その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は田村正之さんの『 間違いだらけの新NISA・イデコ活用術 』です。

【はじめに】

 「100点満点どころか120点です。スーパーNISA、ハイパーNISAとでも呼んでほしいですよ」。2024年から少額投資非課税制度(NISA)が大幅拡充されることが決まった際、普段は冷静な金融庁幹部が、珍しく興奮した口調でそう話したのを覚えています。

 岸田文雄政権が打ち出した資産所得倍増プランに基づく新NISAへの変化はそれほど大きなものです。日本人の資産形成を一変させる、「革命」とも言えるほどの潜在力を持っています。

 2023年までのNISAは非課税期間が限られていたうえ年間の投資額も少額だったのに対し、新NISAでは非課税期間が恒久化され、毎年の投資可能額もかなり大きくなります。生涯投資枠は元本ベースで1800万円。普通の人には十分な額でしょう。しかも住宅購入資金などで売却したら翌年には非課税枠が復活するなど、ライフプランに応じた柔軟な活用も可能になりました。

 NISA以上に税制優遇が大きな個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)についてはすでに2022年から大きな制度改正が実施されていましたが、やはり資産所得倍増プランでさらなる拡充が指示されました。NISAより少し遅れて2025年に法改正がなされる見込みで、現在改正の議論が始まっています。

 大幅拡充のNISAとイデコ。この2つの制度を使いこなせるかどうかで、資産に大きな格差が生じる可能性は極めて大きいと思います。

 新NISAとイデコの本は、すでにたくさん出版されています。ただその多くは、制度がどう変わるかを解説したものです。この本はそれだけではなく、制度を実際にどのように活用すれば資産を作れるかを、データに基づいて解説することを目指しました。

 なぜそれが必要なのか。2023年までの「旧NISA」ですら、実は枠の多くは使われておらず「カラ箱」の状態。2022年からのイデコ改革も十分活用されておらず、イデコ加入者は300万人強に増えたとはいえ、実は加入可能者のわずか5%にしかすぎません。

 背景にあるのは投資に対する間違ったイメージです。多くの人が「何がいつ上がるか当てなければならない」と思い込み、投資に尻込みしてしまいます。しかし本書に書いたような長期投資のシンプルなルールさえ知っていれば、誰でも老後を安心して過ごせるだけの資産形成は可能です。本書のコラムでも紹介しているように、米国では普通の人が確定拠出年金に15年間投資しただけで、平均で6200万円もの資産を作っています。

 また、資産形成世代や中高年世代のそれぞれにどのような運用方法や商品が適切であるのか、教育・住宅資金をどう適切に準備するかも、データに基づいた選択が不十分のように思います。

 そこでこの本では、NISAとイデコを使った資産形成の様々な「最適解」を、データではっきり示すことを目指しました。「世界に広く投資する場合、積み立て投資よりも一括投資の方が実は資産を増やしやすい」「いつも米国株の成績が良いわけではなく、世界株との勝ち負けは循環してきた」「成長する国や業種への投資がリターンが良いとは限らない」「大学入学資金を長期投資で備えることにリスクはあまりない」「日本の確定拠出年金での投資では債券を含めた資産分散は通常は不必要」など、たくさんの人が意外に感じる内容も含まれていると思います。

 もちろん新NISA・イデコの制度内容についても、セミナー講師などを務めた際に投資家の皆さんと話をしていて、まだまだ「間違いだらけ」と言ってもいい状態にあることも感じていました。誤解の多い点を中心に詳しく解説していきます。

 特に新NISAの成長投資枠という仕組みに含まれる手数料の高い投資信託(投信)については、金融機関は収益を上げるために今後積極的な売り込みをすることが予想されます。このため成長投資枠に登録されている具体的な投信についても見渡し、「買わない方がいい商品」「避けるべき運用方法」もできるだけ具体的に書きました。結果としてこの本は、新NISA、イデコに限らず投資全般の様々な間違いを防ぎ、効率的に資産を形成するノウハウを盛り込んだものになったと思います。

 最後に、大事なことは、せっかく作り上げた自己資金をどれだけ長持ちさせるかです。取り崩しの方法を間違えると、新NISAやイデコで作り上げた大切な資産もすぐに底をついてしまいます。長持ちさせるためにどのように取り崩すか、そして老後の最大の支えである公的年金とどう組み合わせるかもとても重要です。最終章ではこのような「資産の長寿化」についても基本的な考え方を示しました。

 十分な資産を持つことは人生の選択肢を広げ、生きていく自由度を高めます。本書を読まれた方の生活が豊かになり、老後が安心できるものになるように願っています。

【目次】

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