その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は庄司啓太郎さんの『 結果が出る仕事のムダ取り 確実に生産性が上がる実践法リーンオペレーション 』。「はじめに」に相当する「第1章」です。

【第1章】生産性が上がらない企業の実態

1-1 変わる「技術」と、変わらない「課題」

・慢性的に人手が足りておらず、募集をかけてもなかなか集まらない
・せっかく採用できたとしても、十分に教育する体制も時間もない
・若手を少し厳しく指導するとすぐ辞めてしまう
・業務のルールやプロセスが定まっておらず、毎回混乱しながらその場しのぎになっている
・本部から矢継ぎ早に指示が出されており、現場が対応しきれていない
・現場ではいつも同じようなトラブルに振り回されているが、根本的な対策を打てないままにしている
・手書きの書類、口頭での伝達などのアナログな手段がまだ残っている
・現場が指示待ちになってしまい、自発的な改善アイデアがなかなか出てこない
・新しいことにチャレンジしたいが、時間的・人材的・経済的な余力がない
・そもそも課題に気がついておらず、何かを変える必要性を感じていない

 このような状況に皆さんの職場でも思い当たるフシは少なからずあるのではないでしょうか。

 筆者はIT業界に関わっており、日々生み出される新しいテクノロジーやサービスについて見聞きする機会が多々あります。日本でiPhoneが発売された2008年7月から15年が経過しますが、そこから現在に至るまでに様々な「技術的革新」のトレンドワードが躍っています。ざっと次のようなものが思い起こされます。モバイル、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)、RPA(Robotic Process Automation)、Web3、メタバース、ブロックチェーン、ChatGPT──。

 これらのトレンドを大局的に見ると、「あらゆるデータや情報の収集・処理・活用」がそれぞれ高度化する方向に進んでいることが分かります。

 収集:データや情報を、いかに大量にリアルタイムで計測・収集し、一元的に蓄積するか
 処理:蓄積された情報を、いかに処理・演算・分析し、有意な示唆や結果を導き出すか
 活用:処理された情報を、いかに手軽にストレスなくタイムリーに活用するか

 ここ15年でスマートフォンは一人1台の保有が当たり前になり、大容量データを高速にやりとりできる有線・無線の通信インフラが世界中に整備され、演算速度も劇的に速くなり、一方でコストの低廉化も進みました。

 様々な技術的革新が世に出され、スマートフォンの便利さを皆が享受し、リモートワークなどによって効率的に働ける環境が整うなどの利便性は高まっているものの、企業が抱える課題の本質は15年前も今も大きくは変わっていないと感じます。

 技術革新が進めば、企業が抱えている課題は解決に向かうはずです。それにもかかわらず、課題の本質が変わっていないのはなぜでしょうか。

1-2 なぜ生産性が上がらないのか

 筆者はこれまで20年以上の業務経験の大半を「生産性向上」に関する業務に従事してきました。業務改善のコンサルタントとして企業に常駐し、「改革プロジェクト」の推進や実行に携わり、「生産性向上」につながるクラウドサービスのベンチャー企業を創業した後は、多くの商談・面談を通じて、様々な企業の話を伺う機会を得てきました。

 それぞれの企業は、業種・業界・規模も異なります。デスクワーク主体の企業もあれば、現場作業(フィールドワーク)が主体の企業もあります。そして多くの方がこう口にします。

「この業界は特殊で、他の業界とは商習慣もいろいろ違うんです」
「我が社は独特なルールがあるから」
「うちの部署の◯◯さんは本当に特別だから、誰にもまねできない」

 生産性の向上を目指しながら、どこかでそれを実現できない理由を気にしている──。そんな印象を受けてきました。

 一方、そうした企業が生産性を高めるために何も取り組んでいないかというと、全くそんなことはありません。むしろ、数々のチャレンジを重ねている企業が大半です。

 どの企業も、生産性を向上したいと思っていますし、同じような課題感を訴えています。そして、あれこれと取り組んではいるものの、一方で自社固有の事情などを懸念するあまり、本質的な課題解決には至っていません。その結果、社会全体が15年前と同じような症状を訴える状況から抜け出せないでいます。

 本書は、この状況を打破する一助となるべく「生産性向上活動の全体像=フレームワーク」を伝えることを目的としています。このフレームワークを理解・活用すれば、次のようなことが可能になります。

・取り組むべきことの、全体像が分かる
・大まかな順序と、その中で検討すべきことが分かる
・自社でできていること/できていないことが分かる

 一方、生産性向上のためのフレームワークを理解・共通認識としないまま、断片的・断続的なアクションをやみくもに繰り返し、思ったような結果や成果が得られていない企業が多いのではないでしょうか。

 人は誰しもが「健康でありたい」と思っています。ちまたにはダイエットやトレーニングの方法論があふれかえっています。しかし、例えば「10秒でできる簡単筋トレ」をテレビで見たときに、どのくらいの人がその場で実践するでしょうか。さらに翌日も翌々日もそれを継続する人などほとんどいません。当然結果が出るはずはありません。

 きちんと自分の体の状態を把握し、どうなりたいかの目標を立て、そのために必要なトレーニングや食事を組み立て、毎日着実に実践する──。そんな人は少数派でしょう。

 個人でもそうであるのに、企業・組織であればなおさらです。生産性向上活動の全体像の「フレームワーク」を知り、いまの自社の状況がどうなっていて、改善施策を何からどの順番でするのか、今はどこまでできているのか。その全体像を組織の共通認識としないことには、ムダがなく付加価値の高い「筋肉質な」企業をつくることなど、実現するはずはありません。

 本書では、仕事のムダを取り、生産性を上げるためのフレームワークを具体的に示していきます。

1-3 一刻の猶予もない日本

 本書の原稿を執筆している2023年7月、厚生労働省から発表された「人口動態統計」では、調査開始以降初めての事態として「全都道府県において2023年1月1日時点の人口が前年を下回った」ことが報告されました。出生率の高い沖縄県でさえも減少に転じており、人口減少に歯止めがかからなくなっています。

 さらに、日本全体では前年から約80万人の人口減であることも発表されました。出生数約70万人に対して死亡数は約150万人で、純減数は80万人に上ります。この規模は、山梨県や佐賀県、あるいは堺市や浜松市、新潟市のそれぞれの人口に匹敵します。2022年からわずか1年で、それらの県や市の人口がこの日本から消失している事実にあらためて驚くしかありません。

 「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所:令和5年推計)では、日本の総人口は現在の約1億2000万人から、2070年には8700万人にまで30%近く減少し、約4割が65歳以上となる超高齢社会になることが予想されています。このまま人口減少による経済の縮小、国力の低下に手をこまぬいていてよいのでしょうか。子どもや孫の世代に希望ある日本をバトンタッチしていくためにも、少しでもムダを減らし、生産性の高い状態をつくることが、筆者を含めて本書の読者の皆さんに課せられた大きなテーマであると感じています。


【目次】

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