日本に住む18歳以上の人であれば、誰もが使えるNISA(少額投資非課税制度)。日向坂46の佐々木久美さんもNISAを利用する一人です。投資を通じた資産運用の必要性を交えながら、2024年1月より始まる新NISAに向けた思いをファイナンシャルプランナー(FP)の岩城みずほさんと2人で話し合いました。日経ムック『新NISA 商品選び完全ガイド』から抜粋・再構成してお届けします。

磯野波平さんは54歳

岩城 佐々木さんはすでにNISAを利用されているとのことで、意外な印象です。

佐々木 父親が以前から株式投資をやっていて、私に投資をすすめてきたのが関心を持つようになったきっかけです。将来のために少額でも投資を始めたほうがいいよと言われ、5年ほど前につみたてNISAを始めました。投資先については父親の受け売りで、まだまだちゃんとは理解していないので、今日のような学びの機会が持てるのはとてもうれしいです。

岩城 しっかりした考えをお持ちで、すばらしいと思います。この5年の運用期間でも結構、利益が出ているのではないですか。

佐々木 そうですね。少しびっくりしています。投資を始めた頃は、頻繁にチェックをしなくちゃいけないイメージがあったのですが、そんなことはなく、割とほったらかしでもいいんだなって思えるようになりました。

日向坂46の佐々木久美さん(右)とFPの岩城みずほさん(左)
日向坂46の佐々木久美さん(右)とFPの岩城みずほさん(左)
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岩城 若い世代にも資産形成への関心が広がっているのは、2019年の「老後2000万円問題」が大きなきっかけになったと思います。もちろん、老後に必要とする金額は人によって違いますが、社会保障の変遷を多くの世代が意識することになりました。

佐々木 やっぱり、これまでの時代とは社会ががらりと変わっている感じなのでしょうか。

岩城 昭和の象徴として「サザエさん」を見てみても、登場する磯野波平さんは54歳の設定です。当時の会社員は55歳の定年が一般的で、波平さんも定年間際の状況ですね。もうすぐ退職金を得て悠々自適に老後を過ごす人生をモデルにしたような印象です。

 一方、今はライフプランも多様化し、働き方も多彩で転職も当たり前になっています。退職金を1つの会社で積み上げていくのも難しいし、たとえ退職金を得たとしても、銀行の定期預金に置いても金利が7%か8%もあった昭和の当時と比べて、今はほぼ増えません。

定期預金10年で2倍

佐々木 金利がそんなに高かったのですね。

岩城 複利の運用でお金の増え方を簡易的に計算できる「72の法則」というものがあります。72を金利で割るとお金を倍にするまでにかかる年数が割り出されます。例えば、年7.2%で複利運用したら10年で倍になる計算です。

佐々木 退職金を定期預金に預けるだけで、10年で2倍になっていた時代があったんですね。

岩城 それが今や0.01%程度。倍にするのに7200年かかってしまいます。銀行は安全にお金を保管する場所であって、運用についてはある程度、リスクを取った投資が大事になってきています。

 もう1つ、大事な視点は人生そのものが長くなってきたということ。佐々木さんの世代だと100歳くらいまで生きる人は結構多いと思います。そうなると仮に70歳でリタイアしても、あと30年は暮らすためのお金が必要です。

「少しずつでも将来の自分のために投資を続けています」と話す日向坂46の佐々木さん
「少しずつでも将来の自分のために投資を続けています」と話す日向坂46の佐々木さん
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佐々木 年金も、私たちの世代には不安が残ります。

岩城 日本の公的年金制度はしっかりしているので最低限でも加入を続けていれば、生活の基盤を維持できると思います。ただ、少子高齢化が進めば、給付水準は下がってくるでしょう。老後の暮らしも人それぞれでお金に対するニーズも違いますが、ゆとりを持って彩りを豊かにするには、自分なりに工夫してお金をしっかりつくることが大切ですね。

時間が味方になってくれる

岩城 佐々木さんは、どうして資産形成が必要だと考えているのですか。

佐々木 私は決まった会社の社員として所属しているわけではなく、数年後に自分がどういった環境に置かれているか、なかなか想像がつきにくい職業に就いています。今、仕事を通じて収入を得ているのはとてもありがたいのですが、あわせて将来の自分のために、不安をなるべく減らしていくことも大事だと思っていて、少額でも投資を続けています。

岩城 自分の能力やスキルを高めて稼ぐ力を高めていくのは基本なので、今を充実させるのはとても大切ですよね。そこに投資を加えるのは、稼ぐ要素をもう1つ加えることを意味します。すぐに必要ではないお金を投じることで、お金が経済成長のために働いてくれる。適切な場所に置きさえすれば、お金にはお金を稼いでくれる性格があるんです。

佐々木 お金がお金を稼いでくれる――。それってすごくないですか。その言葉にはっとしました。私は預貯金に置いておくより、少しでも増える可能性があるならと思って投資を続けています。まだ投資している金額の母数が少ないので、このままで大丈夫かなと感じることがありましたが、今の言葉で自信が持てました。

岩城 佐々木さんはまだ20歳代ですよね。60歳まで積立投資を続けるとしても、あと30年以上も運用ができ、時間が味方になってくれるので有利だと思います。

「長期・分散・低コスト」

佐々木 積立投資ではどんな点に注意したらよいですか。

岩城 絶対に覚えておいてほしいのは、「長期・分散・低コスト」の3つです。この3つを守って積み立てを続けていれば、大きな失敗はしないと思います。新NISAになっても、つみたて投資枠は、従来のつみたてNISAと変わりなく、長期投資に向いた投資信託が厳選されているので、いずれの投資信託を選んでも「分散」と「低コスト」には対応できると思います。

 個人的には世界中の株式に分散投資をする低コストのインデックスファンドであれば、1本の投資信託に投資するだけで十分だと思います。過去のデータを見ると、例えば、日本を含めた世界の株式市場を対象にした指数で積立投資した場合、25年超の積立投資で年率10%近い成果が出ているのが分かります(図表)。

 将来同じような実績が得られるわけではありませんが、投資した元本の4倍ほどに資産が増えています。

「日本を含めた世界の株式市場を対象にした指数で積立投資した場合、25年超の積立投資で年率10%近い成果が出ています」と岩城さんは図表をもとに説明します
「日本を含めた世界の株式市場を対象にした指数で積立投資した場合、25年超の積立投資で年率10%近い成果が出ています」と岩城さんは図表をもとに説明します
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非課税期間が無期限に

佐々木 積立投資は続けていくことが大事なんですね。

岩城 その通り。積立投資って、金額が下がったときにたくさん買えることがメリットなので、株価が下がってびっくりして投資をやめてしまうのが、長い目ではもったいないことが多いのです。確かに世界経済の動きをひもとくと、10年に一度くらい大きな経済危機は起こりうるもので、実際、リーマン・ショックの頃は一時的に元本を割っている時期があります。

 投資をやめたい気分になってしまいがちですが、それでも経済成長を信じて積立投資を続けた結果が今に生きているわけです。複利の効果って、ある時期を超えるとぐんと威力が増します。ただ、普段は佐々木さんがお話ししたみたいに、投資していることを忘れているくらいが資産形成ではちょうどよく、その分、お仕事や人生で大事にしたいことに時間を費やした方が有意義です。

ファイナンシャルプランナーの岩城さんは、「適切な場所に置いておけばお金がお金を稼いでくれる、そんな性格があります」と言います
ファイナンシャルプランナーの岩城さんは、「適切な場所に置いておけばお金がお金を稼いでくれる、そんな性格があります」と言います
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佐々木 新しいNISAで、よくなることはありますか。

岩城 佐々木さんのようにつみたてNISAをやってきた人にも、これまでのつみたてNISAとは別に新NISAの非課税限度額というお財布が用意されるので、投資できる金額がその分プラスされることになります。それから、これまでのつみたてNISAなら非課税になるのは20年間という制限がありましたが、それが無期限になります。そのまま持ち続けていても売却益は非課税です。

 新NISAでは個別株式などを対象とした成長投資枠と、つみたて投資枠を併用できるようになります。余裕資金があれば一括投資をしてもよいと思います。短い期間で高い収益を狙うことを否定はしませんが、NISAは短期で売買するのには不向きな設計なので注意が必要です。あくまで長期での資産形成を支援する優遇税制だと理解していた方が有効に使えると思います。

世界を見る目が広がる

佐々木 私は厚生年金に加入できる立場ではないので、将来の年金を意識してiDeCo(イデコ。個人型確定拠出年金)も同時に使っています。NISAとの使い分けについては、どのように考えておくべきですか。

岩城 どちらも将来のためのお金と理解してよいです。ただ、iDeCoは60歳まで取り崩すことができないため、老後のお金という色彩が強いものです。一方でNISAは運用しながら取り崩しもできる柔軟性が特徴です。

 ライフプランの変化に合わせて、一時期、お金が必要になれば取り崩してもよいですし、反対に子どもの教育資金を用意するのに積立額を増額するといった使い方もできます。iDeCoは口座の管理手数料が若干かかっているので、老後の取り崩しでは優先するのがよいでしょう。

パソコンで実際に資料を見ながら話し合う2人
パソコンで実際に資料を見ながら話し合う2人
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佐々木 なるほど、よく分かりました。資産運用というと、金融のいろんな専門知識を全部理解していないといけないようなハードルの高さを感じていましたが、それでためらっていてはもったいないのかもと思うようになってきました。

 私と同世代の人たちはまとまったお金は持っていなくても、人生の残り時間ならたくさん持っています。時間は増やそうと思って増やせるものではないので、大事に使うべきで、少額でも可能な範囲で投資をするのがいいよと伝えたいと思います。

 それに投資を始めたことで世の中に自分が参加しているとすごく感じられ、世界を見る目が広がっていくのは楽しいなと素直に思います。今日はありがとうございました。

岩城 こちらこそ、ありがとうございます。佐々木さんの世代から資産運用のリテラシーが高まっていくことは、とても頼もしく感じます。

取材・文:花輪拓男、杉浦直洋(エディト) 写真:山下陽子

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