私自身もそうでしたが、きっと多くの方が結婚や子どもができるなどして初めて、お金のことを真剣に学び始めるのではないでしょうか。
そもそも、現在の大人世代は、今の子どもたちが学校で学んでいるような金融教育プログラムもなければ、お金や資産運用について親から学ぶ機会も極めて少なかったのではないかと思います。
とはいえ時代は変わり、資産運用もお金持ちだけのものではなくなった今、やはり子どもたちには早いうちから、「正しいお金の知識」を身につけさせる必要があると感じています。お金の教育は日本に限らず、アメリカで見てきた親たちにとっても、頭を悩ませているテーマでした。
そこで今回は、身につけておけばいつかきっと自分を助けてくれるであろう、「お金と資産運用」について楽しく学べるベストセラー5冊を選んでみました。
子どもを持つ親だけでなく、これまで学ぶ機会が少なかった大人たちにも読んでいただきたい、お金のことがよくわかる「入門書」の決定版です。
1. 『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』 藤野英人著、マガジンハウス
著者の藤野英人さんは、先日東証グロース市場に新規上場した資産運用会社、レオス・キャピタルワークスの創業者の一人で、ファンドマネージャーとして大きな成功を収めた方です。ファンドマネージャーは投資信託の運用を行うエキスパートで、お金を扱う業種の中でも非常に高度な職務内容です。
そんな藤野さんが30年間携わってきた「お金の仕事」を元に、よりよい未来をつくるための「お金との付き合い方」を教えてくれるのが本書です。
「お金を使って何をするか?」という選択が未来を形づくる一方で、お金は「おっかねー」ものでもある――。そんなふうに、14歳くらいの子どもたちでもすっと理解できるよう、藤野さんが徹底してわかりやすい文章で語りかけているのが、本書をすすめする大きな理由の一つ。
子どものうちから金融リテラシーを身につけるためには、親の知識も欠かせませんが、この本はお金の教育について頭を悩ませている大人たちにも、たくさんの気づきを与えてくれるはずです。私の子どもはまだ14歳ではありませんが、もう少し大きくなってお金について教えたいと考えた時、まず手を伸ばすのは間違いなくこの本でしょう。
2. 『金持ち父さん 貧乏父さん』 ロバート・キヨサキ著、筑摩書房
白根美保子訳
投資家で実業家でもあるロバート・キヨサキ氏のこの本は、アメリカで1997年に刊行されて一大ブームを巻き起こし、日本でも2000年に翻訳版が出版。以来、売れに売れてシリーズ累計410万部突破という超ベストセラーになっています。ここで紹介しているのは、時代の変化に合わせて一部を加筆・修正した改訂版ですが、基本的な「教え」は、刊行当時と変わりません。
お金の力に翻弄されないためにはどうしたらいいか? お金の力は自分の思い通りにコントロールできるのか?
仕事をして給料をもらうことだけが=お金を稼ぐことだと思っていた世の中にまったく新しい価値観を提示した本書は、今でもなお特別な存在感を放っています。
私は両親とも公務員で、給料が毎月振り込まれるという以外にお金を稼ぐ方法があるということを知ったのは大学生になってからでした。そのきっかけを与えてくれたのが本書です。
もちろん、時代の流れとともにFIRE(Financial Independence, Retire Early)といった新たな資産形成の手法・価値観が生まれていますが、この本は、資産運用のテクニックではなく、お金に対して「どのような考え方をするべきか」という思考のヒントを授けてくれるもの。トレンドに左右されない“お金の考え方の軸”ともいうべき普遍的な教えが、この1冊に凝縮されています。
3. 『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』 橘玲著、幻冬舎
個人が利益を最大化するには「個人」と「法人」、この二つの人格を使い分けること。それがゲームを有利に進めるための基本戦略であると説く本書は、「新世紀の資本論」とも評される名著であり、前出の『金持ち父さん 貧乏父さん』同様、「お金の力に翻弄されない」価値観や生き方を学ぶための1冊といえます。
著者の橘玲さんは多数の小説も手がけている作家ですが、本書でも社会のゆがみを指摘しながら、そのゆがみに飲み込まれないために、あるいはゆがみを把握するためにどうしたらいいかを鋭い視点で分析。2002年の出版から実に20年余りが経ちますが、改訂版が刊行されるたびに新たな読者を増やし続けているのは、さすがとしか言いようがありません。
橘玲さんは新刊が出ると反射的に購入してしまう、とても好きな著者の一人です。この本は金融の専門家ではない、橘さんだからこその独創性が光る「お金の教科書」だと思っています。
4. 『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』 藤沢数希著、ダイヤモンド社
著者の藤沢数希さんは、理論物理学研究者、元外資系投資銀行のトレーダー、恋愛工学の発信者、そして作家と、いくつもの顔を持っている非常に多彩な人物です。そんな藤沢さんが書いたこの本は、日本の学校では決して教えてくれなかった、ファイナンシャル・インテリジェンス(お金の教養)を正しく学べるだけでなく、身につけるべき知識を順序立てて紐解きながら、最後には実践的な投資についても紹介してくれます。
冷静に俯瞰してみると、「入門書」というにはやや難解で複雑なお金の仕組みにまで踏み込んでいるのですが、そこはさすが「難しいテーマをシンプルに伝える」技術が圧倒的な藤沢さん。投資の知識がゼロの素人でもつまずくことなく、最後まで面白く読める工夫が満載です。
また、あやしいもうけ話にだまされないようにするという点でも、本書に書かれているような「金融の教養」を身に付ける意味があるとも思います。投資などの金融取引で稼ぐ仕組みを理解することで、皆さんに舞い込んでくるもうけ話が詐欺まがいのものなのかどうかは、瞬時に判断できるようになるでしょう。
お金に関する本はもちろん、人生と密接なイベントを株式投資や損益計算書の手法で分析を試みる『損する結婚 儲かる離婚』『コスパで考える学歴攻略法』(いずれも新潮新書)なども、藤沢さんの分析力と表現力に思わず脱帽すること請け合いです。
5. 『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』 藤沢数希著、ダイヤモンド社
こちらも藤沢数希さんの本です。資産運用と直接的な関係はありませんが、あえて選ばせていただいたのは、日々流れてくる金融・経済ニュースの「点と点」をつなぐ考え方、物の見方が学べる本だからです。
実際、この本の中で藤沢さんは「ニュースなどで実際に話題になっている経済問題をもっと理解しようと思って、大学生の経済学の教科書を開いてもあまり役に立ちません」と述べています。物価高だ、増税だ、インフレだという情報は断片的にキャッチしても、どのような影響を及ぼし合っているかがわからなければ、日本経済はおろか、世界経済を読み解くことはできません。
この本を読むことで、例えば日本の経済ニュースAとアメリカの経済ニュースB、さらには中国の経済ニュースCがつながっていることを、ぼんやりとでもつかめるはずです。学問に役立つ教科書ではなく、世界経済の読み解き方、その“勘所”がわかる「人生に役立つ教科書」といえるでしょう。
取材・文/金澤英恵 編集協力/山崎綾 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部)




