その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日経BP(編)の 『日経テクノロジー展望2023 世界を変える100の技術』 です。
【はじめに】 融合で世界は変わる
技術(テクノロジー)の変化は速いと言われます。Web3やメタバースなど新語が次々に出てきます。GX(グリーントランスフォーメーション)とは何だろうと首をひねっていたら、GX実行推進担当大臣が任命されました。
どんどん変わるからついていくのが大変、せっかく理解してもすぐ古くなってしまうのでは、などと思う方がおられるかもしれませんが大丈夫です。
変化が激しく見えるのは技術と技術が融合するからです。最新技術の多くは、自動車や建設や医療といったリアルな技術と、バーチャルな世界を生み出すインターネットやコンピューターが合体し、新たな世界を生み出そうとするものです。
バーチャルは仮想と訳されますが「本物と同じ」という意味です。デジタルツインの上で再現される製品や都市や人間は限りなく本物に近づいていきます。
東芝の島田太郎社長が以前、「デジタルをやるにはリアルが必要」という趣旨の発言をしていました。エレベーターやPOSシステムといったリアルな技術があってこそ、データ分析やAIなどデジタル技術が生きるわけです。
2006年あたりから言われ始めたサイバーフィジカルシステムズの世界がいよいよやってきます。サイバー(バーチャル)とフィジカル(リアル)の融合です。メタバースは人間のリアルな動きをサイバー空間に取り込みます。Web3はサイバー空間で完結するように見えますが、個人と個人、あるいは芸術と金融とを結びつけるのでこれもまた融合と言えます。
技術に詳しくない方でも「何と何が融合したのか」に注意すると、その技術の位置付けや期待される効果が見えてきます。特定技術に詳しい方は「何と融合できるか」と考えるとブレイクスルーを起こせるかもしれません。
融合の動きを追うために、日経BPは電機・自動車・ロボット、IT・ニューメディア、建築・土木、医療・健康・バイオテクといった専門分野を追う媒体を発行するとともに、日経クロステックというWebサイトで技術(テック)の融合(クロス)の状況を日々報道しています。
各媒体の編集長、BPのシンクタンクである総合研究所のラボ所長らが「2030年に向けて世界を変える技術」を100件選び、個々の技術そして融合の面白さを記者や研究員が分かり易く書いたのが本書です。ビジネスをする上でこれからずっと役立つ技術の図鑑あるいは教養書を目指しました。
100件のうち、どの技術が期待されているかを調べるために、ビジネスパーソン1000人に質問に答えていただき、結果を「テクノロジー期待度ランキング」として掲載しています。ランキングを眺めて「いや、こちらの技術のほうが有望ではないか」と反対のことを考えてみると面白いでしょう。実際、思わぬ組み合わせの技術が融合することがあるのです。
日経BP 常務取締役 技術メディア統括 望月洋介
【目次】