その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はルディー和子さんの『 男子系企業の失敗 』です。
【まえがき】
なぜ、日本企業は現状維持志向が強いのだろうか。なぜ、日本の経営者は改革という名のもとに改善型経営に徹してきたのだろうか。
安倍晋三元首相も「日本人の面白いところは、現状変更が嫌いなところです」と発言していたように、日本人は他国に比べて、現状維持バイアスが強いのだろうか。
なぜ、「日本の経営者は無能だ」と海外から批判されるのだろうか。一流大学を出て論理的思考にも長けているはずの経営者が、なぜ経営者失格とまで言われるのだろうか。
ソフトバンクグループの孫正義氏は、「日本の人々の素晴らしさは心の純粋さにあると思います。純粋さが単なる真面目で終わることが多いのですが……」と発言している。「真面目さ」と「無能さ」には何らかの関連性があるのだろうか。
こういった素朴な疑問が、この本を書くきっかけとなった。
疑問への答えを見つけるために行動経済学や社会心理学の最近の研究を調べているなかで、日本人の現状維持バイアスの強さが日本の「男社会」と深い関係にあることがわかった。そして、「同質性の高い集団」と「真面目さ」や「無能な経営者」との関係も明らかになってきた。
第2章や第3章でいくつかの調査や研究にもとづいて説明するように、日本企業の男性中心の同質性集団が、現状維持志向をもたらす要因の1つであることが明らかになった。また、1980年代に始まったと言われる日本企業の組織の劣化も、同質性が原因となっていることも明らかになり、その同質性こそが無能と言われる経営者を育てたこともわかってきた。
現在、企業は、多様性をスローガンに組織構成を変えようとしている。多くの経営者や男性社員は、機関投資家を含めた外圧に対応するために多様性を取り入れなければいけないと考えている。
そして表向きには、「多様性はイノベーションをもたらす」と言っている。だが、イノベーションはそう簡単にもたらされるものではない。第3章でも紹介しているが、多様性のある組織を経営するのは面倒なものだし、多様性のある職場で働くことも面倒な一面がある。
多様性をうんぬんする前に、日本企業は、これまでの男性中心の同質性集団がどういった弊害をもたらしてきたかを、まず理解しなくてはならない。同質性集団は日本の戦後の雇用制度の産物だ。
なかでも、1960年代からの、新卒大量一括採用が組織の同質度を急激に高めた。その結果、現状維持バイアスの高い経営者が数多く生まれてしまった。そして1980年代前半には、企業組織の不活性化が始まった。
第4章には「男性中心の同質性集団」がもたらした弊害をいくつか挙げた。そのほとんどが、日本企業で働く誰もが「うちにもある」と納得するものばかりのはずだ。が、なかには、「想定外の弊害」もある。たとえば、日本女性の社会進出が遅れたのは「家庭内での主婦の力が強いから」という説がある。ちょっと驚く意見かもしれないが、企業の「男社会」が家庭での女性の地位を高めたと指摘する学者や有識者がいることは事実だ。
最終章では、日米にまたがる調査や研究にもとづいて、「真面目」について考えてみた。そして、日本のビジネスパーソンが陥りやすい認知能力一辺倒の考え方が、真面目なだけで終わってしまう会社員や経営者を生むのではないかと結論づけた。
「失われた30年」をもたらした原因は同質性男性集団にあると、女性の私が指摘することは、ある意味、当然のことかもしれません。なぜなら、集団に関する認知バイアスのせいで、集団のメンバーは、自分の集団が同質性が高いことや、それがもたらす弊害には気づかない傾向が強いからです。
女性の観点からの「日本企業の組織や経営」批判だと思って、「怖いもの見たさ」、あるいは、「珍しいもの見たさ」といった好奇心をもって楽しんで読んでいただければと願っております。そして、仕事上で役立つアイデアとかヒントを少しでも得ていただくことができたとしたら、著者にとってはこれ以上ない喜びとなります。
2023年10月 ルディー和子
【目次】





