新刊『 #100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった 』(日経BP)は大学4年生だった大塚あみさんがChatGPTに触れたことをきっかけにプログラミングを始め、作品を100日間発表し続け、人生がいかに変わったかを記した本です。その読みどころを、プログラミングと生成AIに造詣が深いマンガ家のすがやみつるさんが解説します。
本書は、ひとりの女子大学生が、生成AIのChatGPTを使って100日にわたり、1日1本ずつプログラム(アプリ)を作り続けた挑戦の記録である。私は74歳になるマンガ家だが、50歳以上も年齢が離れた著者の文章を、自分のことのようにハラハラドキドキしながら読んだ。私もChatGPTのヘビーユーザーで、一番多い利用法がPythonのプログラミングだからである。
私は最初、マンガのプロット作りなどにChatGPTを使っていたが、ふと思い立って「スカッシュゲームのプログラムを作ってください。言語はPythonでお願いします」とプロンプトに打ち込んでみた。ChatGPTでプログラミングができることは知らず、お試しのような気分だった。
するとChatGPTは、20秒ほどでPythonのプログラムを表示したではないか。このスピードにはショックを覚えた。拙著『ゲームセンターあらしと学ぶプログラミング入門 まんが版こんにちはPython』(日経BP)では、同じスカッシュゲームの作り方に、まるまる1冊を費やしていたからである。それなのにChatGPTは、瞬時ともいえるスピードでプログラムを書いてしまうのだ。ショックを受けるのも当然だろう。
しかし、安心したこともある。プログラムを実行したところ、ラケットで跳ね返したボールは、左右の壁では正常に跳ね返るものの、天井にぶつかると跳ね返らずに上空に消えてしまうのだ。明らかなバグ(プログラムの不具合)だった。プロンプトで不具合を指摘すると、ChatGPTは平身低頭し(たように見えた)、すぐに修正プログラムを表示してくれた。こちらは問題なく動いたが、ボールのスピードは私の自作プログラムの方が格段に速く、少しだけホッとしたものだった。
その後、統計計算やファイル名変換、シナリオからのセリフ抽出などのプログラムを大量に作ってきたが、どれも一筋縄ではいかず、トライ&エラーの繰り返しだった。本書『#100日チャレンジ』の著者も、「ChatGPTは使い手の能力以上のことはできない」と書いているが、まさにそのとおり。プログラミングでもハルシネーション(生成AIが誤った内容を出力すること)は日常茶飯事で、こちらの能力が試されているかのような錯覚を起こしたり、反対にChatGPTを調教しているような気分になることもあった。
こんな体験があったので、本書の著者のチャレンジには、つい感情移入してしまい、手に汗を握りながらの読書となった。本書の著者はChatGPTと対話しながらプログラミングを続け、ついには自身の体験を論文にまとめてスペインで開催された国際学会で発表するまでに。その著者の活動を見守り、応援する大人たちも素晴らしい。著者は、近くにいたら声援を送らずにはいられないタイプの学生なのだろう。
本書は、生成AIやプログラミングの経験者だけでなく、これらを試したことがない人、あるいは使いあぐねている人にこそ読んでほしい。著者の体当たり的な挑戦は、きっと参考になり、励みにもなるはずだ。一気に読了したが、『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)にも似て、実に爽快な一冊だった。
