その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は三石原士さんの『 かくれた「強み」をみつけよう。 自分の舞台がみつからないあなたへ 』です。
【はじめに】みつけてもらおう、自分の活かし方。
「自分らしく、はたらく」
この言葉にどれだけの人が憧れ、同時に戸惑いを感じるでしょうか。事実、「はたらく人生」を歩むなかで私たちはしばしば立ち止まり、自分の未来に疑問や不安を抱くことがあります。
「仕事で成果を上げているのに、なぜか満たされない」
「自分に本当に向いている道がわからない」
「仕事は頑張っているけれど、〝自分らしい〞って何だっけ?」
こうしたモヤモヤした想いを、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
本書は、そんな迷いや不安を抱えながらも、自分の強みをみつけて「はたらく」を前向きにしたいと願うすべての人に向けた本です。
ここで私の自己紹介をさせてください。三石原士と申します。転職支援サービス「doda」やプロフェッショナルシェアリングサービス「Hipro」を提供するパーソルキャリア株式会社でコーポレートブランディングやサービス開発をしています。それに加えて、個人事業主としてプロフェッショナル・ファシリテーターとして活動するパラレルワーカーでもあります。いまでこそ充実したはたらき方を実現できていますが、私自身も自分の強みがわからなかったひとりでした。仕事は成果を出していたし、評価もされていた。けれども、なぜか将来に不安を感じていました。そんな私が変わった転機があります。それが、「ひと(他人)の視点を借りる」ことでした。
転機は2015年、4人で行う1年の振り返り会という場でした。これは私の友人が開催していた小さなイベントで、会社や職種、年齢もバラバラな人たちが集まり、参加者それぞれが1年の仕事や学び、悩んだことなどをシェアしながら、ざっくばらんにその年を振り返っていくというものでした。いまの気持ちを素直に話せる心地よい場で、自分のキャリアの悩みや将来の不安をポロリと打ち明けました。
「目の前の仕事に一生懸命打ち込んできた」
「事業やサービスが伸びることに喜びを感じる一方で、このままで自分はいいのかという葛藤があった」
「なんとなく流されているだけなんじゃないか?」
そんな私の声を聞いた参加者の方から、いまの自分につながる視点やアドバイスをもらいました。
なかでも印象に残っている言葉があります。「30代以降は、強みでしか生きられない。だから強みを磨くことに集中し、弱みを誰かに助けてもらったほうがいい」というもの。そして、「三石さんは数字よりも、目の前の顧客が喜んだことを話しているときがいちばん楽しそうですね」というものでした。これらの言葉や視点によって、その後の私のはたらくモチベーションにつながる貴重な気づきを得たのです。
思わずドキッとした体験で、たった30分の対話で、〝ありたい姿〞の輪郭がみえた瞬間でした。この体験をもとに、「自分のことはわかっているようでわかっていない」「自分の気持ちを聴いてもらい、別の視点で自分をみてもらうことで選択肢が広がる」ということを強く思うようになりました。
その後の私は自分の将来について、年齢、職種、業界が違う多様な人の意見をもらい、選択肢を広げていきました。また、診断サービスなどを用いて自分自身の強みや弱み、特徴を把握。お互いの強みを活かし、弱みを補う関係づくりを意識することで自然と力を発揮し、充実した「はたらく」を形にできるようになりました。結果的にマーケティング領域で仕事をしていた私は、その経験を強みにしてファシリテーションやシステムコーチングを学び、組織開発や人材育成の専門家の道を歩んでいます。当時の私には、考えられなかったキャリアですが、この道が「自分らしい」キャリアだと思えています。
そして、この転機となった経験から「誰にも強みはある」「強みを活かせば、思いもしなかったはたらく人生を誰もが実現できる」と考え、第三者の視点を活かした独自のワークショップを開発しました。
このワークショップの名前は、他人に目標を立ててもらうワークショップ「タニモク」。他人に目標を立ててもらうから略して「タニモク」です。ワークショップは誰もが自由に、気軽に実施できるよう無償で提供することにし(商標権は、パーソルキャリアに帰属しています)、映写データや台本など、「タニモク」に必要なツールは公式ホームページからすべてダウンロードできます。3人ないし4人集まれば開催できる手軽さと、規模的には1度に100人以上でもできることから、2018年9月のリリース以降、個人だけでなく、企業や大学・高校、自治体など、開催の場が広がり続けています。
ここで、タニモクに参加された方の声を一部紹介します。
「自分では考えられなかった発想が出てきて、自分のなかのイメージが広がりました。楽しかったです!」
「私を知らない客観的な目標の提案だからこそ、受け入れやすかったです」
「利害関係のない方に自分のことを話しているうちに、自分の本当の想いに気づくことができました」
「こうしたいな、こうすべきだなと思っていたことに、背中を押してもらえました。自分の選択に自信が持てそうです」
「耳が痛いことも、意味のある一歩も教えてもらえました」
本書では、自分らしいはたらき方のために「強みをみつけて、活かす」ことをテーマにまとめています。読者のみなさんが、自分の〝強み〞を見出し、行動に移していくための参考になればという思いで構成しました。
第1章では、「自分の強みとは何か?」を掘り下げていきます。
強みとは、スキルや経験そのものではありません。それを活かして価値や影響が生まれたときに、はじめて〝強み〞になります。もし、「自分には強みがない」と感じる方がいたとしたら、それは〝活かされていない資源〞にとどまっているのかもしれません。
この章では、強みの正体をひもとき、自分ひとりでキャリアを考えることの難しさや、他者の力を借りて、どう自分自身の強みを見出していくのかを明らかにします。
第2章では、「自分の強みをみつけ、どう活かすか?」を5つのステップで紹介します。
視点を切り替え、自分の持っている資源に気づき、それをもとに新しい選択肢をみつけ、小さな行動を試していく──。そんな一歩一歩の積み重ねから強みを明らかにして、周囲との関係性のなかで自分自身を活かしていくプロセスを描きます。
強みは、みつけたらそれで終わりではありません。それを「活かす行動」に移し、「応援される関係性」のなかで、より一層磨かれていきます。あなたらしくはたらくキャリアのヒントが、この章に詰まっています。
第3章では、それまでの章で紹介してきた「強みをみつけて、小さな行動を重ねていく」プロセスを実践できるワークショップ「タニモク」を紹介します。
他者の視点を借りることで、ひとりでは気づけなかった選択肢や強みに出合える──それが、タニモクです。
「他人に目標を立ててもらうなんて、ちょっと不思議」──そう感じる方もいるかもしれません。でも、他人の目を通してこそ、自分では気づけなかった可能性に出合えるのです。この章では、実際に体験した2人のエピソードを交えながら、そんな〝意外な出合い〞をもたらすタニモクの仕組みと効果、そして自分の強みをみつけ、活かしていくための実践のポイントを紹介していきます。
人生やキャリアは、ひとりで歩むものではないと私は考えています。だからこそ、ひとりだけで答えをみつけようとするのではなく、ひとの力を借りて新しい視点を得たり、そこから小さな行動を積み重ねたりしながら、変化を起こし続けていき、周囲も巻き込んでいくのです。
本書が、あなたが思いもしなかった「はたらく」をみつけるきっかけとなることを願っています。
2025年10月
パーソルキャリア株式会社 「タニモク」プロジェクトチーム
三石 原士
【目次】





