1952年から70年にわたり、英国女王として君臨したエリザベス2世が2022年9月8日、96歳で亡くなりました。本書 『エリザベス女王 写真で振り返る、国家に捧げた生涯』 では、英国そして世界の人々の敬愛を集めたその生涯を、ナショナル ジオグラフィックの秘蔵写真でたどります。東京カメラ部の塚崎秀雄社長が、本書の読みどころを語ります。
これが英国の文化の厚みなのかと圧倒された。エリザベス2世の生涯をハリウッド大作映画の名場面集のような完璧な写真で見せつつ、優雅な表現で解説してくれる。この本は女王の写真集であり、詩集だと思います。
「私は私の生涯を、 たとえそれが長かろうが短かろうが、 皆さんのために、そして私たち全員が属するこの偉大にして揺るぎなき国家のために捧(ささ)げることを、皆さんの前で宣言します」
21歳の誕生日のラジオ演説でこう宣言したエリザベス・アレクサンドラ・メアリーは、25歳で王位を継承してから、英国史上最長かつ世界史上2位の在位期間である70年間、女王として国家のためにその身を捧げました。
サピエンス全史でも有名なイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが「虚構」と論じた国家。その国家に自らの人生を捧げてみせた。そんな王室のお手本のような女王エリザベスですが、その人生は「王室」で想像するような優美なものだけではなく、映画の主人公を上回るほど波乱含みです。軍隊のトラック運転に従事したり、クーデターで追放された王子と結婚したりと、王位継承前まででも何本か小説を書けそうなくらいに。
美しい女王や優雅な王室の姿を写真で堪能できる上に、こうした女王にまつわる話も多数紹介されていますので、英国王室ファンのみならず、英国文化や現代の王室の有り様(ありよう)に興味がある方には、ぜひ手にとって確かめてみてほしいです。数ページめくるだけで、「本物」を実感して引き込まれ先を読みたくなるでしょう。