テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、テレビ朝日「グッド!モーニング」、TBSテレビ 「ひるおび」など各種メディアで人気の井出真吾氏。株式ストラテジストとして20年以上、機関投資家や個人投資家向けに情報提供を続けている。そんな井出氏がデータ分析を駆使して教える資産形成のヒント。今回は「投資を始めるタイミング」「株価下落時の対応」。『井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。

いつ投資を始めるのがベスト?

 長引くインフレ、新NISA制度スタートなどで「自分もそろそろ投資を始めてみようかな」と思いつつ、なかなか一歩目を踏み出せない人も多いと思います。

 あれこれ迷っているうちに「日経平均株価が史上最高値を更新」などのニュースを目にして、「またバブルかもしれないから、投資を始めるのはもう少し後にしよう」と考えた人もいるでしょう。

 その後、2024年8月には「日経平均が史上最大の下落幅」を記録しました。「やっぱり投資を始めなくて正解だった!」と思ったかもしれません。

 いつ投資を始めるか、ベストなタイミングはいつか、永遠の難問のように思われるかもしれません。これは「株価が安いところで始めるのがベスト」という考え方が根底にあるからだと思います。

 ところが、長期つみたて投資の場合「今の株価水準」よりも「投資期間」のほうが結果に大きく影響することもあります。
 長期的に株価は上昇すると考えることができるなら、いつ長期つみたて投資を始めても問題ないのです。

どのタイミングを選ぶか

 「いつ長期つみたて投資を始めても問題ない」といわれても信じられないと思うので、ここでクイズを出しましょう。

 図1は日経平均株価の推移を示しています。
 つみたて投資を始めるなら図中①~③のどこでスタートしたいですか?

 前提条件は、日経平均連動型インデックスファンド(投資信託)を毎月末に1万円購入する「つみたて投資」をすることです(税金や手数料は考慮しません)。

(図1)つみたて投資を始めるならいつ?
(図1)つみたて投資を始めるならいつ?
(出所)『井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾著)
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 ①株価がバブル期のピークだった1989年末
 ②89年末のピークから半値ほどに下落した1990年9月末
 ③アベノミクス直前の2012年7月末


 セミナー等でこのクイズを出すと、会場や参加者層で多少の違いはありますが、圧倒的に「③アベノミクス直前」を選ぶ人が多く、全体の7割ほどです。
 次いで「②ピーク時の半値ほどに下落したとき」が約2~3割、「①バブルのピーク時」を選ぶ人は1割いるかいないか、といった具合です。

 株価が下落する局面で投資を始めたいと考える人はきわめてまれで、株価が低いとき、今後上昇しそうなときに投資をスタートしたいと考える人が圧倒的に多いわけです。
 気持ちはとてもよくわかります。

バブルのピークで始めたほうが好結果

 では、答え合わせをしましょう。図2の下表の「倍率」にご注目ください。

(図2)つみたて投資は投資期間が長いほど有利
(図2)つみたて投資は投資期間が長いほど有利
(出所)『井出真吾の投資相談室 63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾著)
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 この数字は「投資元本の何倍に増えたか」を表しています。
 結果は一目瞭然、①と②が約3.5倍で高く、③は2.3倍にとどまりました。

 ③よりも株価水準が高い①や②でつみたて投資を始めたほうが、より大きく増えたのです。意外だったでしょうか。

長期つみたて投資は「株価が安いタイミングで始めよう」などと考える必要はない。
大事なのは、目先の株価水準よりも投資期間。


ポイントは「平均購入単価」

 なぜこのような結果になったのか理解するため、「平均購入単価」で考えてみましょう。

 ①と②はつみたて投資をスタートした後、2009年頃まで株価の下落局面が続いたので、毎月購入するたびに平均購入単価が下がりました。
 ただし、購入した投信の含み損は拡大し続け、精神的には苦しかったかもしれません。

 一方、③でスタートした場合は含み益の状態を維持できて気分的には安心だったかもしれませんが、購入するたびに平均購入単価が上昇し続けました。

 こうした理由から、図2の通り①と②は平均購入単価が1万8000円前後で済んだのに対し、③は2万2000円台と大きく違う結果になったのです。

 自分の目標時点(20年後など)の株価が今より高いと考えるなら、つみたて投資開始後の株価下落は、むしろ安く購入できるラッキーな局面なのです。

分配金の累計額も投資成果の差に影響

 投信を保有していると分配金(個別株なら配当金)を得ることができます。
 分配金の額は保有する投信や時期によって異なりますが、日経平均など日本株のインデックスファンドの場合、概ね年率2%程度が目安です。

 ①や②でつみたて投資をスタートした場合、最初の頃に購入した投信からは三十数年分の分配金を、2000年頃に買った投信からも二十数年分の分配金を得られます。
 年率2%は決して多くないですが、30年間の累計だと60%に相当します。

 ①のスタート時に購入した投信はほとんど値上がりしませんでしたが、単純計算では分配金だけで元本の約1.6倍程度に増えた計算です。
 ところが③でつみたて投資をスタートした場合、最初に買った投信ですら十数年分の分配金しか得られません。

 このように投資期間が長くなるほど分配金が積み上がっていくことも、長期投資が有利になる大きな要因といえます。

「いつ投資を始めよう」と悩む人は目先の株価水準よりも投資期間のことを考えよう。(写真:sin_ok/stock.adobe.com)
「いつ投資を始めよう」と悩む人は目先の株価水準よりも投資期間のことを考えよう。(写真:sin_ok/stock.adobe.com)
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株価下落時も投資し続けることが重要

 この試算は長期つみたて投資を実践するうえで、とても大事なことを教えてくれています。

 株価が下落すると保有している投信が含み損になり、怖くなってつみたて投資を停止したり、損失覚悟で売却したりしたくなるかもしれません。

 しかし「いずれ株価は回復する」「自分の目標時点(20年後など)の株価は今と同じくらいか、もっと高い水準だろう」と考えるなら、感情や目先の株価動向に振り回されることなく、淡々とつみたて投資を続けたほうがよい結果を得られる可能性が高いということです。

 そして、分配金の威力も再確認しましょう。
 日本株インデックスファンドの分配金はおよそ年率2%ですから、仮に株価が10%下落しても5年分の分配金で穴埋めできる計算です(図3)。
 その後も株価がまったく上昇しなくても、6年後以降は分配金の分だけプラスが積み上がります。結果、預貯金よりも高い利回りを得られる可能性が高いと思います。

 株価が20%下落しても10年分の分配金で穴埋めできると考えれば、多少の株価下落に右往左往する必要はまったくないのです。

(図3)分配金の威力
(図3)分配金の威力
(出所)『井出真吾の投資相談室  63のQ&Aでわかる安心運用』(井出真吾著)
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株価が下落すると不安になるのは誰でも同じ。つみたて投資を続けることが成功のカギ。長期つみたて投資の場合は購入単価が下がるので、つみたて期間中の株価下落は、むしろラッキーである。

人気ストラテジストが、投資に関する疑問や不安をデータで一発解消

インフレ時代を賢く乗り越え、豊かに生きる63の知恵をQ&A形式で解説。一括投資とつみたて投資、元本割れリスクが小さいのは? 全世界株式とS&P500、どちらが優位? 年金以外に老後資金の必要額は?……などこれから投資を始める人にも、見直したい人にも。新NISA2年目対策にも。

井出真吾著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)