴさんの 『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』 です。
これは、生と死、そして文明と人類の進歩についての本だ。
本書の目的は、以下の事実を示すことにある。私たち人間は、他のあらゆる生き物同様、果てしなく生を追求するよう駆り立てられているが、生き物のうちで唯一、私たちだけが、その追求の過程で目覚ましい文化を創出して瞠目(どうもく)すべき芸術品を生み出し、豊かな宗教伝統を育(はぐく)み、科学の物質的業績と知的業績を積み上げてきた。
そのすべては、「不死」を手に入れるための四つの道をたどることを通して成し遂げられてきた、というのが私の主張だ。本書の最終的な目的は、これらの道のいずれかによって不死が実現しうるのかを問い、その答えが私たちの生き方に与える影響や意味合いについて考えることにある。
「歴史は実例によって教授する哲学である」と、古代ギリシアの歴史家トゥキュディデスは書いた。私の専門は哲学だが、本書では歴史の実例も幅広く引き合いに出したし、人類学から動物学に至る多くの学問分野や、その間にあるもの(大学は教科や学部にきれいに分かれているが、実生活はそうはいかない)の見識も利用した。専門外の領域へと分け入るときには、そこでの統一見解におおむね従うよう心掛けた上で、必要に応じて自分独自の主張を打ち出すこととした。
「不死」という壮大なテーマに対して包括的な主張を重ねるのが不謹慎であることは承知している。また、大昔から込み入った議論が続いているこのテーマについて、端的に、そして簡潔に記すという本書の目論見(もくろみ)自体、受け容れられないという方もいるかもしれない。それでも、本書に刺激を受けて、さまざまな知識の細道をさらにたどってくださる読者が一人でもいることを願っている。
【目次】