法律を知れば、見える景色がきっと変わる。弁護士・中村真さんの新刊『 世にもふしぎな法律図鑑 』(日本経済新聞出版)では、町中やビジネス、話題のニュースなど、私たちの日常にひそむ「ふしぎな法律」のモヤモヤを解き明かしていきます。法律の専門家から見た、本書の特筆すべきユニークさとは? 「Winny事件」「コインハイブ事件」などを担当した弁護士の壇俊光さんが親しみを込めて解説します。

 「まこつ」こと中村真弁護士は、2010年にFC2ブログで「WebLOG弁護士中村真」を開設した弁護士である。当時、勤務弁護士のストレスが生んだとしか思えない斜め上なイラスト入り記事が「あのブログを書いたのは誰だ?」と弁護士業界で話題になっていた。

 この本は、そんな「まこつ」が、一般の人が疑問に思うような法律問題について、分かりやすい説明と、分かりにくいジョークで解説を試みるものである。

 もちろん、斜め上のイラストと共に記事の最後にはスベり芸炸裂(さくれつ)ともいうべきコメントが付されていて、これだけ見ても十分楽しめる内容であり、これぞ、まこつの専門分野というべき一冊になっている。

 実は、この手の本は、執筆に際して調べることが多く(弁護士といっても法律知識について勘違いがあったり、知らない間に法改正されたりしていることが多いのである)を要するので、一般の弁護士が出版を敬遠しがちな分野である。

 しかし、この本では驚くくらい多くのテーマが取り上げられており、同業者としては「よーやるわ」と驚嘆せざるを得ない。

 もっとも、一般の読者向けとはいえ、弁護士として、読んでいて、「一般の人はここが分かりづらいかもしれない」と気になった点があるので、ここでまこつに代わって解説してみたい。

(1)道路交通法65条1項の「酒気帯び運転等」には、いわゆる「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」がある。

 酒酔い運転とは、道路交通法117条の2第1項1号の「酒に酔った状態」で運転したもので、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金である。車両等は何でも対象となる。

 酒気帯び運転とは、道路交通法117条の2の2第1項3号の「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」で運転したもので、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。よくある呼気検査はこちらの話である。

 そして、酒気帯び運転は、車両等(自転車以外の軽車両を除く)と規定されている(それまでは自転車も対象外であったが、改正法が2024[令和6]年11月1日から施行された)。道路交通法65条1項の酒気帯び運転等は車両等が対象なので、自転車以外の軽車両の場合は違反の対象だが刑事罰はないということになる。

 ただ、ラクダが自転車以外の軽車両であっても酒に酔った状態で乗れば刑事罰の対象になるので、捕まっても私のせいにしないでほしい。

(2)酒税法43条のみなし製造は、10項に消費の直前に酒類と他の物品(水を含む)との混和をする場合が例外とされている。

 これについて、酒税法施行令50条13項は、酒場等で事業者が消費者の求めに応じて混和する場合と消費者が自分で消費するために混和する場合が例外とされている。

 さらに、これについては行政解釈が存在する。酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達では「同居の親族が消費するためのものを含むものとし、他人の委託を受けて混和するものは含まない」とされている。

 とすると、部下は同居の親族ではないので、みなし製造ではないという根拠がないことになる。

 ここで紹介した知識は一部であるが、日頃問題になっている事柄の背後にはこのような様々な条文や解釈があるという点を踏まえて読めば、本書をより一層楽しんでもらえる…のかもしれない。

<評者>壇俊光(だん・としみつ) 弁護士
弁護士登録(2000年~)。北尻総合法律事務所所属。ITと法律に関わる分野を専門とする。主な担当事件は「Winny事件」「コインハイブ事件」など。2023年公開の映画「Winny」において弁護を担当した壇弁護士のモデルとなった。主な著書は『 Winny 天才プログラマー金子勇との7年半 』(インプレス NextPublishing)、『 弁護士のためのPR(広報)実務入門 PRの考え方・平常時の活動から記者会見・ネット炎上対応まで 』(共著/民事法研究会)など。