「一気読みしました。面白いですね」と語るのは、企業の経営者や、次期経営者向けにコンサルティングをしている中尾隆一郎さん。『 だけどチームがワークしない “集団心理”から読み解く 残念な職場から一流のチームまで 』(縄田健悟著)を読み、その魅力を解説します。実践畑で活躍する中尾さんは、この本には「そうそう、これをやるのがいいんだ」ということが書いてあり、自分のやっていることが肯定されている気になったと言います。

 帯を見ると、「優秀な人を集めたのに、できあがったのは残念な組織、いったいなぜ」とあります。こんなことが起きたら悲劇ですよね。でも、実際はよく起きているんですよね。

 私は、企業の経営者向けの塾(中尾塾)や次期経営者育成(サクセッションプラン)のコンサルティングをすることが多いのですが、このようなことが起こっている企業経営者には、Googleの『プロジェクト・アリストテレス』やダニエル・キム氏の『成功循環モデル』に沿って良いチームづくりをすることを提案します。

 具体的には、心理的安全性≒関係の質を高めることから始めて、思考の質を高め、行動の質を高め、最終的に結果の質を上げるというアプローチをします。

 私にとっては現場の実践から得た知識ですが、この本には、ホント、そうそう! このアプローチをするとうまくいくんだよねというノウハウが惜しげもなく書かれています。

 例えば、個人(の性格などを変えるということ)にアプローチするのではなく、チーム(集団)の状況にアプローチして、チームを変えることが重要だとあります。ホント、そうなのですよね。

 本の中で、どうして組織がそんな間違った判断をするのか? という「集団浅慮」にも触れられています。ここでは、ゴールとして「異論を認める雰囲気」をチームにつくればよい、しかし組織の雰囲気を変えるには時間がかかるということが書かれています。だから、チーム内に「異論を言う役割」(悪魔の代弁者法)をつくることで、異論を言っても良いという雰囲気をつくれるという具体的な方法を提示しています。これ、すぐにでも使えますよね。

 私は最悪の決定方法は多数決であると思っているのですが、それの悪い側面(間違っていると分かっていても多数派のみんなに従ってしまう)についても、「集団規範と同調」から解説をしています。

 今、企業でさまざまな不祥事が起きています。皆がやっているとそれが悪い規範であってもやってしまうんですよね。

 これに対しては、「正しい個の意見を生かす」方法が書いてあります。具体的には、事前準備をした上で、小チームのチャット形式(つまり誰かが書いたのにかぶせていく形)でのブレーンストーミングをするとあります。これなども、すぐに使えそうです。

 あるいは、多元的無知(自分は別の意見なのに、みんながそうだと思って、間違った意見に同調する)についても記述があります。これの解決策は、上記の集団浅慮と同じだとあります。異論を言える雰囲気をつくれば、1粒で2度おいしくできることが分かります。

 最後に、リーダーシップ、対立、ダイバーシティーとリモートワークについても記載があります。どれも、常日頃から経営者にアドバイスしている内容と類似なのです。自分がやっていることが、学問的にも正しいことが分かってうれしくなりました。

 集団心理をベースにした研究結果ですが、実社会ですぐに使えるノウハウもたくさん載っているので、おすすめです!

<評者>中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう) 中尾マネジメント研究所代表取締役社長
1989年大阪大学大学院工学研究科修了。リクルート入社。リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ社長、リクルートワークス研究所副所長などを経て、2019年から現職。「LIFULL」「LiNKX」社外取締役も兼任。主な著書に『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』『「本当に役立った」マネジメントの名著64冊を1冊にまとめてみた』『リーダーが変われば、チームが変わる』 などがある。