投資で資産を築くために必要なのは、運でも才能でもない。攻めと守りの両面から考え抜かれた「長期投資の原則」だと、『敗者のゲーム』で知られる伝説のコンサルタント、チャールズ・エリスは説きます。エリスの最新刊『 チャールズ・エリスの超長期投資入門 』(鹿毛雄二・鹿毛房子訳/日本経済新聞出版)の抜粋・再構成をもとに、攻めと守りの姿勢で長期投資を成功させる極意を紹介します。

適切な資産配分に必要な3つのこと

 投資計画は、資産配分、貯蓄計画、そして支出計画の3つの柱から成り立っている。資産配分とは、株式・債券・現金の保有割合を決めることだ。40歳なら資産の40%を債券に回すという年齢と同じ割合の債券投資(40歳なら資産の40%を債券に投資し、60歳なら60%に引き上げる)という昔の考え方を採用しないこと。適切な資産配分のためには、次の3点を実践するとよい。

  1. 投資目標を明確にする 1年間の最低限の必要経費と、今後やってみたいことにかかる経費を書き出す
  2. 将来の収入源と蓄えについて、無理のない見通しを立てる
  3. 債券に類するものも含めた総資産を洗い出してみる

 この3点についてしっかり見通しを立てることができれば、最適な資産配分の準備は整ったに等しい。持ち家、年金なども総資産に含めてよいことを理解できていれば、債券にそれほど多く配分しないですむ。手数料や税金などのコストがあまりかからない「インデックスファンド」はリターンも高く、複利の効果が得られ、行動経済学者が指摘する市場の動きに一喜一憂してしまう落とし穴も避けられるだろう。

 誰もが自分の保有する株式の現在の企業収益と配当を気にするが、長期投資をする人は、将来的な企業収益と配当に注目する。なぜなら、それこそが企業価値を決めるものだからだ。現在の市場価格への配当利回りがこの先何十年も継続するというのは想像しただけでも素晴らしい。これは、複利の力を理解している人には驚くにあたらないことだ。若いときから複利に目を向けて長期投資を始めれば、自ずと目標を達成することができる。

 長期的には、株式のほうが債券よりもリターンは高い。一方、短・中期においては株価の変動幅は極めて大きい。従って、長期的に株式中心のポートフォリオを組む利点をよく理解しておく必要がある。それには、投資と市場の歴史を学び、そこから得た教訓を活用すればよい。

 手始めに、個別株の1日の価格変動幅を年間変動幅に換算してみよう。例えば、株価40ドルの株式の1日の高値と安値の差が1ドルだったと仮定しよう。それに1年の株式市場の営業日数250をかけると、年間の変動幅は信じられないことに250ドルにもなる。1カ月の理論上の変動幅で考えても、これはありえないほど大きな額だ。

 このことから、ある疑問が浮かび上がる。当面売る予定のない長期に保有するつもりの株式について、日々の価格変動を心配する必要があるか、ということだ。私たちはつい、短期的な価格変動に気を取られるが、こうした行動こそが長期収益を損なわせる。

投資計画の見直しは3年に1度だけでいい

 「少ないことは豊かなこと(Less is more)」という、偉大な建築家ミース・ファン・デル・ローエの有名な言葉がある。これは投資の世界にもぴったりあてはまるものだと覚えておこう。意思決定の回数を減らせば、ミスも減る。生涯にわたって3年に1度、20件程度の投資を見直せばよいと決めておくことで、長期的に良い結果が得られるだろう。見直しのタイミングを、株式市場の変化ではなく、あなた自身の状況が大きく変化した場合のみに限れば、さらに効果的だ。

 好成績達成のためには、あえて何もしないこと。多くの人が損失を被るのは、次のようなミスをしたときだ。

  1. 市場タイミングの判断ミス 大暴落後に全株式を売却し、撤退してしまう
  2. 資産配分の変更ミス 直近の相場変動に引きずられ、慌てて資産配分を変えてしまう
  3. マネジャーの変更ミス マネジャーの解約や新規採用は、いずれもコスト増につながる
(写真:MarekPhotoDesign.com/stock.adobe.com)
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 あなただけの長期投資計画を立て、相場変動に惑わされることなく、その投資方針を維持していく際に、この小さな本(『 チャールズ・エリスの超長期投資入門 』)がお役に立てれば嬉しい。

 すべての投資家にとって重要な第一歩は、攻めと守りの両面から、自分の投資目的を明確にすることだ。そして、その目的に照らし、長所を最大化し、短所を最小化するような長期投資計画を立てよう。一度立てた計画を粘り強く守り続ける習慣を身につければ、「パワーカーブ」が持つプラス効果が、やがて魔法のように働き始めるはずだ。

『敗者のゲーム』で知られる伝説のコンサルタント、チャールズ・エリスが、個人投資家に向けて書き下ろした究極の投資ガイド。低コストのインデックスファンドを活用した長期・分散投資の原則から、老後資金の賢い取り崩し方まで、今すぐ実践できる知恵を凝縮した一冊。

チャールズ・エリス著/鹿毛雄二・鹿毛房子訳/日本経済新聞出版/1760円(税込み)