世の中で今、起きていることを言葉にする――それがアナウンサーである私の仕事で、いつもそれを意識しています。

 どういう言葉を使えば、今、社会が直面している、ややこしい状況をコンパクトに言い表せるのか。人々が腹落ちするような表現は何か。「要するに、これってどういうこと?」と自分に問いかけ、考え続けるようにしています。

瞬時に論点を整理する方法を鍛えてくれる本

 新しい未来のテレビ「ABEMA」のニュース番組「ABEMA Prime」(通称「アベプラ」)では、台本があってもその通りにはなかなか進みません。出演者の話す内容によって、目の前の状況がリアルタイムでどんどん変わっていきます。そこで、「今の話で少し論点がずれたから、次に聞くべきことをこちらに変えて、流れを戻して…」というように、その都度、優先順位を入れ換えながら整理して、残り時間と着地点を意識しながら議論を組み立てていきます。例えるなら、パズルゲームの「テトリス」や「ぷよぷよ」のように、出てきた意見に応じて、瞬時にパパッと配置を変えながら、密度の濃い議論を目指していくイメージです。

 そんな思考の整理方法や本質の見極め方を鍛えてくれるのが、『 イシューからはじめよ 改訂版 』(安宅和人著、英治出版)です。

 問題を解決する上で最も大切なことは「課題を見極めること」で、そのための「問いの立て方」がさまざまなアプローチから分かりやすく解説されている、すごい本です。

『イシューからはじめよ 改訂版』(安宅和人著、英治出版)/画像クリックでAmazonページへ
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 問題を解く前に、それはそもそも「本当に解くべき問題か」を考えることの大切さを教えてくれます。「アベプラ」でも、「何について話し合うべきか」というテーマ設定は、番組をつくる上で特に重視しています。議論が見ごたえのあるものかどうか、うまくいくかどうかは、「テーマによる」というところも大きい。打ち合わせでも「今、世に問うべき問題か」「なぜそう思うのか?」「本当に答えを出す価値のある問題なのか?」とスタッフととことん意見を交わしながら、「問い」を立てていきます。

「特にこの『問を立てる』部分には、時間と労力を費やしています」
「特にこの『問を立てる』部分には、時間と労力を費やしています」
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 会議も同じですよね。「このことについて話したかった」「それなら私も意見がある」と思えるような本質を突いた問いを立てることができれば、会議がうまくいく可能性がグッと高まります。その上で、会議の目的や論点、必要な情報を参加者と共有しておけば、たとえ会議中に話が脱線してしまっても、「皆さん、今日はこういう目的でしたよね」と議論を元に戻しやすい。

 会議を有意義なものにするには、事前の準備でどれだけ「課題の質」や「目的の精度」を高められるか。本当にやるべきことを突き詰めて考え、そこに注力することです。

「問いをどう立てるのか」「本当に解くべき問題か」を見極める方法をロジックで教えてくれる
「問いをどう立てるのか」「本当に解くべき問題か」を見極める方法をロジックで教えてくれる
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 一方で、「なんとなくやっているふう」「仕事しているふう」で満足してしまうことのないよう、注意が必要です。本書の「プロフェッショナルの世界では『努力』は一切評価されない」「根性に逃げるな」というメッセージに深く共感します。

仕事に「慣れが出てしまう年代」だからこそ、意識していること

 私自身も準備の段階では「何かやっているふう」、そして、番組の放送中は「何か議論しているふう」に陥らないように心がけています。

「仕事に慣れてくると、『やってるふう』も器用にできるようになってしまいますから」
「仕事に慣れてくると、『やってるふう』も器用にできるようになってしまいますから」
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 なんとなく他の番組でやっているようなことをなぞっていないか、「アベプラ」ならではの視点にこだわって、熱量と集中力を高く保つように意識しています。「これだ」と決めてやるからには、心血を注ぎ込んで、「人の心に刺さる仕事」をしたい。

 「なぜいつもそんなに熱量が高いんですか?」と聞かれることもありますが、自分が熱量を持てるところを探して、そこに全力を注ぐようにしています。

 例えば、私は三国志の大ファンで、三国志のことならえんえんと話し続けることができますが、仕事も同じです。ひとつのテーマを調べるなかで、「これってすごく面白いからみんなと共有したい」と思えるような「共感ポイント」を見つける。もともとあまり関心のなかったテーマであっても、調べていくうちに、自分のなかで「これは面白い!」と思えるポイントがきっと何かしらあるはず。そこを入り口にして広げていけば、自分自身の関心も高まって、「皆さん、知ってましたか!?」など、人を巻きこんでいくこともできるようになります。

三国志について熱く語った記事「 平石直之「私は軍師」 『三国志』に学んだ大人の攻守

 私自身、20年以上のキャリアになりますが、仕事に慣れたり、飽きたりしないよう、自分をワクワクさせるのは、自分自身だと思っています。ありがたいことに、現在は週末の「グッド!モーニング」も担当するようになり、新たなフィールドで伝え方を模索しています。週末の朝、心地よい時間をともにしながら、密度を濃くニュースや情報をお届けしていますので、ぜひこちらの生放送も見ていただきたいです。

 「アベプラ」でも、「グッド!モーニング」でも、「このテーマ、斬新だな」と思えたり、「これは皆さんに早く知らせたい」ということが見つかったときには、放送前からワクワクします。これからも「問いの立て方」や「共感ポイント」を意識して、より一層その精度を高めて、生放送の時間と空間を視聴者の皆さんとともにしていきたいです。

取材・文/西尾英子 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部) 写真/稲垣純也