ディー・エヌ・エー(DeNA)の創業者であり、26年に社長に復帰した南場智子氏が考える優秀な人材とは? その答えは、頑固さと素直さを兼ね備えている人だという。簡単に妥協しないことも一つの要素になりうる。南場氏の著書『不格好経営 チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版)から抜粋して再構成。
オープンに耳を傾けるが、おもねらない
よく学生から、優秀な人の特徴や、性格上の共通点は何かと問われる。そんなことを聞いてどうするのだろうかとも思うが、実際、この質問は考えだすと面白い。
最初は個性がバラバラなので、共通点は考えられない、などと答えていた。実際ひとつのパターンは見いだしにくい。ただ、自分が接したすごい人たちを思い浮かべると、なんとなく「素直だけど頑固」「頑固だけど素直」ということは共通しているように感じる。
例えば新規事業が行き詰まっているとき、誰々に会って話を聞いたらどうか、××という他国のサービスを使い込んでみたらどうか、などというアクションに関するアドバイスをすると、必ず素直に、徹底的にやる。ところが、ターゲットユーザー層をずらしたほうがよいのではとか、機能を思いきって半分に減らしてみたらなど、結論に関するアドバイスをしても心底納得するのに時間がかかる。
いろいろ試したがやっぱり賛成できない、よく考えた結果、やっぱり自分はこう思う、と言ってくることもある。労を惜しまずにコトにあたる、他人の助言には、オープンに耳を傾ける、しかし人におもねらずに、自分の仕事に対するオーナーシップと思考の独立性を自然に持ち合わせている、ということではないかと思う。
「“準”がついた訳を考えろ」
つきなみだが、容易に成果に満足しないというのも共通しているように感じる。先日、新卒入社5年目のある女史と一緒にとあるイベントに出た。彼女は電球のように明るくよく笑う。笑うと顔の半分以上が口になり、白い歯がまぶしい。その彼女がイベントで思い出を披露した。
入社後、営業に配属されると、彼女は「MVPをとります」と高らかに宣言し、そして公約通り2年目早々に準MVPをとった。新卒2年目で200人の対象者から選ばれるのは快挙だ。大きな会場で発表され、皆から祝福され、絶賛の拍手。本人も泣いていた。
が、その涙は悔し涙だったらしい。部門の皆はそんなことに気づかずに急逮お祝い会を催すことになった。行かなきゃいけないのかな…と逡巡していた彼女のところに上司がやってきて、「“準”がついた訳を考えろ」と一撃。厳しいねぇ。彼女は皆に「すみません、お祝い会、辞退させてください」と会場を後にし、会社に戻って仕事をしたという。
イベントでその思い出話を紹介した彼女は、話しながらまた悔し涙が出てきそうになっていた。たまには自分を褒めてやろうよ、と思うのだが、皆そんなもんです、って、みんな、スゴいねぇ。私だったら故郷に電報打つけどね。
そうかと思えば、ずっと自分を褒めている取締役もいる。3年越しで口説いてわが社に来てもらった。もし彼が準MVPをとったら「オレのようなスーパースターに“準”をつけた会社の配慮がこころにくい」と逆に褒められそうだ。誰かれかまわず自慢するので、よくそんなに自慢できるねーと言ってみると、「こんなにイヤミなく自慢を続けられる人はほかにいませんよ」と、また自慢。事実イヤミじゃないところがすごい。やっぱりパターン化は難しい。やめておこう。
南場智子著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)

