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2026年「本屋大賞」 ノミネート10作品に『イン・ザ・メガチャーチ』選出

 毎年初春を迎える頃になると、「本屋大賞」のノミネート作品が発表されます。「本屋大賞」は、2004年に始まった文学賞。作家や評論家ではなく、全国の書店員による投票で作品が選ばれるというのが、最大の特徴です。書店員が「面白かった」「お客様に薦めたい」「自分のお店で売りたい」と思った本に投票し、まずは上位10作品がノミネートされ、再投票ののち大賞が決定します。

 現場で働く書店員の視点が基準となるので、読者目線の面白さや共感性、エンターテインメント性が高い作品が選出されやすい傾向があります。これまでには、小川洋子さんの『博士の愛した数式』(新潮社)、湊かなえさんの『告白』(双葉社)、三浦しをんさんの『舟を編む』(光文社)などの作品が受賞しています。いずれも映画化やドラマ化されるなどの大ヒットを記録しています。

 そして今年、2026年の「本屋大賞」には、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP 日本経済新聞出版)がノミネートされました。2025年の9月に発売されるや否や、瞬く間に重版を繰り返し、2025年の日経の本の売り上げランキングでは、堂々の2位を飾った話題の本です。

今の社会の空気を切り取った「令和の標本」

 『イン・ザ・メガチャーチ』は、ファンダム経済を舞台にした小説。あるアイドルグループの運営に参画することとなった男、内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生、仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。「ファンダム経済を仕掛ける側」「のめり込む側」「かつてのめり込んでいた側」という、世代も立場も異なる3人の視点で物語は展開されていきます。

 「熱狂」や「孤独」「自己肯定の欠如」など、人間の内面がリアルに描かれ、今の時代の空気を存分に感じられる一冊。SNS文化やマーケティングなど身近な事象にも触れられ、「推し活」についても多層的な理解が深められると、多くの読者から支持を得ています。

 朝井リョウさんは、つねにその時代の「標本を作りたい」という思いで作品に向き合っていると言います。特に本作は、その思いが強かったそう。エンターテインメントとして楽しめるだけでなく、ビジネスパーソンにも多くの示唆を与えてくれる作品になっています。

 「本屋大賞」ノミネート作品には、『イン・ザ・メガチャーチ』のほかに、湊かなえさんの『暁星』(双葉社)、伊坂幸太郎さんの『さよならジャバウォック』(双葉社)、村山由佳さんの『PRIZE―プライズ―』(文藝春秋)など、強敵が名を連ねます。現在、各書店に設置された「本屋大賞」コーナーでは、ノミネート作品がまとめて展示されています。

 大賞の発表は、2026年4月9日。どの作品が栄光を手にすることができるのでしょうか。発表までの間に、ぜひ『イン・ザ・メガチャーチ』も読んで、年に1度の“物語の祭典”を体感してみてください。

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構成・文/磯部 麻衣