その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は前田昌孝さんの『 株式投資2024 新NISAスタート、大転換を読み解く 』です。
【はじめに】
2024年も株式市場にはいろいろなことが起きそうです。1月に少額投資非課税制度が大幅に衣替えし、非課税期限が無期限で投資上限も大きい新NISAがスタートします。年間の投資上限はつみたて投資枠と成長投資枠を合わせて360万円と、一般の家計には十分すぎるほどの大きさです。「貯蓄から投資へ」の推進役になるでしょう。
11月5日には東証が取引時間を30分延長し、終了時刻を午後3時30分にする予定です。現在、一般の投資家が取引できる立会市場は午前9時から11時30分までと、午後0時30分から3時までの合計5時間ですが、延長後は5時間30分になり、投資家の売買機会が増えます。
同時に現在、午後3時以降に集中している上場企業の決算発表が、前倒しになって、東証の取引時間中の発表が増える可能性があります。現状でも決算発表を受けて最初に反応する市場が私設取引システム(PTS)であったり、翌朝まで売買できなかったりする点が問題になっています。東証はタイムリー・ディスクロージャーの観点からも、取締役会で決算を確定させたら、遅滞なく発表してほしいと呼び掛けています。
株式公開買い付け(TOB)のルールも17年ぶりに見直される見通しです。これまでは市場外取引や取引所の時間外取引を通じて株式の大量買い付けをしようとする場合にTOBが義務付けられていたのですが、見直し後は市場内取引でもTOBを実施しなければならなくなるもようです。
岸田文雄首相が唱える資産運用業改革も一定の進展をみそうです。海外の資産運用会社の参入を促すため、英語だけでビジネスができる「資産運用特区」が創設される見込みです。金融庁は資産運用会社の古いビジネス慣行やトップ人事のあり方に強い懸念を持っているため、さまざまな是正措置が打ち出されるでしょう。
現在、上場企業は四半期ごとに決算短信を発表し、四半期報告書を財務局に提出していますが、4月からはこのうち四半期報告書が廃止されます。今後は半期報告書だけを提出すればよくなり、負担が軽減されます。四半期決算そのものを廃止すべきだとの声もありますが、反対も多く、議論はあまり進展していません。
温暖化ガス排出量などの開示基準が2024年度中に決まります。適用は2025年になる見通しですが、2024年3月末には日本基準の公開草案が公表されるので、各方面で議論を呼ぶでしょう。
プライム市場の上場維持基準を満たしていないのに、もともと東証1部に上場していたとの理由でプライム市場に残留している「暫定組」企業に対する経過措置の終了も迫ってきます。経過措置は2025年2月末に終わります。3月期決算会社の場合は2025年3月期末時点で上場維持基準が満たせなければ、改善計画を出し、その1年後の2026年3月期末になっても計画が未達ならば、監理銘柄に指定され、最後は整理銘柄となって上場が廃止されます。
日本の経済政策や金融政策に関しては、日銀の動きが焦点になりそうです。2023年秋の段階では「再びデフレに後戻りする可能性がある」との判断から、大規模金融緩和政策が維持されています。十分な賃上げが実施され、物価上昇が続くとの判断に変われば、引き締め方向での政策転換がありそうです。「金利のある世界」になれば、株式市場や債券市場にはさまざまな影響が出ると思われます。
東証ではグロース市場の改革論議が始まっています。新興企業を育てる場としての機能を十分に果たせていないためです。日本のベンチャーキャピタルが弱体で、企業が中途半端な状態で上場してくることと表裏一体の話なのですが、実効性ある改革論が打ち出されるかどうか、関心を集めています。
2023年の半ばから始まったことも、2024年には年間を通じて変化が実感できそうです。一部のオンライン証券が2023年秋から国内株式の売買手数料を無料化しました。これまでもNISA口座での取引は無料でしたが、今回は若年層に人気があるミニ株(単元未満株)の手数料も無料にしたため、メリットを受ける個人投資家は多そうです。
オンライン証券のなかには2024年から始まる新NISAでは、外国株や海外ETF(上場投資信託)の売買手数料も無料にするところもあります。
2023年9月7日には東証にアクティブETFが6本、上場しました。何らかの指数への連動を目指すこれまでのETFとは異なり、投資のプロが銘柄を選ぶアクティブ運用の投信が上場商品になったイメージです。一般のアクティブ運用投信に比べてコスト(信託報酬)が低く、リアルタイムでの取引もできるため、海外では人気を集めています。日本での動向が注目されます。
このほか本書の守備範囲ではありませんが、内外には経済的要因や地政学的要因など、株式相場に影響を与えそうなことは山積しています。これも守備範囲ではありませんが、十二支に絡めた相場格言もあります。辰(たつ)年の2024年は「辰巳(たつみ)天井」が当てはまります。その後のことはともかく、天井まで相場は上昇するという意味でしょう。
本書では株式相場の見通しを語るのは控えていますが、株式投資をするにあたって投資家が知っておくべきことを最大限、盛り込みました。基本的に最新の情報をもとに、ゼロから書き下ろしており、一昨年と昨年に出版した『株式投資2022』や『株式投資2023』の焼き直しではありません。
相場が上がるとか下がるとか、どの銘柄が有望かとかいう情報も大切かもしれませんが、その背景を検証し、市場機能に関するもっと幅広い知識を身に着け、いろいろな気付きをえて、賢い投資をしてほしいと願っています。
【目次】






