Z世代に対する世間のイメージは「会社をすぐ辞める」「恋愛・結婚は面倒」「お金を使わない」「政治に無関心」…など様々です。そうした中で、実際の若者たちは何を考えているのでしょうか? 消費者研究で定評のある牛窪恵氏が、1600人以上への大規模調査と55人への直接取材を実施し、令和の若者のナゾと実像に迫るのが『 Z世代の頭の中 』(日経プレミアシリーズ)』です。読書好きな俳優として知られ、自身も作家として活動している中江有里さんが、その魅力を解説します。

 普段は気にしていない自分の年齢を痛感する瞬間がある。
 風邪をひくと、なかなか治らない。昔より量が食べられない。眠れないのに、早く目覚めた朝。
 そして、世代の離れた人と関わる時。

 本書『Z世代の頭の中』は、「令和世代(1995年以降生まれ/30歳以下)」いわゆるZ世代の人たち1600人強の本音を聞き出した一冊だ。
 著者の牛窪恵さんは、本書にもある「昭和世代(おもに1950~70年代半ば生まれ)」。ちなみに私は「氷河期世代(おもに1970~80年代前半生まれ)」。就職氷河期に苦労した時代だ。

 しかしZ世代は、まったく別の苦労を背負った時代を生きている。
 近年の事象では、新型コロナウイルス禍で休学を強いられた。失敗すると「自己責任」。幼いころに大きな震災に見舞われ、社会は混乱した。
 国も社会も責任をとってくれないのだから、自分のことは自分で守るしかない。
 そんな境地になっても不思議はない。
 すべては生きるための知恵、技術。
 すべての生物は環境に合わせて変化し、存在している。Z世代だってそうなのだ。

 Z世代は何を考えているのかわからない、と正直思う。
 Z世代も「昭和の人はわからない」と思っているかもしれない。
 互いの壁は高い。越えることはできなくても、壁の向こうを想像することはできる。
 歩みよりに必須の一冊だ。

<評者>中江有里(なかえ・ゆり)  女優・作家・歌手
1973年大阪府生まれ。法政大学卒。89年芸能界デビュー。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』などに出演。NHK BS2『BS週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。著書に小説『 愛するということは 』(新潮社)、『 万葉と沙羅 』(文春文庫)などがある。読書好きで知られ、本にまつわる講演やエッセー、書評を多く手掛ける。歌手としては、アルバム『La Chaleur-ラ・シャルール-』などをリリース。2025年秋、主演映画『道草キッチン』公開予定。文化庁文化審議会委員。