「やりたいことは山積みなのに、なぜか一つも終わらない」「気づいたらスマホで時間をムダにしてしまう」――これはやる気の問題ではありません。脳が無意識にフル稼働し、休めなくなっているからです。休ませるカギは、タスクの切り替えを最小限に抑えること。その具体策を、神経心理学と実践知の両面から解き明かした書籍が『 脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術 』(マルク・ティッヘラー、オスカル・デ・ボス著/児島修訳)。オランダで10万部超えのベストセラーの本書から一部を抜粋・再構成してお届けします。今回は「集中力低下の4つの要因」についてです。

「注意の対象を切り替える回数」がカギ

 集中力の管理はゲームのようなものです。勝負のカギは、1日のうちで「注意の対象を切り替える回数」をいかに最小限に抑えるかにかかっています。

 うまくプレイすればするほど生産性は上がり、ストレスは減ります。スキルを磨く前に、まずは私たちが注意の対象を切り替えてしまう原因となる「4つの要因」を理解しておきましょう。

 この4つの要因は、それぞれ異なった働きで私たちの集中力を低下させます。

集中力低下の要因1│刺激が少なすぎる

 私たちの脳は、最適な刺激を求めるようにつくられています。そのため、作業のペースが遅すぎたり、内容が簡単すぎたり、退屈すぎたりすると、自動的にほかの刺激を探し始めるのです。

 これは効率を上げるのには効果がありますが、会話中に心がさまよったり、騒がしいオフィスで集中できなかったり、読書をしていても内容が頭に残っていなかったりする原因にもなります。

 こうした集中力の低下を防ぐことができれば、自分の頭の中から湧いてくる雑念(と周りの同僚が立てる雑音)を遮断する力を飛躍的に高められるようになります。

集中力低下の要因2│内部刺激が多すぎる

 私たちは、集中できない理由をスマホやメール、同僚のせいにしがちです。けれども実際には、それは内部刺激、すなわち自分の頭の中から湧いてくる思考や雑念のせいであることも多いのです。

 集中力が途切れる原因の約半分は、自分自身の内側にあると考えられています。この感覚は、誰にでも身に覚えがあるはずです。

 作業の途中で、突然別のことがしたくなり、気がつけばSNSを20分間も見続けている。夜、眠ろうとしても、明日やるべきことが次々と頭に浮かんできてなかなか寝つけない。脳は強力な器官ですが、時に私たちを疲弊させます。

 集中力の低下にうまく対処するためには、その仕組みを理解することが大切です。

集中力低下の要因3│エネルギーが不足している

 疲れていると、私たちの脳内のパーソナル・アシスタントはうまく機能しなくなります。その結果、「何が重要で何が重要でないかを判断する力」が落ち、大量の刺激が脳に入り込んできてしまいます。

 そうすると、ほんの小さな刺激でも集中を乱されやすくなります。生産性が上がらず、大した成果が出ない日があるのはそのためです。

 仕事をしているつもりでも、脳はまったく働いていないのです。この問題に対処するためには、脳を適切に充電する方法を学ぶ必要があります。

集中力低下の要因4│外部刺激が多すぎる

 外部刺激とは、スマホやメール、同僚などのことです。これらは、私たちが集中力を高めようとするときに最初に目を向けがちなものです。

 しかし実際には、この問題の対処策を見つける前に、しなければならないことがあります。

 それは、自分の心をコントロールする術を学ぶことです。自分の心をうまく手なずけられるようになってから(本書ではこれから、そのための具体的な方法を詳しく説明します)、外部の刺激への対処策を考えたほうが、効果的なのです。

 安心してください。本書は外部刺激の問題を無視しているわけではありません。本書の後半では、外部からの刺激を完全に遮断したり、何かを見逃したりすることなく、オープンオフィスで集中する方法を紹介します。

1日で作業を邪魔される頻度は?

 ここで質問です。

 こうした集中力の低下は、1日にどのくらいの頻度で起こっているでしょうか?
 私たちは、どのくらいの頻度で作業を邪魔されているのでしょう?

 先ほど説明した通り、その要因は、メールやSNSのメッセージ、同僚だけではなく、自分の頭の中の思考や雑念であることもあります。

 「帰り道で牛乳を買うこと」を忘れないようにしたり、前日の気まずい会話を何度も思い出したり、作業中に途中で突然まったく無関係のことをひらめいたりといったことも、私たちの集中力を低下させます。24時間の中で、こうした中断はどのくらいの頻度で生じていると思いますか?

 平均すると、なんと人は1日に約500回も気を散らせる刺激に対処していることがわかっています。こうした中断から集中力を元の状態に回復させるために必要な時間を合計すると、1日平均して2時間以上にもなります。

 「集中力の低下」を引き起こす4つの要因が何かをしっかりと理解しておくことで、心が安定し、集中力を妨げられにくくなります。目標にすべきは、1日の中で、目の前の作業にしっかりと集中する時間を十分に確保することです。

 本書では、まさにこの点に焦点を当てていきます。

 雑然としたオープンオフィスで働いているときでも(むしろ、そうした状況でこそ)、集中力が低下するのを防ぐための様々な方法を見ていきましょう。

 集中モードを「オン」に切り替える方法をマスターすれば、本当に必要なときに集中できるようになります。また、集中力を「オフ」に切り替え、脳にエネルギーを充電し、やることリストを頭の中から追い出す方法についても学びます。

 集中力をオンにすることとオフにすることは、どちらも同じくらい重要なのです。

平均、1日に約500回も気を散らせる刺激に対処している(写真:WesLens/peopleimages.com/stock.adobe.com)
平均、1日に約500回も気を散らせる刺激に対処している(写真:WesLens/peopleimages.com/stock.adobe.com)

脳の基本的な仕組み

 集中力が低下する問題に対処するための様々な方法について説明する前に、脳のメカニズムを簡単に理解しておくことも重要です。

 筆者は、なぜ気が散るのか、どう対処すればよいかを示すわかりやすいモデルをつくりました。本書では、このモデルの様々な部分に注目しながら、集中力の低下に1つずつ対処していきます。

気が散る理由とその対処法を示すモデル(図版制作:キャップス)
気が散る理由とその対処法を示すモデル(図版制作:キャップス)

(第4回に続く)

神経心理学とビジネス現場の知見をもとに、脳を休ませつつパフォーマンスを最大化する方法を紹介。締め切りやカフェインに頼らず、脳を効果的に「オン/オフ」することで、仕事、勉強、会話、睡眠の質まで自然に高めます。オランダで10万部突破のベストセラー。

マルク・ティッヘラー、オスカル・デ・ボス著/児島修訳/日経BP/1980円(税込み)