元『日経ビジネス』編集長で、現在はテレビやラジオで解説者として活躍する山川龍雄さん。さまざまなメディアを通して情報を伝え続けてきた山川さんの著書『「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう』を基に、「半分にして話す」ことの真意からコミュニケーションの極意まで、お話を伺います。今回は1回目。(聞き手は、「日経の本ラジオ」パーソナリティの尾上真也)

経済キャスターによる、伝え方の本

尾上真也・「日経の本ラジオ」パーソナリティ(以下、尾上) 今回は『 「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう 』の著者で、テレビ東京解説委員の山川龍雄さんにお話を伺います。山川さんは現在、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の解説キャスター、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」のコメンテーター、「日経サタデー ニュースの疑問」のメインキャスターなどを担当されていますね。

山川龍雄(以下、山川) はい。もともとは雑誌記者で、10年ほど前に『日経ビジネス』の編集長を務めていましたが、テレビに軸足を移して10年くらいになります。

雑誌、新聞、テレビなど多彩なメディアに携わるなかで実際に体験したことから行き着いた、「伝え方」のシン・常識とは
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尾上 今回は伝え方の「本」ですね。

山川 幸せなことに、これまであらゆるメディアに携わってきました。雑誌、新聞、テレビ、『日経ビジネス』のデジタル化、それからテレ東の動画配信サイト『テレ東BIZ』の編集長も3年間務めました。最近はニッポン放送のラジオで解説もしています。

 そのようにさまざまなメディアを経験するなかで考えたのは、伝え方にはコツがあり、そこを押さえられれば、多くの方にとって仕事を進める上での一助になるのではないかということです。書くこと、話すこと、聞くことはそれぞれ違うことですが、共通する部分もあります。この本では、違いと共通点を整理したつもりです。

尾上 それぞれのメディアには、どのような違いを感じますか。

山川 テレビは映像ですよね。報道番組などでは、画力のあるニュースは放映時間を長く取るし、視聴者から注目されます。雑誌や新聞をやっている人間にとって「このニュース、大事じゃないかな」と思う場合でも、映像的なインパクトがないとなると、時間を多少縮めることもあります。

尾上 内容というよりも、画のインパクトが重要なのですね。

山川 はい。映像はテレビにとって付加価値が高いし、実際に優位です。例えば、私も雑誌をやっているとき苦労しましたが、工場の中での機械の動きなどは、どれだけうまく文章にしてもなかなか読者に伝わらない。しかし、映像で見ると一発で分かりますよね。また、「日経の本ラジオ」は音声。スマホを見ながら、作業をしながら、というときに耳だけ傾けておく媒体として、重宝されていると思います。ラジオの言葉、声色は印象が強くて、内容が残りやすいですよね。それぞれに特性があります。

 今回、「何か本を書きませんか」と言われたときに当然、国際情勢や世界経済、マーケットに関する本だろうと思って打ち合わせに行ったら、いきなり「コミュニケーションにまつわる本を書きませんか」と。えっ? と思ったのですが、自分の社会人生活はずっと誰かに何かを伝えることをしてきたんだなと思い、実体験を本に書こうと考えました。

「話を半分」で視聴率が上がる不思議

尾上 その本のタイトルが『半分にして話そう』ですね。

山川 得てして人間は、その多くが要領を得ない話をだらだらとしてしまいがちで、相手に伝えているつもりでも伝わっていません。実は半分くらいに削って縮めた方が、むしろ自分が伝えたいことは伝わります。例えばテレビのリモコンにはたくさんボタンが付いているけど、だいたい5つくらいしか使わないですよね。たくさんボタンを付けちゃうと、むしろ一番大事なボタンが分からなくなってしまう。それと同じで「あれも言わなきゃ、これも言わなきゃ」となると、自分が一番伝えたいことが埋もれてしまうのです。

尾上 山川さんが「半分にして話そう」と思った、そもそものきっかけは何だったのでしょうか。

山川 まさに自分自身の体験です。ニュース解説をしていると、生放送で「解説時間を半分にして」と言われることがあります。2分でコメントしようと思っていたものを、1分に縮めなきゃいけない。準備していたことを全部は言えなくなるから、うまく伝わらないかもしれないと最初のうちは思っていたのです。ただ、テレビには視聴率があり、自分がしゃべっているところで上がった、下がったというのも全部グラフになって出てきます。それで、実は話を半分に縮めたときの方が意外にも視聴率がいいと分かりました。

 結局、余計なことをたくさんしゃべっていたのですね。特にニュース解説だと「こういう見方をしている人もいますが、私はこう思います」「○○の可能性もあります」と、保険をかけるような話し方をしてしまう。実はそれこそが余計で、その結果一番言いたいことが埋没していると、数字上でも分かってきました。それで、時間が押しているときなどにむしろ率先して半分で話すようにしたら、意外とうまくいったという自分の経験が大きかったですね。

尾上 なるほど。短くした方が視聴者の反応もいいと気づいたわけですね。

山川 「○○です」とズバッと言い切ればいいところを、「自分の言うことに何か批判がきそうだな」と思って保険をかけながらしゃべると、どんどん歯切れが悪くなる。あるいは話しながら別のことを思いついてさらに話を続けると、もともと言いたかった結論を否定したり、矛盾するようなことまで言い出したり、結局「この人、何が言いたいのか分からない」ということになってしまうのです。尾上さんも自分で「あれ? もともと何をしゃべろうと思っていたんだっけ」と我に返った経験はありませんか。

尾上 はい、自分の言いたいことにあれもこれも付け加え…テレビに限らず、会議やプレゼンでもそうなりがちですね。

要領を得ない話し方は評価を下げる

山川 そうなんです。公私ともにそうなりがちですが、私がこの本で特に伝えたかったのは、やはり仕事での話し方です。ビジネスの現場では、半分にして伝えることを心掛けた方がいいと思います。

 例えば、上司との打ち合わせ、報告、相談。まずは、相談したいのか、やろうと思っていることに対して承認を得ようとしているのか、アドバイスが欲しいのか、最初に結論から言う。その上で、自分の言いたいことや要点を伝える。上司に何を求めているのかを伝えずに、思いついたことを次から次へと話す人は、会社のなかで「ちょっと要領を得ない話し方をする人だな」という感じになって、だんだん評価も下がってしまいます。そこに早く気づいて、直した方がいいというのが本の趣旨です。

尾上 時間がないなかで上司に時間を取ってもらって話をするとなると、無駄な要素はそぎ落とさないとダメですね。

山川 すべて分かってもらおうと相手にたくさんのことを伝えようとしても、実はそれは逆効果だと、できるだけ若いうちに気づいた方がいいですよね。この本にも書きましたが、若いうちから上司よりもたくさんしゃべる人って、あまり出世していない。だらだらと「自分の思いを伝えたい」という感じの話し方をする人には、早く気づいてほしいと思います。

尾上 端的に伝えようとするのなら、やはり「半分にして話そう」なんですね。

文/三浦香代子 編集協力/山崎 綾 構成/市川史樹(日経BOOKプラス編集)

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