カリフォルニア大学バークレー校で始まり、ハーバード大学、シカゴ大学などの名門大学で展開された講義、「BIG IDEAS」。ノーベル賞を受賞した著者らが考案し、最新バージョンの科学的思考が身につくものとして、アメリカだけでなくドイツでも人気を博している。その伝説の講義を丸ごと収録した書籍が、新刊『 THIRD MILLENNIUM THINKING アメリカ最高峰大学の人気講義 』(ソール・パールマッター、ジョン・キャンベル、ロバート・マクーン著、花塚恵訳、日経BP)だ。慶應義塾大学総合政策学部教授で経済学者の中室牧子さんが、本書の魅力を解説する。

 情報があふれ、何を信じ、どう行動すべきかを見失いやすい現代。自分が判断に迷ったときは、つい専門家の意見を聞きたくなるが、いまやあらゆるところに現れる自称「専門家」の真贋(しんがん)を見極めるのすら難しい。やっぱり自分で「正しく考える」技術を身につけるしかないのだ。

 本書は、ノーベル賞受賞者を含む著者3人が、「科学」「哲学」「心理学」の視点から、賢明な判断を下すこと、意味のある行動をとること、問題を解決することのために不可欠な技術を身につけることを目的としている。

 著者らが米国の名門大学で10年以上にわたり若者に教えてきた講義は、単なる知識の伝達ではない。扱うのは、科学的推論、確率とリスク、討論による意思決定、価値観のズレへの対処、そして「為(な)せば成る」という科学的楽観主義。これらを横断的に扱いながら、「正しく考える技術」を伝授する。それが、日常生活・教育・政策・医療など、あらゆる場面で使えるツールであることも理解できるようになる。あらゆる世代に開かれた教養書であり、世界を読み解き、行動する力を養う一冊。

<評者> 中室牧子(なかむろ・まきこ) 慶應義塾大学総合政策学部教授
慶應義塾大学卒業後、米ニューヨーク市のコロンビア大学大学院でMPA、Ph.D.(教育経済学)を取得。日本銀行等を経て、2019年から現職。デジタル庁シニアエキスパート(デジタルエデュケーション担当)、東京財団政策研究所研究主幹、経済産業研究所ファカルティフェローを兼任。政府のデジタル行財政改革会議、規制改革推進会議等で有識者委員を務める。日本学術会議会員(第26期)。テレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」コメンテーター(木曜隔週)。朝日新聞論壇委員。著書に発行部数37万部を突破した『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『科学的根拠(エビデンス)で子育て』(ダイヤモンド社)、共著に『「原因と結果」の経済学』(ダイヤモンド社)がある。