「私はほめられて伸びるタイプなので、そこのところ、よろしくお願いします」と挨拶をする若者。でも、厳しく言われるとやる気になれないというのでは、仕事の現場は困ってしまう。心がすぐに折れる人とそうでない人の差はどこにあるのか。新刊『じつは残酷な「ほめ育て社会」』(日経プレミアシリーズ)より抜粋・再構成して紹介します。
いつだってほめてくれる人ばかりではない
ほめられて育った人にしばしばみられる問題のひとつに、ほめてもらえないとやる気が出ないということがある。
それは、じつはとても深刻なことのはずなのだが、社会に出てからもそうした姿勢が改まらず、
「私はほめてもらえればやる気が出るけど、ほめてもらえないとやる気になれない人なので、よろしくお願いします」
「私はほめられて伸びるタイプなので、そこのところ、よろしくお願いします」
などと言って、あっけらかんとしている新人もいる。
自分はほめてもらえればやる気が出るから、自分のことをほめてほしい、というのだろうが、逆に言えば、ほめてもらえないとなかなかやる気になれない、と言っているようなものである。
そのように言われても、上司にしてみれば、ちゃんと仕事をこなしてくれたり、成果を出してくれたりすれば、もちろんほめてあげられるが、なかなか仕事ができるようにならなかったり、ミスが多かったり、成績が悪かったりする場合は、安易にほめるわけにもいかない。
保護者からのクレームを恐れ、児童・生徒・学生をお客様扱いしがちな学校では、成果を出せなくてもほめてもらえるかもしれないが、授業料を払う立場から給料をもらう立場に変わればそうはいかない。
成果を出せるかどうかにかかわらず、社会に出れば、かかわるだれもがほめてくれるわけではない。気難しい上司の下で働かなければならないこともあるかもしれないし、非常に手厳しい取引先に対応しなければならない立場に置かれることもあるかもしれない。あるいは、思うような結果が出せず、同僚たちと比べても成績が悪く、どうみてもほめてもらえるような立場ではないというようなこともあるかもしれない。
そんな状況で、ほめてもらえないからやる気が出ない、厳しいことを言われるからやる気になれない、というのでは行き詰まってしまう。どんな状況であっても、頑張る必要のあるときは頑張れるようでなくては困る。
社会に出れば、物事が思うようにならない厳しい状況に置かれることもあるし、そんなときに「ほめてもらえないからやる気が出ない」というのでは、壁を乗り越えていくことができず、潰れてしまう。
ほめてもらえないとやる気が出ないという人たちは、そのあたりの事情を念頭に置いて、自己改革していく必要があるだろう。
すぐに心が折れてしまう人、折れない人
「心が折れる」という言葉をしばしば耳にするが、同じような状況でも、心が折れてしまう人もいれば、心が折れるようなことなく頑張り続けることができる人もいる。ゆえに、心が折れるかどうかを決めるのは、状況よりも個人の心理的要因ということになる。では、どのような人が心が折れやすく、どのような人が心が折れにくいのだろうか。
だれだって生きていれば嫌な目に遭うこともある。人から嫌なことを言われることもあれば、嫌な態度を取られることもある。必死に頑張っても、よい結果につながらず、努力が報われないこともある。
そのようなときに、落ち込んでばかりいては、前に進むことができない。人生というのは、思い通りにならないことの連続といってもいい。
必死に受験勉強をしたのに、志望校に受からない。部活でいくら頑張って練習しても、ライバルのほうが実力が上でレギュラーになれない。好きで好きでたまらない異性に告白したのに、「ごめんなさい」で終わってしまう。就活を頑張っているのに、なかなか内定が取れない。せっかく入社できた会社なのに、仕事内容が思っていたのと違う。真面目に仕事をしているし、それなりに頑張っているのに、上司との相性が悪く、評価してもらえない。社内ではけっこう成果を出し、評価されているのだが、別の会社に就職した学生時代の友だちと比べて、給料が低く、その差がどんどん開いていく。
納得いかないかもしれないが、そのようなことはいくらでもあるし、それが人生というものだ。思い通りにならないことがあるたびに傷つき、落ち込み、心が折れたなどと言っていたら、厳しい社会の荒波を乗り越えていくことなどできないし、前向きの人生になっていかない。
そこで問われるのがレジリエンスである。レジリエンスとは、元々は物理学的には弾力、生態学的には復元力を指すものであり、心理学的には回復力、立ち直る力を意味する。
レジリエンスの高い人とは
レジリエンスの研究は、逆境に強い人と弱い人がいるが、その違いはどこにあるのかといった疑問から始まった。
レジリエンスが高い人は、逆境にあっても心が折れるということなく、何とか克服しようと頑張り続けることができる。だが、レジリエンスが低い人は、逆境に直面すると、すぐに心が折れ、身動きが取れなくなり、諦めてしまう。
レジリエンスが高い人の生い立ちに関する研究では、育ちのプロセスで厳しい状況を経験したほうがレジリエンスが高いという結果が得られている。
榎本博明著/日本経済新聞出版/990円(税込み)

