その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は市川雄一郎(著)、GFS(編)の『 普通のひとでも富裕層になれる シンプルな投資の学び 』です。「プロローグ」をお届けします。

【プロローグ】

 このたびは本書を手に取っていただき、ありがとうございます。

 早速ですが、あなたは現在どのくらいの金融資産をお持ちでしょうか?

 生命保険文化センターの調査によると、金融資産の平均保有額は、2人以上の世帯で約1800万円、単身世帯で約1500万円とされています。

 「えっ、そんなに⁉」と驚かれた人もいらっしゃるかもしれませんね。

 とはいえ、これはあくまでも「平均値」であり、実態に近い指標としては「中央値」を見たほうが現実的です。

 同調査によれば、中央値は2人以上の世帯で約780万円、単身世帯では約500万円となっています(年代別など詳しくは図表1を参照ください)。

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 さて、私がみなさんに最低限の目標として意識していただきたいと考えている純金融資産額は「3000万円」です。かつて「老後2000万円問題」ということがクローズアップされましたが、これは、2019年に金融庁の「市場ワーキング・グループ」が発表した報告書をきっかけに話題となった問題です。この報告書では、平均的な高齢夫婦の場合、老後30年間で約2000万円の金融資産が不足する可能性があるとされました。しかしその試算には、保有資産を運用しながら取り崩すという視点が含まれていません。

 では実際のところ、3000万円の純金融資産があれば、どのくらいの金額を使えるのでしょうか? ここで少し、シミュレーションをしてみましょう。

 最近は、さまざまな金融機関が資産運用や投資に関するシミュレーション・サービスをウェブ上で提供していますので、そこに実際の数字を当てはめてみることをおすすめします。私はここでは、大和アセットマネジメントの「人生100年時代シミュレーション」をもとに試算をしてみました。

 まず、老後を65歳からの30年間とします。その期間で3000万円を取り崩すわけですが、金利ゼロ、つまりそれ以上に資産が増えることがない場合は、毎月8万3000円を取り崩すと、30年後にゼロになります。

 一方で、資産を運用しながら取り崩していく場合はどうでしょうか?

 老後30年間という長い期間を考えると、すべてを預貯金などで〝守り〟に入るのではなく、ある程度の利回りを見込んだ〝攻め〟の運用を続けていくことも重要だと考えます。

 では、仮に年利10%の運用を30年間継続できたとしたら、資産はどのように推移するのでしょうか? この場合、30年で使い切るとしたら毎月取り崩せる金額は26万3000円、1年(12か月)で315万6000円、30年で9468万円使うことができる計算になります。「10%なんてとても無理!」と思われる方も多いでしょうから、これを5%の運用としてみましょう。その場合、毎月16万1000円となりますので、1年で193万2000円、30年で5796万円使えることになります。

 「老後2000万円問題」に物価上昇の影響を加味したとしても、3000万円の純金融資産を運用しながら取り崩していければ、老後への不安はかなり軽減できるのではないでしょうか。


 実際、富裕層の多くは老後も資産を上手に運用しながら取り崩しており、金融リテラシーの高い行動を通じて、より豊かで安心できる暮らしを実現しています。

 ただ、ここでまず強調しておきたいのは、これは富裕層の人たちに特別な能力があるからではなく、「お金との付き合い方を知っているかどうか」の差に過ぎないということです。

 とはいえ、「自分に3000万円なんて本当に用意できるのか?」と感じる人もいるでしょう。しかし実はこの金額、正しい知識を身につけて、日々実践を重ねていけば、誰にでも手が届く現実的な水準なのです。

 たとえ少額であっても、まずはコツコツと元手資金を増やす意識を持つことが大切です。時折、「少額の投資でも、本当にお金持ちになれるのでしょうか?」という質問を受けることがあります。そんなとき、私は以下のようにお答えしています。

 「想像してみてください。あなたの目の前に、ひと粒のひまわりの種が置かれています。その横には、その種を丁寧に育てるためのノウハウが詰まった本があります。あなたはその本を読み、毎日欠かさず水をやり、陽に当て、手をかけて育てていきます。すると、やがてその種は立派なひまわりを咲かせ、たくさんの種を実らせます。

 その種をまた育てていくと、花はさらに増えていきます。最初は小さくても、正しい知識と行動を積み重ねていくことで、やがて大きな成果につながるのです。

 投資も同じです。信頼できる知識を学び、それを実際の行動に移す。そして、少しずつでも継続して育てていく。その積み重ねこそが、資産形成の第一歩です。

 逆に言えば、少額であっても投資を始めなければ、お金が増えることはありません」


 それではここから、本編に入る前のシミュレーションをお見せしましょう。

 たとえば、NISA(少額投資非課税制度)のつみたて投資枠を活用し、S&P500やオールカントリーといったインデックス型の投資信託で運用した場合、年間の平均利回りはドルベースでおおよそ7〜8%程度とされています。

 このような投資信託で土台をつくることは、堅実な資産設計において非常に重要です。

 さらに最近では、証券会社によっては個別株にも1000円単位での少額投資が可能になっており、より柔軟な投資スタイルがとれるようになっています。

 たとえば、投資信託と株式投資を半分ずつ組み合わせ、平均年利20%で運用できたと仮定してみましょう。「20%?」と思われる方も多いかもしれませんが、ちなみに円ベースで「S&P500」や「オールカントリー」などのファンド(為替ヘッジなし)を利用した場合、概ね10年から20年で10%から15%前後の平均リターンで運用されています。これらのファンドに、しっかり選別した個別株を加えて運用すれば、20%のリターンは十分に到達可能なものと考えます(あくまでも平均年利なので、市場環境によりマイナスになる年もあれば、大幅なプラスになる年もあります)。なお、参考までですが、2023年の日経平均株価は1年で約30%、2024年は同約20%上昇しています。日経平均は225銘柄を対象とする指数ですから、個別で見れば、なかには1年で2倍、3倍、あるいはそれ以上に大きく上昇する銘柄も存在します。

 ①月1万円の投資 → 約5年で100万円に
 ②月3万円の投資 → 約2年3か月で100万円に
 ③月5万円の投資 → 約1年6か月で100万円に

 さらに、そこから3000万円を目指した場合、この100万円を起点に次のようなシミュレーションが成り立ちます。

 ④月1万円の継続投資 → 約16年で3000万円に
 ⑤月3万円の継続投資 → 約13年1か月で3000万円に
 ⑥月5万円の継続投資 → 約11年3か月で3000万円に

 もちろんこれはあくまでも仮定に基づいた試算ではありますが、しっかりと投資について学び、長期的な視点で継続していけば、決して非現実的な数字ではありません。むしろ、やや控えめに見積もったシミュレーションだといえるでしょう。

 なお、金融庁の「つみたてシミュレーター」を使って、「毎月の積立金額」「想定利回り(年率)」「積立期間」の数字を入れるだけで、誰でも簡単にシミュレーションすることが可能です。また、目標の資産額を達成するためにどのくらいの積立期間が必要かについては、たとえばアセットマネジメント One が提供している「資産運用かんたんシミュレーション」などが便利です。

 こうしたシミュレーションを見ると、みなさんも、3000万円の資産を築くことで、将来的には5000万円、さらには1億円規模のお金を使える可能性があることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。


 本書では、その実現に必要な投資の知識と実践力を、わかりやすく丁寧にお伝えしていきます。

 もちろん今現在、資産がまったくないという人でも大丈夫です。年齢、経歴、職業にかかわらず、誰もが再現可能なノウハウをこの一冊に詰め込みました。

 お金が理由で、自分の夢や人生をあきらめないために──。

 どうか、この本の内容を「自分ごと」として受け取り、最後まで楽しみながら読み進めてください。

 あなたの未来は、今日から変わります。そしてきっと、あなたの夢は実現できるでしょう。


【目次】

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