社長は何に時間を使うのか? とにかく一番大事な仕事は「意思決定」で、迷っても先送りはしないのがモットー。ディー・エヌ・エー(DeNA)の創業者であり、26年から社長に復帰した南場智子氏が、社員との接し方についても語る。南場氏の著書『不格好経営 チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版)から抜粋して再構成。
「社長の一番大事な仕事は意思決定」
世の社長は何にどのくらい時間を使っているのだろうか。許されるなら孫正義さんのかばん持ちをしてみたい。風貌が違いすぎて自分のロールモデルとは思わないが、国内ではスケールが大きい経営者だと感じる孫さんが、私と同じ24時間しかない1日をどうやって過ごしているのか、時間配分だけでなく、パソコンのデスクトップに何を置いているのか、独り言は言うのか、ゲームは何をやっているのかなど、いろいろ関心がある。
社長時代の私の時間の使い方はというと、「社長の一番大事な仕事は意思決定」でもあり、実際、決定のための会議が多かった。もちろん、私のところに来る事案はトップマターのみで、それ以外はほかの役員や現場に委ねられているのだが、それでも多くの事案がある。突発事象に伴う意思決定も多い。話をよく聞き、議論を尽くして自分の責任で決める。
この意思決定については、緊急でない事案も含め、「継続討議」にしないということが極めて重要だ。コンサルタントから経営者になり、一番苦労した点でもあった。
継続討議はとても甘くてらくちんな逃げ場である。決定には勇気がいり、迷うことも多い。もっと情報を集めて決めよう、とやってしまいたくなる。けれども仮に1週間後に情報が集まっても、結局また迷うのである。そして、待ち構えていた現場がまた動けなくなり、ほかのさまざまな作業に影響を及ぼしてしまう。こうしたことが、動きの速いこの業界では致命的になることも多い。だから、「決定的な重要情報」が欠落していない場合は、迷ってもその場で決める。
「決定的な重要情報」が欠落しがちな起案者は優秀ではない。そのようなケースはDeNAでは少ないが、それを回避することにも気を使った。事案は決定の場で初めて経営トップに説明されるわけではなく、その前に「頭出し」として、報告を受けることが多い。そのときに、意思決定にはどのような情報がポイントとなるか、大まかにすり合わせておくことだ。そのような方法で、DeNAでは遅滞ない意思決定を実現してきた。
採用活動に多大なエネルギーを注ぐ
社内の状況も自分で把握するために、社員と直接接点を持つことを心がけた。会社が大きくなるとなかなか全員と平等に触れ合うことはできないが、完璧にできないからといって諦めてやめてしまうのではなく、「できる限りやる」と割り切った。
ここで気をつけるべきは、自分が接している情報が断片的であるという自覚を失わないこと。どうしても直接見聞きしたことに大きく影響を受けるのが人情なので、十分すぎるほど気をつけなければならない。
そして、創業期から一貫して多大な時間とエネルギーを費やしてきたのが採用活動である。DeNAの競争力の源泉は、とよく聞かれるが、答えは間違いなく「人材の質」だ。人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずにステージに乗って輝き、④だから辞めない、という要素を満たすことが必要だ。
経営トップの時間の使い方はそのときの課題に応じてトップ自身が決めることではあるが、社長を使おう、使い倒そう、という現場の意気込みが好きで、そういうチームのためには結局よく時間を使うことになる。
私をこき使わなければ私がこき使うよ、などとよく脅しているが、自分の仕事にオーナーシップを持っているメンバーは、必要な仕事を進めるために使えるものは有効に使うもので、そこに社長が含まれている場合も多い。
南場智子著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)

