隠れた「お宝銘柄」を発掘して、大きな利益を得る。株式投資の醍醐味は、個別株投資にある、とお考えの方も多いことだろう。そんな読者の知りたい情報を日経マネー副編集長が解説する『 成長株・バリュー株投資のきほん 』(日経文庫)より、一部を抜粋してご紹介したい。本書によると、「企業の業績が伸びるから株価が上がる」は必ずしも当てはまらないという。どういうことだろうか。見ていくことにしよう。

売上高の半分が消滅したのに、株価が上昇

 2025年に入ってから株価が急上昇した代表的な企業の一つがフジ・メディア・ホールディングス(以下フジHD、東証プライム・証券コード4676)です。2025年初の時点で1700円程度だった株価は、1月17日から急激に上がり始め、2月中旬には一時3000円を超える水準まで値上がりしました。

 しかしこれは、考えてみれば不思議な出来事です。この間、フジHDには悪いニュースが相次ぎ、日に日に経営状況が悪化していく最中だったからです。

 フジHDの中核企業は、民放大手のフジテレビジョンです。フジテレビは2024年12月頃から報じられ始めたスキャンダルを受けて、大半のスポンサーがCM出稿を見合わせる事態に発展しました。CM収入はフジHDにとって、放送事業の収入の大半、全社売上高の過半を占めます。

 CM見合わせがドミノ倒しのように連鎖し始めたきっかけとなったのが、ちょうど1月17日に行われた港浩一社長(当時)の記者会見でした。報道陣の自由な参加を許さない会見のあり方に対して批判が殺到し、大手スポンサーが次々とCM見合わせの方針を表明し始めました。

 しかし、売上高の半分以上が突如として消滅し、回復のメドも立たないという状況が見え始めたまさにこの日から、株価の急上昇は始まったのです。

 上昇は1カ月後の2月17日までほぼノンストップで続き、一時は底値から約2倍に。この間、フジHDにとってポジティブなニュースは何ひとつ出ていないのにもかかわらずです。

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株価上昇のカラクリ

 なぜこんなことが起きたのでしょうか?

 実は、記者会見直後の1月20日頃から同社株を大量に買い増し始めた投資家がいます。「ひふみ投信」など人気の投資信託で知られるレオス・キャピタルワークスが、フジHDの株式の5%以上を保有していることが2月7日に明らかになりました。

 レオスの藤野英人社長は、日本経済新聞の取材に対して「株価は割安で、3~5年で2~3倍になる可能性がある」とコメントしました。

 そう、フジHDの株価が上がったのは、株価が割安だったためです。しかも、後ほどご紹介する「株価が割安な3つのパターン」の中で言えばパターン①、「資産価値だけと比べても株価が安い」パターンだったのです。

 フジHDはCMの停止で売上高の多くを失い、今後は利益を出していけるのかどうかすら危うい状況に陥りました。企業が利益を出せなければ、株主は利益の分け前をもらうことができません。つまり、フジHDの株式を持ち続けることで今後得られる価値=事業価値は、この時点で少し前と比べて大幅に減っていたと考えられます。

 しかし、そもそもその時点のフジHDの株価にとって、事業価値が減ることは特にダメージになりませんでした。企業価値のもう一つの成分「資産価値」だけと比べても株価が割安だったからです。

 先ほどのレオスの藤野社長はこう言っています。

 「会社のあり方やガバナンスが劇的に変わることで、将来はPBR(株価純資産倍率)が1倍まで上がる可能性がある」

 この「PBR」こそが、パターン①「資産価値だけと比べても株価が安い」株を見極めるための基本となる指標です。

 ちなみに、フジHDの株式をレオスが買い始めた時期のPBRは0.4倍程度で推移していました。これが1倍になる、つまり株価が購入時の2.5倍になると期待して買ったわけです。

CMスポンサー減で経営環境悪化にさらされたフジHD。しかし、株価は上昇した(写真:SIN/stock.adobe.com)
CMスポンサー減で経営環境悪化にさらされたフジHD。しかし、株価は上昇した(写真:SIN/stock.adobe.com)
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「株価が割安」は3つのタイプに分かれる

 さて、企業価値は「資産価値=今すぐ会社を解散したら手に入るお金」と「事業価値=会社が今後稼ぐだろうお金」の2つの成分に分けて考えることができます。そして、それによって割安株もいくつかのパターンに分かれることになります。

 パターン①は、「資産価値だけと比べても株価が安い」パターンです。その企業が今後稼ぐだろう利益を考慮に入れなくても割安な株です。こういった株のことを「PBR1倍割れ」と呼ぶのですが、この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

 割安株の中でも特に割安な株だと言えますが、逆に言えば、その会社の事業には価値がないと投資家に見なされていることになり、企業にとっては不名誉な事態でもあります。

 そして、資産価値よりは株価が高いが、事業価値との合計と比べれば割安な株もあります。そして、こちらのパターンはさらに、パターン②とパターン③に分かれます。

 先ほど書いたように、事業価値は「その企業が今後稼ぐお金」です。つまり、「今後」をどれくらい先まで計算に入れるかによって、事業価値の大きさは変わることになります。

 パターン②は「それほど将来まで計算に入れなくても、足元の利益と比べても割安」な株です。これは主に「低PER(株価収益率)株」と呼ばれるタイプの割安株です。

 そしてパターン③は、「足元の利益で計算した企業価値」を基準にすれば割安とは言えないが、「将来の利益まで計算に入れた企業価値」と比べれば割安な株です。これこそが、有望な「成長株」なのです。

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