会議、プレゼン、日常会話……。あなたの話はなぜ伝わらないのか。テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターである豊島晋作さんは、「伝えたいことを“全部”伝えようとしているから」と指摘します。話が相手に伝わらなければコミュニケーションは成り立ちません。コミュニケーションが成立しないと、ビジネスでは誤解や損失を生み、プライベートでは人間関係のすれ違いにつながります。『不器用だった僕がたどり着いた「伝え方」の本質』(日経BP)から抜粋・再構成してお届けします。

 新製品の特徴をすべて伝えたい。しかし内容が多すぎて時間切れになってしまった。
 このように、伝えたいことを「全部」伝えようとして、失敗する人がいます。
「伝えたいことを全部伝える」のは間違いです。人に何かを伝えるときには、話す内容を減らす、つまり「引き算」することが大事です。人間が一度に理解できる情報の量には限界があるからです。

 例えば、次の2パターンの表示を比べてみてください。ある家電製品(ヘアドライヤー)の優れた特徴を伝えるものです。

 ①【価格】【性能】【デザイン】【人気】 【耐久性】【売上実績】
 ② 価格 性能 【デザイン】 【人気】 耐久性 売上実績

(写真:Anfix/stock.adobe.com)
(写真:Anfix/stock.adobe.com)

 ①はヘアドライヤーの6つの特徴すべてを強調したもので、②はそれらの特徴のうち、デザインと人気だけを強調したものです。
 ①の場合、このヘアドライヤーは多くの面で優れた特徴があることが分かりますが、強調されている情報量が6つもあり、そのすべてを覚えておくのは難しいでしょう。結果として強い印象は残しにくいと言えます。

 ②の場合、このヘアドライヤーは特にデザインが良く、人気が高いという2つの点だけが強調されています。2つであれば覚えやすく、こちらのほうが、「このドライヤーはデザインが良くて人気なんだな」という長持ちする印象を残せます。

 この②のメッセージはドライヤーの持つ6つの特徴すべてを伝えることはせずに、その中から4つを「引き算」して、強調する点を2つに絞って伝えています。つまり、ドライヤーが持つ、価格、性能、耐久性、売上実績は、あえて「伝えていない」のです。

 こうした「引き算」によって伝える手法は、伝えたい内容の一部を諦める決断ですので、難しいと感じる人もいます。しかし、「伝えたいことを、すべて話そうとする」ことこそ、逆に伝わらなくなるのです。

 「インドネシア市場に進出すべき理由は14個あります」などと言っても、誰もすべての理由を知りたいとは思わないでしょう。14個もの理由は多すぎて伝わりませんし、そもそも覚えられません。聞いている時間もありません。

 また、「伝えすぎ」は、話が長く、つまらなくなる理由の筆頭です。
 みなさんも結婚式の式典などであまりに長いスピーチに退屈してしまい、早く終わってほしいと願ったことがあると思います。話す側は「新郎新婦との思い出をなるべくたくさん話したい!」「自分が面白いと思ったエピソードは全部話したい!」と思ったのでしょう。しかし、それは話し手の自己満足であり、聞き手の満足ではないのです。
 結婚式の出席者からすると、長い話のうち本当に面白いと感じる部分は多くても3割程度でしょう。残りの7割はほぼ無駄な話で、それがあまりに延々と続くと「おいおい、まだ話すのか……」と聞く気を失ってしまいます。

「話半分」は伝えるときも同じ

 この「情報が多すぎて伝わらない」状況は、まるで、塩や砂糖、しょうゆ、酢、みそ、みりん、胡椒、さらに唐辛子やサラダオイルなど、家にある調味料をひとつの料理にすべて入れるようなものです。もはや何の味か分からなくなるでしょう。
 本当においしい料理は、塩と胡椒のシンプルな味付けだったりします。つまり、「理由は28あります」よりも「理由は2つです」と絞って言われたほうが、はるかに説得的なのです。

 暴飲、暴食、喫煙など、不健康な生活を続ける友人に、「健康的な生活習慣に変えるべきだ」とあなたがアドバイスするとします。このとき「適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの管理、禁煙、適度な飲酒、早寝早起き……それらをきちんと守ってください」などと言っても、全く伝わらないでしょう。イヤな説教だと思われるのがオチです。
 それより、「週末に少しだけ運動したらどうかな。あとランチは定食にしたほうがいいよ」と、2つの要素に絞って伝えたほうが、相手も少しは聞いてくれるはずです。

豊島晋作氏は「伝えたいことを全部伝えるのは間違い」と話す(写真:小西範和)
豊島晋作氏は「伝えたいことを全部伝えるのは間違い」と話す(写真:小西範和)
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 「話半分」という言葉があります。人の話は少し大げさになるので、全部信じるのではなく、半分ぐらいの中身は差し引いて聞いたほうがいい、という意味です。
 同じように、人に伝えるときも話す量は半分かそれ以下に差し引くべきです。一度に伝えられる情報の量は限られるので、もし多くのことを伝えたければ、一度で伝えることは諦めて、別の機会を新しくつくるしかありません。

 まずは話す時間を通常の半分にしましょう。10分の話ならば5分に、20分のプレゼンやセールストークならば10分にします。ビジネスシーンにおいても、たいていの話は5分以内が基本でしょう。よほど長いメッセージだとしても10分以内です。準備した原稿の文章があれば半分に削ることを目指し、なるべく「短文」の集合体にしていきます。

 同時に、話すポイントも半分に絞ることです。2つは1つに。4つは2つに。多くても3つ以内に絞ることが重要です。
 そもそも信号の色は3色です。色で3つの情報を示しています。もし5~6色もあれば、ドライバーは混乱して交通事故が多発するでしょう。クレジットカードや携帯電話の番号も4つの数字ごとにまとまっています。つまり、一度に人間が認識できる要素は、多くても3つか4つに限られているのです。人を説得する場合も、何かを伝える場合でも、要素は最大でも3つか4つ以内にまとめるべきです。

 人を説得する場合に5つも6つも理由を並べると、逆に不信感が生まれる可能性もあります。「それだけ理由を並べるのは、何かまずいことを隠しているからではないか」という疑いが出てくるからです。
 場合にもよりますが、日常レベルでは、4つの要素でも多いと認識すべきでしょう。要素は少なければ少ないほどいい。多くの場合「理由は1つです!」と言うのが一番心に響くと思います。

テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターである豊島晋作氏が、過去の失敗や苦い思いを通してたどり着いた「自分の考えや情報を分かりやすく人に伝える方法」、「より正確に、より多くの情報を人から聞き出す方法」について、基本的な部分から応用的な要素までを徹底解説。

豊島晋作(著)、日経BP、1980円(税込み)