その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は隈健一さんの『 ビジネス教養としての気象学 』です。
【はじめに】
夏になると、毎年のように猛暑や大雨がトップニュースとして報じられます。地球温暖化という言葉を聞かない日はありませんし、エルニーニョやラニーニャ、世界の異常気象や気象災害といったニュースも日常になってしまいました。2023年の7月には国連の事務総長から、「地球沸騰化の時代に入った」と衝撃的な文言が世界に伝えられました。
温室効果ガスの排出削減に向けた太陽光発電や風力発電の施設は、地方に行くと当たり前の光景になりました。自動車のEV化の動きも世界で加速しています。皮肉なことに太陽光発電や風力発電は気象任せの仕組みであり、気象が読めないと電力需給のコントロールが難しいことも知られるようになりました。
地球温暖化により、すでにさまざまな分野に影響が出始めています。北日本ではサケに代わって暖流系のブリが獲れるなど、地域の水産資源の種類が変わりつつあります。暑さに強いコメへの品種改良も進められています。
猛暑日の増加とともに熱中症の緊急搬送が急増し、さまざまな立場で熱中症対策が進められています。また、気象庁のアメダスの観測によって大雨の頻度が増えてきていることもわかってきました。ハードとソフトの両面から防災対策が進んでいます。気候の変化を背景に、地場産業の見直しから災害に強いまちづくりに至るまで、長期的な取り組みが地域ごとに必要になってきています。
日本の四季と景観は、世界の中でも美しく豊かなものです。これは日本列島における気象・海洋や地震・火山の恵みが関係しています。一方で地震・火山はもちろん、気象・海洋にも災いの要素が多くあり、我が国の宿命でもあります。私たちは、恵みと災いの両面を持つ気象と賢く付き合っていく必要があります。
テレビやネットでさまざまな気象情報に接することが多くなりました。その中には誤った情報もあり、過剰にアピールされることもあります。正しい情報を選択して最適な判断を下すためには、気象に対する基本的な理解度を高めておくことが重要です。
気象情報や気象データを使う際、難しい点の一つに、誤差を含む予測情報の扱いがあります。気象予測がどのような原理で作成され、誤差がどのように発生するのかを知っておくことで、気象情報・データへの理解が進むと考えます。このため、本書では気象庁で気象データがどう作成されているのかという説明に多くのページを使いました。
私たち日本人が気象情報と賢く付き合うことで、気象の恵みを最大限受けながら、気象の災いを最小限にできることを願っています。本書がその一助となれば幸いです。
(本書の敬称は一部を除き省略しています)
【目次】




