「余裕のない100%の自分より、70%で判断できる自分のほうが、長い目で見ればずっと強い」。こう語るのは、防衛大学校卒の元陸上自衛官で、現在は執筆の世界で活躍するぱやぱやさん。防衛大学校、陸上自衛隊、会社員、そしてエッセイスト・作家という異色のキャリアで、120%の働き方を長年経験してきたぱやぱやくんが『 70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法 』(佐野創太著/日経BP)の魅力を紹介します。

 どうしてかわからないが、頑張って働いても、なぜか楽にならない。仕事は増える一方なのに、「もっと頑張らなくちゃ」という気持ちだけはなくならない。周りに合わせすぎて、気づけば自分のペースを見失っている。職場だけではなく、生活のあちこちでも無意識に全力を出してしまい、どんどん苦しくなっていく。自分が何に悩んでいるのかさえわからない。ただ成果を出し続けることばかりを求められて、止まることができない。

 さらに最近は生成AIも登場し、今まで数時間かかっていた作業が数分で終わるようになった。便利になったはずなのに、なぜか以前より忙しくなっている。100%だった自分が120%を求められ、それでもまだ足りないような空気すらある。どこまで頑張れば終わるのか。そもそもゴールはどこなのか。だんだんわからなくなっていく。

 「こんな生き方、もう限界かもしれない」

 そんな人におすすめなのが、佐野創太さんの『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』だ。

 「70%で働く」というのは、サボることでも、諦めることでもない。「もっと頑張る」と「もう頑張れない」のあいだにある、自分にとっての“ちょうどいい”を見つけることだ。自分のリズムで長く続け、余白を残しながら働いていくための方法を、本書は丁寧に教えてくれる。

 70%で働くためのマインドやイメージの解説から、仕事の量やペースに振り回されず自分のリズムで効率よく働くコツ、悩みで消耗しすぎず気持ちを切り替えるコツまで、自分にとって心地よく、無理なく持続できる働き方を体系的に学べる一冊だ。

 本書には、「70%で働くことはいつかのチャンスやピンチに集中するための選択」「自分が責任を持てるのは70%ぐらいまで」「重い予定の前後に軽い予定を挟む」「体と心の忙しさを理解する」など、気持ちが楽になり、視点が変わる考え方が多く紹介されている。とくに「自分はたくさんいる」と考える視点はおもしろかった。私に当てはめて考えると、仕事をしている自分、家族といる自分、SNSで発信する自分、休む自分がいる。そのすべてを一人の100%で回そうとするから、苦しくなるのだと思った。

 読み終えたあと、肩の力がすっと抜けて、「ああ、70%でいいんだな」と思うことができた。

 100%で頑張ることは、もちろん大切な場面もある。ただ、本当の意味で頑張るというのは、常に全力を出し続けることではなく、自分のペースで長く続けていくことではないか。本書を読んで、改めてそう思った。

 私自身、SNSや出版活動を続けていると、「もっと発信しなければ」「もっと結果を出さなければ」と思う場面が多い。ひとつ成果が出ても、次の成果を求められる。投稿が伸びれば次も伸ばしたくなるし、本を出せば次の企画も考えなければならない。好きで始めたはずの活動なのに、気づけば自分で自分を追い込んでしまうこともある。

 だからこそ、本書の「70%で働く」という考え方は、会社で働く人だけではなく、フリーランスや発信者、作家のように、自分で自分を動かし続けなければならない人にも必要な考え方だと思った。

 きっと世の中の多くの人が求めているのは、もっと頑張る方法ではなく、頑張り続けられる自分でいるための方法なのだと思う。そのヒントが、この一冊には詰まっている。

 今の時代は、生成AIの登場によって流れがどんどん速くなり、効率化も求められている。ただ、どれだけAIが発達して、どれだけ速く動けるようになっても、その答えをどう使うかを決めるのは自分自身だ。余裕のない100%の自分より、70%で判断できる自分のほうが、長い目で見ればずっと強い。AIに全力で追いつこうとして人間が倒れていたら、本末転倒もいいところだ。

 限界を感じながらも「まだ頑張らなきゃ」と思っている人に、とくに読んでほしい一冊だ。もっと頑張るためではなく、自分を見失わずに働き続けるための本として、多くの人に届いてほしい。