地球上で最も大きな哺乳類、クジラ。その生態はいまだ多くの謎に包まれていますが、高い知能を持ち、仲間を慈しみ、社会性に富んだ生活をしているといわれています。数多くの受賞歴を誇る水中写真家ブライアン・スケリーは、幼い頃からクジラに魅了されてきました。日本で初めての刊行となるスケリーの写真集『 ナショナル ジオグラフィック クジラ 海の巨人 』を、大の海洋生物好きとして知られるココリコ田中直樹さんが評します。
私はクジラの写真や映像を見るとなぜだかいつも泣きそうになります。
クジラは普段の生活では決して出会うことがない圧倒的なサイズの生き物であり、その大きな生き物は私たちと同じ哺乳類で、子供は海中でミルクを飲んで大きくなります。そんな私たちの大きな仲間が自由に泳ぎ回れる海というのはとてつもなく大きいんだなぁと私はクジラを通して改めて気付かされ、地球ってすごいなぁと感動し泣きそうになるのです。
以前、ハワイでザトウクジラの親子を見ました。親子の少し後ろをオスが続いて泳いでいました。オスがメスと次の交尾のタイミングを計る、いわゆる「エスコート」と呼ばれる状態です。私は水中でオスと目が合いました。オスがジロリと横目で私を見たのです。その目は、「お前、俺の女に手を出すなよ!」と言わんばかりのものすごい迫力でした。私は一瞬にして固まり身動きが取れず別の意味で泣きそうになりました。
ブライアンさんが撮られた写真はどれもとてもすてきで、全ての鯨類が生き生きと写っています。それは今にも動き出しそうで、鳴き声まで聞こえてきそうです。
そして、私が感じたのはブライアンさんのクジラに対するリスペクトです。ブライアンさんは相手を尊重し時間をかけてクジラたちと向き合います。それがクジラたちにも伝わり信頼関係を築けたからこそ、こんなにも美しく素晴らしい写真が撮れるのではないでしょうか。
生き物たちと信頼関係を築くのは人との信頼関係を築くのと同様に、相手を思い適度な距離感を保つことが大切なんだと教えてくれる一冊でもありました。
