上司の意見と自分の意見が違うとき、逆らうか・従うかの2択ではなく、第3の道があるということを教えてくれるのが、ドイツの哲学者・ヘーゲルが唱えた「弁証法」です。書籍『 哲学を知ったら生きやすくなった 』から、不安やモヤモヤの答えや生きるための指針を模索する今、こんな時代を切りひらくためのツールとして使える哲学を、さわぐちけいすけさんのマンガと、人気哲学者の小川仁志さんの解説でお届けします。
否定されたら「発展させるチャンス」と捉えよう
編集部 働く私たちのモヤモヤは「哲学」で解消できるとのことですが、哲学って小難しいイメージで…。昔の人の考え方が、現代人の悩み解決に本当に役立つのでしょうか?
小川 もちろんです。そもそも哲学というのは、古今東西の哲学者が考え抜き、物事の本質を探究して導き出した普遍的な思考法のこと。変化の激しい現代だからこそ、哲学的思考を「ツール」として活用すると、悩みを解決に導いてくれますよ。
編集部 今回の悩みは、上司の意見と自分の意見が違うケースです。仕事でよくあるモヤモヤですね。
小川 マンガの後半で、リンが「2択ではなく、第3の道があるはず!」といい意見を言っていましたね。このように一見相いれない問題を、どちらも切り捨てることなく、よりよい解決法を見いだす――。つまり、第3の道を見つけたいときに使えるのが、ドイツの哲学者・ヘーゲルが唱えた「弁証法」です。
編集部 弁証法? それは、どんな考え方なのですか?
小川 ヘーゲルは「何事にも必ず問題は生じる」、つまりすべてが完璧に進むことはあり得ないと言った。問題が起きたとき、切り捨てることは簡単ですが、それでは真の解決になりません。そこで弁証法では、逆に対立する問題を取り込んで、「発展」させるのです。
編集部 ふむふむ…。
小川 詳しく説明すると、ある物事(テーゼ)に対立する事柄や問題点(アンチテーゼ)が存在する場合、これらの両方のよい部分を取り込んで、矛盾や問題を克服し(アウフヘーベン)、より発展した完璧な解決法(ジンテーゼ)を生み出すという概念です。
編集部 「発展させる」というのが、ポイントですね!
小川 はい。発展というのはヘーゲル哲学の特徴といっていいでしょう。まさに近代という発展し続けた時代を象徴しています。彼はなんでも発展すると考えていましたから。人間も社会も歴史も。そのための原理であり方法として掲げられたのが弁証法なのです。
編集部 しかもそれを否定によって可能にするわけですね?
小川 そのとおりです。ヘーゲルは「否定はむしろ発展するための力だ」と、問題を肯定的にとらえたんです。取り込む、つまり受け入れることでより強くなる。例えば、強い敵が現れたとき、戦うのも大変だし、逃げるのも大変。でも、敵が仲間になれば自分のチームが強くなる。ビジネスでも、異端児を切り捨てるのは簡単ですが、逆に取り込んで、より個性のある最強のチームをつくるのがベストな解決策と言えますよね。
編集部 なるほど! 問題を受け入れて、一段上のレベルを目指すわけですね。
小川 この発想がすごいのは、「第3の道」といっても、全く別の案を採用するわけでもなければ、折衷案や妥協でもないという点。2つあった道よりも必ずよくなった第3の道になるということです。例えば、混ざらない水と油も、一緒にするとドレッシングができますよね。1+1が2ではなく、無限大になるわけです。
編集部 今回のケースでいうと、上司の意見を取り入れるのは“負け”のような感じもしてしまうのですが…。
小川 私は、弁証法は「ウィンウィンの関係」だと考えています。例えば今回の場合、ミルは自分の企画をベースにしつつ、上司の企画のよい部分を取り入れれば、お互いに発展するし、自分も満足できる。上司の案も取り入れたから、もちろん相手も納得です。先ほどのドレッシングの例でいうと、水と油はどちらも「ドレッシングになれてよかった、自分が生かされた」と思っていますよね(笑)。
編集部 確かに(笑)。勝ち負けを考えなくてもいい、両方にメリットもある平和的な解決法といえますね。弁証法のこの考え方は人間関係や子育てなどなど、あらゆるシーンで使えそうです。
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漫画のミルはどうすべき?
- 自分の企画をボツにしてしまうのはもったいない。
- 表向きは上司を立てつつ、自分の企画の足りない部分に。
- 上司のアイデアをうまく取り込み、よりよい企画にせよ。
「いやな上司と仕事をする」「人間関係のしがらみにうんざり」「自分の人生これでいいのか」…。生きていると抱えがちなたくさんのモヤモヤの対処法を、マンガと解説で哲学の観点から導きます。監修・解説は人気哲学者の小川仁志
さわぐちけいすけマンガ、小川仁志監修・解説/1980円(税込み)






