その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は戸田久実さんの『 アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術 』です。

【はじめに】

「1on1ミーティングの時間をとったけれど、何をどう聴いたらいいかわからない」
「違う世代の人が、何を考えているのかがわからない」
「価値観に違いのある人とのコミュニケーションはどうしたらいいの?」
 こんな思いを感じたことはありませんか?

 コミュニケーションの悩みは尽きないもので、わたしのもとには日々さまざまなご相談が寄せられます。これまでに30年間、のべ25万人の人に研修を通して「わかり合うコミュニケーション」をお伝えしてきましたが、コミュニケーションの行き違いのなかには、すぐに対応できるケースもあれば、わかり合うために根気のいるケース、とても大変なテーマのものもあります。
 本書を手にしているあなたも、「人」の問題に頭を悩ませることはないでしょうか。
 人と対話するなかで生じる数多くの問題を解決してくれるのが、本書のテーマである、アクティブ・リスニングです。
 アクティブ・リスニングは、直訳すると「積極的傾聴」を意味し、わたしの解釈では、次のようにとらえています。

  • 相手に話を聴いているということがわかるように表現できること
  • 相手の言わんとすることを正確に理解し、ときには質問をしながら話を引き出し、共感しながら受けとめ、耳を傾けられること

 いま、なぜアクティブ・リスニングが必要とされているのでしょうか?
 それは、人は誰でも「自分の話を聴いてほしい、耳を傾けてほしい、理解してほしい、共感してほしい」という要望を持っているからです。
 そのため、自分の話を聴いてくれる相手に、人は好意や信頼感を抱くのです。
 よりよい人間関係を築くには、相手にわかってもらえるように話すことも大切ですが、いかに相手の話に耳を傾けるかということも非常に重要です。

 とくにここ数年で、価値観の多様化を実感している人も多いのではないでしょうか。
 異なる価値観や意見を持った人たちが一堂に会するなか、いかにコミュニケーションによって違いを埋めるのかということが重要になってきています。
 そのために、相手の話に耳を傾けながら、違いを知り、すれ違いをなくしていくという実践の積み重ねが、以前より求められているのです。
 とくに近年は、部下の話に耳を傾けるために1on1ミーティング(1対1での定期的な面談)の時間を設ける組織が増え、一層聴く力の重要性が注目されるようになりました。
 そこで避けたいのは、貴重な話し合いの場ですれ違いが生まれたり、思い込みで相手を決めつけたりしてしまうことです。長年世代を問わず、本当に多くの人のコミュニケーションの悩みに触れてきましたが、
「相手の話に耳を傾け、話を引き出せば、すれ違いも起きなかったのに……」
 と感じる相談は、少なくありません。

 たとえば、「Z世代はこういうもの」という世代の特徴はあるものの、同じ世代全員に当てはまるわけではありませんよね。相手が思っていること、考えていることに耳を傾けられるようになると、決めつけから起こるトラブルは防げるはずです。
 コミュニケーション不足によるトラブルの回避は、とくにマネジメント層にとっては欠かせない、必須スキルです。
 そして、じつは、コミュニケーションの主導権は「聴き手」が握っています。
 アクティブ・リスニングができる人になると、「この人は、わたしの話をしっかり聴いてくれる」と好意を持たれ、信頼関係を築きやすくなります。
 すると、いろいろな情報が耳に入りやすくなり、人間関係も円滑になってくるのです。
 さらに、相手の話を整理して要約できるレベルにまで聴く力を磨けると、自分の話を整理する力も、自然と身についていきます。

 アクティブ・リスニングができる人が増えたら、仕事でもプライベートでも、トラブルが最小限になり、心理的安全性の保たれた場や人間関係を築くことができます。
 本書が、その一助となれば幸いです。

2023年9月

戸田 久実

【目次】

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