日本アマで6勝し、プロよりも強かったといわれた中部銀次郎さん。生涯アマチュアゴルファーとして純粋にゴルフに打ち込んで来たゆえ、中部さんの様々な言葉やそのゴルフ流儀はとても奥が深く、目から鱗(うろこ)が落ちるものばかり。『 中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考 』(本條強著/日経プレミアシリーズ)から、スコアメークに直結する、ラウンド中に思い起こしたい中部語録を紹介する。
ラウンド中に思い起こしたい中部語録
中部さんは「ゴルフは心のゲームである」と言った。体力や技術よりも心を鍛え、整えてプレーすることこそ、ナイスショットを可能にし、スコアを良くすると考えていた。そして、現役引退後、市井のアマチュアとプレーをするようになって、ゴルフにおいて心が大切だということが、自分だけでなく、つまり上級者だけでなく、アベレージゴルファーにおいても同様だという認識を強く持った。
そして、自分と親しくしてきたゴルフライターや編集者に、大事な「ゴルフの心」を話し、それが雑誌に掲載されたり、本になったりしたのである。ゴルフの本質とも言える中部さんの言葉は、中部さんが亡くなって22年たつ今もなお、多くのゴルファーを捉えている。
目指すのは最小限に収まるスコア
そうした中部さんが語っていたゴルフの本質を1冊に集めてまとめたものが、『 中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考 』(本條強著/日経プレミアシリーズ/2022年3月刊)である。本書は4章に分かれていて、全部で88の中部語録が書かれている。いずれの章も中部さんが言わんとする「ゴルフという心のゲーム」を制する「鍵」を説いている。
第1章は「飛ばし『心の鍵』」である。ゴルファーの多くが望んでいる飛距離アップについて24項目が著されている。
第1項は、飛ばしとはいかなるものか。それはいくら飛んでも、曲がってしまったり方向が悪かったりすれば、飛ばしとは言えない。「ナイスショットしてこそ飛ばしである」という考えから解き明かされている。力んでは飛ばない、心の平静さを保ち、心を縛り付ける制約を解いてこそ飛ばすことができる。さらに「飛ばし」とは自分が最も飛ばした距離のことを言うのではなく、「平均飛距離こそがあなたの飛距離である」と説いている。それだけでも飛ばしにこだわっている人には目から鱗が落ちる言葉であろう。
そして、中部さんが最も言いたかったことでまとめられる。それは「飛ばさない心が飛ばすことにつながる」というもの。「ゴルフは飛距離を争うゲームではなく、スコアを争うゲーム」「あえて飛距離のことを言わないゴルファーは強い」とも。禅問答のようなこうした言葉こそ、中部さんの「飛ばし」に関する答えなのである。
第2章は「ラウンド『心の鍵』」である。この章の始めは「最小スコアは目指さない。目指すのは最小限に収まるスコア」である。ラウンドとなると、誰でもが自分のベストスコアを目指すが、それこそが大たたきの原因。ベストスコアよりも、危険なことは極力避けて、安全にプレーする。スコアを崩すことがないように慎重に、丁寧にプレーしていくことで自分のワーストスコアを1つでも縮めることに専念せよと中部さんは言う。
どのホールでも全力を尽くし、ミスショットがあろうとも、くじけず、粘り強く、最後の最後まで諦めない姿勢こそが貴いと訴えているのだ。そのためには、「目の前の1打に集中して、迷い、不安、欲望を消滅させる」と説く。さらに「ティショットからパットまで1本の糸がつながっているようにプレーする」とも。ゴルフは1打だけで終わらないという本質をうたい、「次のショットが打ちやすくなるように目の前のショットをどこに打つか決める」とまとめている。
カップに向かってボールをトスしてみる
第3章は「寄せとパット『心の鍵』」であり、ショートゲームの本質を語ってくれる。この項では「技術の細部にこだわると上達を阻むことになる」とし、ゴルフでは「シンプル・イズ・ベスト」こそが最大の武器になることを説く。また、「最初のショートパットこそ全力で沈める」と、その日のゲームの流れを決しかねない最初の1mのパットの重要性を語る。そのため練習グリーンでは、3~4mのミドルパットではなく、スコアに直結する1mのパットを上り、下り、順目、逆目と確実にカップインできるよう練習せよと説く。
さらにアプローチで迷いがちなクラブ選択は、「カップに向かってトスしてみれば分かる」とアドバイスしてくれる。アプローチをする際、何でも上げる、あるいは何でも転がすのではなく、一度ボールの所から、下手投げでボールを放ってみる。そうすれば自然と上げるか、転がすかが分かってくる。その打球が出るようにクラブを選べばいい。ウェッジかアイアンか、たちどころに正解が出るのだ。
第4章は「練習『心の鍵』」として練習法について語ってくれる。私たちは練習するにしても、どのように練習したらよいかが分からないもの。ドライバーだけ振っているようでは幼稚園、まんべんなくいろいろなクラブを打つのは小学生と示唆してくれる。
中部さんは「得意クラブに磨きをかけ、苦手クラブを克服する」と言う。それが自らのゴルフを安定させる基本であり、仮にピンチに陥っても助かる秘訣だと。つまり、アベレージゴルファーは14本のクラブ、すべてうまくなろうとせずに、まずはたった1本でもいいから得意クラブを作ることを勧める。
そのクラブを持てばミスはない、チャンスをものにできる、そうした自信はミスの多いゴルフでは本当に大きな力を発揮する。その一方で、苦手クラブはなぜうまく打てないかを研究して打ちこなせるようにすることが、スコアを大きく縮める秘訣だという。
さらに、基本を重視する中部さんは、練習ではアドレスを常にチェックする。また、グリップを部屋の中でも作って常日頃からなじませるといったこともアドバイスしてくれる。まとめは、中部さん直伝の「壁スイング」だ。暇さえあれば、壁に頭を付けてクラブを持たずに素振りをする。頭が動かなくなれば、自然にナイスショットが生まれるというわけである。
これら88の中部さんの「心の鍵」を何度も何度も読んで頭の中にたたき込んでほしい。それには本書の オーディオブック で、車や電車の中などで聴くのがいいだろう。頭で理解し、心に染み込ませる。それこそ「ゴルフという心のゲーム」を制する鍵なのである。
『 中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考 』
「飛ばさない心が、飛ばすことにつながる」「技術を磨くのではなく、感覚を磨き、心を鍛える」――。前人未到の日本アマ6勝、アマチュアの理想といわれた中部銀次郎の箴言(しんげん)に、心のゲームを制する「鍵」を知る。
本條強著/日本経済新聞出版/990円(税込み)


