その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は北崎朋希(編著)、有田智一(監修)、都市づくりスキーム研究会(著)の『 都市づくりスキーム図鑑 コモンズを生む世界の注目開発21 』です。

【はじめに】

 首都の玄関口として創建時の姿に蘇った「東京駅丸の内駅舎」、廃線跡を緑豊かな空中公園に変貌させた米国ニューヨークの「ハイライン」、英国ロンドン都心を貫通し東西の移動を一変させた都市鉄道「エリザベスライン」――これらの実現に都市開発の公共貢献が活用されていることはご存じでしょうか。

 都市開発というと、オフィスや住宅、商業施設などの建設を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、その役割は建物だけにとどまりません。開発によって生み出される利益を活用し、駅や公園などのインフラ整備、歴史的建造物や自然環境の保全、地域の文化や産業の育成を支える取り組みにも広がっています。こうした、都市開発を通じて地域や社会に役立つ施設や活動を生み出すことは、一般的に「公共貢献」と呼ばれています。本書では、公共貢献を活用した都市が抱える課題の解決を「都市づくり」と捉えています。

 これまでの公共貢献は、許認可や建物の高さ・容量などの規制緩和の見返りとして、開発地の中に広場や歩道、公共施設を整備するものが中心でした。ところが近年、都市が抱える課題は、より複雑になっています。都市全体に関わるインフラ整備、開発地から離れた地域への支援、施設整備後の運営や活動の継続にも対応する必要があります。また、施設をつくるだけでは、その取り組みが長く保たれるとは限りません。公共貢献は単に整備するだけでなく、多様な人々に利用され、愛着を持たれ、受け継がれる都市のコモンズとなるよう、運営の担い手や利用のルール、維持管理の費用まで考えることが求められます。

 こうした都市課題に対応するため、公共貢献のあり方も広がっています。複数の都市開発が時期をまたいで1つの取り組みを支える「共同貢献」、開発地とは異なる場所で地域や環境を支える「遠隔地貢献」、施設整備だけでなく人材育成や地域活動などを支援する「ソフト貢献」です。本書の目的は、これら新たな貢献を実現するために、制度や資金、担い手をどのように組み合わせているのか、すなわち都市づくりを動かす「スキーム」を明らかにすることです。

 本書は、「序章」「ガイド編」「実践編」の3つで構成されています。序章では、私たちが目指すべき都市の姿を考えます。歩いて暮らせること、多様な人や活動が共存できること、住まいや働く場所が手の届く価格であること、環境にやさしく、災害にも強いこと。こうした都市を実現するために、都市開発はどのような公共貢献を担うべきなのかを整理します。あわせて、規制緩和などのインセンティブと引き換えに公共貢献を求める仕組みが、国内外でどのように生まれ、変化してきたのかをたどります。

 ガイド編では、下図に示した通り、新たな公共貢献の参考となる都市づくりプロジェクト21事例と、環境や防災、観光に関するユニークな公共貢献3事例を紹介します。地下鉄や公園の整備、森林・農地や歴史的建造物の保全、アフォーダブル住宅・ワークスペースの確保、地域雇用や文化活動の支援など、都市開発の力が様々な分野で活用されていることが分かるでしょう。各事例では、完成した空間だけでなく、資金の流れや関係主体の役割を図解し、「なぜ実現できたのか」を読み解きます。

実践編では、新たな公共貢献を実際に動かすための条件を整理します。スキームの面からは、貢献を公平に比較するための評価方法、資金や貢献をつなぐ中間主体、多様な対価の付与を取り上げます。ガバナンスの面からは、貢献根拠の明確化、履行担保やモニタリングを検討します。さらに、若手研究者や実務家との座談会、都市法制に詳しい専門家へのインタビューも収録し、制度論だけでは捉えきれない現場の課題や可能性にも迫ります。

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 都市づくりに携わる自治体職員や民間企業の社員はもちろん、この分野への就職を目指す大学生・大学院生にも読みやすいように配慮しました。本書で紹介する事例や仕組みが、それぞれの地域にふさわしい公共貢献を考え、行政や企業、市民が新たな協力関係を築く手掛かりとなることを願っています。

著者一同

【目次】

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