このままの自分ではダメだと分かっているのに、変われない。やるべきことがあっても、なかなか動けない。新刊『 降伏論 「できない自分」を受け入れる 』の出版記念イベント(主催:VOOX)では、読者のそんな悩みが寄せられた。元プロ野球選手、現在はビジネスコーチとして50社以上の経営改革に関わる著者の高森勇旗さんは、どうアドバイスするのか。前編 「ネガティブを飼いならせ “不快”は自分を変える最大の力」 に続き、イベントの一部内容を抜粋・編集してリポートする。

“不快”を燃料に行動を引き起こせ

(司会) それでは、仕事やキャリア、生き方など高森さんに聞きたいことを何でも受け付けます。会場にお集まりの皆さん、自由にご質問ください。

『降伏論 「できない自分」を受け入れる』出版記念イベントでは、たくさんの質問が寄せられた(写真:鈴木愛子、以下同)
『降伏論 「できない自分」を受け入れる』出版記念イベントでは、たくさんの質問が寄せられた(写真:鈴木愛子、以下同)
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Q.勤務先が合併して、職場が高学歴のコンサルタントばかりになり、とても不快です。この不快を燃料にして、自分を変えようとジムに通い始めましたが、長続きしません。継続のコツがあれば教えてください。

高森勇旗氏(以下、高森):まずボディービル大会にエントリーしてしまいましょう。ボディービル教室に行ってみて、その場で申し込んでください。行くと、多分周囲は鍛え上げたマッチョばかりだと思います。自分一人だけ、緩んだ体。これは強烈に不快を感じるでしょう。不快から逃れるには鍛え上げるしかない。そんな状況に自分を追い込むのです。

 できれば恋人や家族も大会に呼びましょう。合併した会社の同僚を招待してもいいかもしれません。一緒にエントリーをしてもいいくらいです。賢さで負けた上、肉体でも負けるわけにはいきません。いやでも継続できます。頑張ってください。

「不快」は何にも勝る強制力になると答える高森氏
「不快」は何にも勝る強制力になると答える高森氏
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Q.目標や成果を定量化しろと言われるのが苦手です。どうしたらいいでしょうか。

高森:データアナリスト時代、僕は「アナログを制するものはデジタルを制する」と言っていました。いちばん重要なのは、データありきで戦略を決めてはいけないということです。数字は計測ツールに過ぎません。

 もし自分を変えたいと思うなら、「5キロ体重を落とす」など目標を定量化するのもいいですが、「周囲から『なんだか変わったね』と言われる」を目標にしてもいいと思います。例えば、朝会った時におはよう! と言いながら握手してみたら、「変わったね」と言われるかもしれません。これまで黄色い服を着たことがなければ着てみたり、自分からあまり誘わない性格なら、「今度、飲みに行こう」と声をかけてみたりする。これだけで「変わったね」と言われるはずです。

 定量的であれ定性的であれ、目標に向けて行動することが刺激になり、やり遂げることで自己肯定感につながります。行動が変われば、これまで起こらなかったことが起こり始めます。

「自分の強み」は行動することでやっと分かる

行動することでしか見えてこないものがあるという高森氏
行動することでしか見えてこないものがあるという高森氏
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Q.今年50歳になりますが、自分の強みが分かりません。高森さんは、プロ野球選手からデータアナリスト、コーチと職業を変えられていますが、自分の強みに気づく瞬間があるのでしょうか?

高森:自分の強みが分からない。やりたいことが見つからない。多くの方からよく聞かれますが、これほど難しい問いはありません。先日、大学生から「自分のやりたいことが分かりません」という相談を受けたので、「そんなものは見つかるはずがない。何でもいいからやれ」とお答えしました。

 『降伏論』でもお伝えしましたが、僕はプロ野球選手を辞めて2年間、データアナリストやライターの仕事をしていました。さらに、こども野球教室のコーチなど、頼まれたことは何でもやっていました。それを続けるうちに「この仕事は好きだけれど、そんなに得意ではないな」「特別好きなわけじゃないけど、よく頼まれるな」ということが見えてきます。例えば、特に飲み会が好きなわけではなくても、よく幹事を任されるとしたら、それがあなたの強みです。

 そもそも強みとは、絶対評価ではありません。人よりちょっと上手にできる気がする。なぜか頼まれることが多い。いろいろやってみて、決勝戦に残ったものが自分の強みです。

 ミケランジェロは、絵画や建築だけでなく、彫刻にも優れた功績を残しました。バチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の「ピエタ」は、ルネサンスが目指した理想の最終到達点とされるほどです。彼は「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ」と言ったとされます。つまり「彫っている」のではなく、「そこにある」ものが見えている。それが才能だと思います。

 彫刻に限った話ではありません。飲み会の幹事になった時、どんな段取りをすればいいか見える。元気がなさそうな人に気づける。そんな相対的な強みに気づくことです。

まず行動し、3000回続けよ

Q.『降伏論』の最後の方にも書かれてあった「波動」を良くしたいのですが、良い方法があったら教えてください。

高森:一言で言うと、自分がされてうれしいことを人にすることです。会議室のホワイトボードが消されていない。使おうとしたマーカーがインク切れ。ゴミ箱がいっぱいであふれそう。誰かがやるだろうと見ないふりをしていると、悪い波動がはびこり始めます。

 気づいたら、さっさと自分でやってしまいましょう。ホワイトボードを拭いて、新しいマーカーに取り換える。ゴミは捨てておく。きれいになったのを見ると気持ちがいい。気持ちいいことを見つけて、どんどん行動してください。『サピエンス全史』によれば、人類は快感の追求によって進化したそうです。つまり「気持ちいい」ことを見つけたもの勝ちです。

 また、誰かが「ありがとう」と言ってくれたら気持ちがいいですよね。その積み重ねです。ビジネスコーチとして呼ばれた経営会議で、僕が最初に言うのは「目を見て挨拶しましょう」ということです。「そんな当たり前のことを」という顔をされることもありますが、最も大切なことです。業績が伸びている会社は、必ず社員が挨拶している。良い波動が満ちていると感じます。

Q.「自己変革ができない人ほど、“素直じゃない”」と『降伏論』には書かれていました。しかし私はどうしても素直になれません。素直になれない人間は、どうしたらいいのでしょうか?

高森:素直になることを、あきらめてみてください。僕が変われたのは、素直だったからではありません。余計なことを考えず、うまくいっている人をまねしたからです。心から納得していなくてもいいんです。「そんなアホな」「どうせ変わらない」と思っていたって構いません。とにかく行動だけ変えてみましょう。その行動を、信じられないほど繰り返してください。具体的には3000回。3000回繰り返すことができたら、素直であろうがなかろうが、必ず変われます。

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構成/渡辺裕子 写真/鈴木愛子

「うまくいかない」「結果が出ない」「ついてない」。これらは、すべてあなたの「決定」の結果である。大切なのは、「いつもやっている行動」を色々な物理的な仕組みで(本書にさまざまな方法を掲載)変えること。この本に載っていることをやってみると、それまでとは違う人生に変わるだろう。いつもと違う選択をする“だけ”で、これまでとは違った景色を見ることができる。

高森勇旗(著)、日経BP、1760円(税込み)