「ステイ・ビハインド・ザ・ボール(ボールの後ろに頭を残せ)」「死ぬほど目標を定めなさい」などの短い言葉の中に、ゴルフというゲームの奥深さと上達の秘訣を教えてくれる、アマチュアのためのゴルフバイブルが『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』。ゴルフはもっと自由なもの、もっと個性的なものと語るハーヴィーが伝えたかったゴルフの神髄とは?

前編 「全世界で100万部を記録した、伝説のゴルフレッスン書」

全ゴルファーの福音書

『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』(ハーヴィー・ペニック、バド・シュレイク著/本條強訳/日経ビジネス人文庫/2005年11月刊)。全世界で100万人以上に読まれている伝説のレッスン書。数多くのトッププロやアマチュアを上達させてきたゴルフバイブル(本書は2023年7月現在、品切れ・重版未定です。古書店、インターネット書店、図書館などで入手することができます)
『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』(ハーヴィー・ペニック、バド・シュレイク著/本條強訳/日経ビジネス人文庫/2005年11月刊)。全世界で100万人以上に読まれている伝説のレッスン書。数多くのトッププロやアマチュアを上達させてきたゴルフバイブル(本書は2023年7月現在、品切れ・重版未定です。古書店、インターネット書店、図書館などで入手することができます)
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 ハーヴィー・ペニックさんがレッスンの神様とうたわれたのは、教え方が上手だったからだけではない。誰にでも平等に熱心に教えたことにある。それは彼の教え子であるトム・カイトもこの本、『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』の中で証言している。

 ペニックさんは、どんなことよりもゴルフを教えることが好きだった。好きなことだからこそ、常に真剣に生徒が上達することを考えた。だから、決して教え過ぎない。薬は効き過ぎがいけないように、ゴルフの教えも多過ぎは危険であることをよく知っていた。

 決して否定的な言い方はしない。常に肯定文で生徒と話していた。そして、生徒にとって効果的なことが見つかるまで、一晩考えることもあった。すぐに教えない、いや、教えられないと思うことこそ、ゴルフ教師ペニックさんの姿勢だった。

1992年に出版されてすぐに全米のベストセラーとなり、その後、世界中のゴルファーに読み継がれ、100万部以上の売り上げになった。今も多くのゴルファーに親しまれている(写真/『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』より)
1992年に出版されてすぐに全米のベストセラーとなり、その後、世界中のゴルファーに読み継がれ、100万部以上の売り上げになった。今も多くのゴルファーに親しまれている(写真/『ゴルフレッスンの神様 ハーヴィー・ペニックのレッド・ブック』より)
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 この本の冒頭では、このコラムを書く私がアメリカでペニックさんに直接会ったことを記しているが、インタビューに行った私は話の先手を打たれてレッスンをされてしまう。ペニックさんはこのとき88歳だった。足が弱くなりカートに乗って看護師さんと一緒に登場した。

 話を聞こうとした私に対し、いきなり持参した5番アイアンを前に出し「グリップしてごらん」と言ったのだ。そう言われたらやるしかない。ペニックさんの一声は「指が短いねえ」だった。そして、日本のプロゴルファーの宮本留吉さんとプレーしたことを話し出したのだ。きっと留吉さんも指が短かったに違いない。そして、私のグリップをセミフックグリップにするよう指導した。アドレスしたときに左手のナックルが3つ見えるようにとアドバイスしてくれた。

「両手ともV字(右手と人差し指でできる)が右肩を指す形がいい。そのグリップは90%の人に合うのです」

 フレッド・カプルスもグレッグ・ノーマンもそのグリップで飛ばしていると言ったのである。

 さらに、ペニックさんは私にアドレスさせ、クラブを振ってみるように言った。この本に書かれているように、空中を振る素振りではなく、芝をしっかりカットするように振れという。カットした場所こそインパクトポイントだと。そして、その場所に食いかけの小さなニンジンが置かれ、打つように言ったのだ。1回打った後に「ヒールアップせよ」と言う。もっとバックスイングを深くせよということであった。そして、2回目を打ってみると、小さなニンジンはクラブハウスの屋根まで飛んでいった。「グッド、グッド」と笑顔のペニックさん。この人は本当に教えることが好きなのだと思った。

 最後に練習法まで教えてくれた。

「週に2回、7番アイアンで60球打ちなさい。それも2回、きちんと地面を打つ素振りをしてから」

 そうすれば必ずうまくなるということなのだろう。

 そのときはまだ翻訳版は出ておらず、英語版にサインをしてもらった。そこにはご本人の名前の他に、“take dead aim”と書かれていた。私はそれを「死ぬほど目標を定めなさい」と意訳した。なぜなら、ペニックさんの目がそう語っていたからだ。

ハーヴィー・ペニック本人から、英語版の『リトル・レッド・ブック』にサインをしてもらった。そこには“take dead aim”と書かれていた。私はそれを「死ぬほど目標を定めなさい」と意訳した(写真/筆者提供)
ハーヴィー・ペニック本人から、英語版の『リトル・レッド・ブック』にサインをしてもらった。そこには“take dead aim”と書かれていた。私はそれを「死ぬほど目標を定めなさい」と意訳した(写真/筆者提供)
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 と、これらのことはこの本に詳しく書かれているので読んでいただくとして、この本の中にあるペニックさん究極の教えをいくつか取り上げてみたい。重要なのに忘れがちな事柄がペニックさんの教えでもある

「ゴルフの薬は効き過ぎるので要注意」

「ゴルフの薬を服用するとしたら、ビンの中にある薬をすべて飲むようなことは絶対にしないでください。ゴルフの薬はよく効きます。副作用が出てしまうのです。

 ゴルフスイングというのは、デリケートなものなのです。だから薬を飲んで、ちょっと変化させただけでも、すぐにまったく異なったスイングになってしまうことが多いのです。小さな変化でも、それを気にしてやり過ぎてしまう。これは人間の性分です。悪い所を改善しようと一生懸命努力してしまう。その結果、全然違ったスイングになってしまって、困惑してしまうというわけです。

 練習は時間が長ければよいというわけではありません。やりがいのある練習をすることが大切です。それが私の言う“レッスン”ということなのです」

「ショートゲームの練習こそ、スコアを5つ縮める方法」

「ショートゲーム。それは魔法の言葉です。スコアが高ければ高いほど、ショートゲームを覚えることによって、早くスコアを縮めることができます。

 これは特に不思議なことではありません。ゴルフをやる人なら、すべてのショットの約半分がピンから60ヤード以内から打ったものであることを知っているからです。しかしアベレージゴルファーがどこにいるかと思って見ると、ほとんどの人が練習場でガンガンとドライバーを打つばかりです。

 アベレージゴルファーにロングショットに対するショートゲームの練習量の比率を尋ねたら、おそらく10~20%と答えるでしょう。しかしこれはほとんどの場合、真っ赤な嘘です。アベレージゴルファーは、最初のティに向かう前に時間があるときだけ、15分ほどパットの練習をするというのが本当のところでしょう。ショートゲームの練習といえばその程度に過ぎないのです。

 1週間かそこらでスコアを5つぐらい縮めるような急激な進歩を遂げたいと思うのなら、まずは練習方法を根本から変えなければいけません。2週間、練習時間の90%をチップとパットに費やし、残りの10%だけをフルスイングにすることです。

 こうすれば95のスコアは必ず90になるはずです。私が保証しましょう」

「スローモーションドリルなら確かなスイングが身に付く」

「スローモーションドリルは自宅でできる練習法です。忍耐が強いられ、何度も繰り返すことを要求されますが、費やしてきた時間は必ずゴルフコースに出たときに報われます。

 ミッキー・ライトは、よくこのドリルを練習していました。スイングのどこかがおかしくなったときにもよく効くドリルなので、このドリルはおそらく最高のものなのでしょう。屋内でできるので、天候の悪い時にでも、夜にでもできます。

 私がスローモーションドリルという場合、ゆっくりな、本当にゆっくりな動作のことを意味しています。あなたがゆっくりやっていると思っていても、さらにゆっくりやってみてください。

 まずはバックスイングのトップまで、クラブを非常にゆっくりとスイングしていきます。目はボールの代わりとなる草の葉やカーペットの模様から決して離さないようにします。このドリルの練習のときに、クラブヘッドが後ろに行くのを見てしまうクセが誤って身に付き、コースに出たときに取れなくなってしまわないように、注意してください。

 バックスイングでトップにたどり着いたら、左足かかとをしっかりと地面に戻すと同時に、右肘を体の脇にぴったりと引き付けます。これも非常にゆっくりやってください。

 ボールに向かって3分の1辺りの距離まで、クラブを極端なスローモーションで降ろしていきます。そこでちょっと動きを止めて、止まったまま、その感触を確かめます。

 その止まっているポジションから、再び同じことをやります。トップに向かってゆっくりとバックスイングし、左足かかとを地面につけ、右肘を脇に引き付け、ボールまでの距離の3分の1辺りで止めるのです。

 これを続けて4回繰り返します。我慢できなくなって、スピードを速めてはいけません。とにかく、ゆっくりゆっくりと行うことが鍵なのです。

 4回繰り返したら、やっとその先に進み、フルスイングします。これも大変ゆっくりとやります。肘を前に突き出した高い位置のフィニッシュまで持っていき、ナイスショットの行方を見るように、頭もゆっくり持ち上げていくのです。そこでそのポーズを静止させ、その感触を確かめます。

 そして、この一連の動作を繰り返し、繰り返しやっていくのです」

ゴルフはもっと自由なもの、もっと個性的なものであるはず。そういうハーヴィー・ペニックの声が聞こえてくるのが、この本です(写真/筆者提供)
ゴルフはもっと自由なもの、もっと個性的なものであるはず。そういうハーヴィー・ペニックの声が聞こえてくるのが、この本です(写真/筆者提供)
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 このような素晴らしいレッスンのチップスがこの本には85もある。どれもこれもペニックさんがすべてのゴルファーに当てはまる効果的な事柄だと確信を得たものばかりだ。どうぞ、この本の隅々まで読んでほしいと思う。

 この本にはレッスンの上達チップスだけでなく、ペニック先生が教えた生徒たち(トッププロら)による、先生の教えがいかに素晴らしいかを書いたエッセーも掲載されている。それらはこのコラムを読む皆さんのゴルフ上達に必ず役に立つ話。どうぞこれらも読んでいただきたい。

 そうするうちに自然とペニックさんの言葉が魔法のように皆さんに浸透しているはずだ。究極の教えが体の一部になるのである。