その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大倉得史さんの『 親子の「折り合い」の見つけ方 限りある時間の中で心をつなげる 』です。

【はじめに】

 「早くして!」
 気がついたら、今日も子どもにそう言ってしまっていた。

 本当は、もっと穏やかに関わりたいと思っているのに。
 本当は、子どもとの時間を大切にしたいと思っているのに。
 でも、現実は……朝は時間との戦いで、夜は体力が限界。
 そんな毎日の中で、「理想の子育て」を続けるのは、正直しんどい。

 この本は、そんなふうに感じている方に、ぜひ読んでほしい本です。
 子育てには、「こうするべき」という言葉があふれています。

 子どもに優しく接するべき。
 子どもとの触れ合いに十分な時間をかけるべき。
 感情的になってはいけない……等々。

 けれど、その「べき」をすべて守ろうとすると、親のほうが先に疲れてしまうことがあります。そして気づけば、「ちゃんとできていない自分」を責めてしまう。
 でも、本当にそうでしょうか。
 そもそも、仕事や家事に追われながら子どもを育てている時点で、私たちはもう十分にがんばっています。

 本書では、そうした「べき」を一つずつ手放しながら、親も子どもも少し楽になる子育てのあり方を考えていきます。

 ヒントは「がんばりすぎないこと」です。
 物事は「がんばりすぎない方がうまくいく」こともあります。もしかすると、子育てはその最たるものかもしれません。

 私自身は、二人の子どもの父親です。
 大学では発達心理学を教えています。
 子どもへの関わり方について、保護者や保育者向けに講演を頼まれることもあります。
 若い頃は、「子どものために、こういうふうに関わることが大事です」といったトーンの話をしていました。
 けれど、徐々にいかにも「正しい子育て」の仕方があるかのような話し方に違和感を持つようになりました。

 一番のきっかけは、妻とのやりとりです。
 以前は、妻の子どもへの関わり方について、私が「ここはもっとこうした方が……」と言うことが多くありました。
 けれど、それに対して妻はむしろ、「あなたは全然私の気持ちを分かっていない」と不満をぶつけてくるのです。
 最初は、なぜ伝わらないのだろうと悩みました。
 けれど、子育てについて週に1回、夫婦で話し合う時間を設けるようになってから、だんだんと妻がどんなことに苦しんでいるのかが見えてきました。

 妻は自分なりの「あるべき子育て」を目指して、がんばりすぎるほどがんばっていたのです。
 そんな状況で、夫からもっと「正しい子育て」があるかのような言い方をされれば、腹が立つのも無理はありません。

 夫として、「正解」を提示するのではなく、まずは「いつもがんばってくれてありがとう」と声をかけることが必要だったのです。
 また、妻だけでなく私自身も「あるべき子育て」にとらわれていたことにも気づきました。
 妻のやり方でも、私のやり方でも、子どもはそれなりに育っていくし、むしろそれぞれの持ち味を生かして関わる方が、子どもにとって良いのだということが分かってきました。
 本書は、そうした私自身のほろ苦い経験をもとにして書いたものです。

 たくさん関わろうとするほど、うまくいかなくなる。
 完璧を目指すほど、余裕がなくなる……。
 余裕がなくなると、子どもとの関係も、少しずつ苦しくなっていきます。
 子どもは、「完璧な親」よりも、ゆったりした親を求めています。

 苦しい気持ちでがんばっているお母さん、お父さんより、くつろいだ気分で笑っているお母さん、お父さんの方が、きっと好きなはずです。

 もちろん、毎日の生活を成り立たせていくためには、がんばらなければならないときもあります。
 だからこそ、がんばったときには、どうか自分を褒めてあげてください。

 うまくいかないこともあるけれど、私って、なんだかんだがんばってる。

 どんな発想や工夫をしたら、そんなふうに思えて、少しだけ肩の力を抜いて子育てができるのか。
 本書では、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

著者


【目次】

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