パーソルテンプスタッフ、パーソルキャリアなどをグループ会社に持ち人材ビジネスを幅広く展開するパーソルホールディングス。同社は、社員が学ぶためのプラットフォーム「みんなのパレット」を開設し、その中で「ベストセラー斜め読みリレー」という本を紹介する取り組みを行っています。同社グループ人事本部HD人事部の石原早希さんと山﨑諭さんにベストセラー斜め読みリレーについて聞きました。今回は山﨑さんに、そこで取り上げた6冊を紹介してもらいます。

※ベストセラー斜め読みリレーについては前編 「パーソル 自律的な学びを促進『ベストセラー斜め読みリレー』」 を参照

CFO思考が企業を成長させる

 1冊目は『 CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋 』(徳成旨亮著/ダイヤモンド社)。この本は「ベストセラー斜め読みリレー」の発起人でもある人事本部の土本晃世の推薦本です。

『CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋』(徳成旨亮著)。画像クリックでAmazonページへ
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 CFO(最高財務責任者)は、アメリカではCEO(最高経営責任者)に最も近いポジションといわれているようです。なぜなら、CFOは企業価値向上を自らの責務と考える役職であり、日本でよくあるような企業価値保全を第一義とする金庫番とは一線を画すものと考えられているためです。

 では、そのCFOのあるべき考えを述べた『CFO思考』という本をなぜ人事部門に所属する土本が紹介したのか。それは、我々ホールディングスではたらく社員は、経営企画、財務、IT、人事など、それぞれの分野で日々仕事をしていますが、立場や専門性が異なっても、コーポレートスタッフ全員が「企業価値を高める」ことを1つの共通目標と捉え、今後、領域をまたいで協業していってほしいという期待を込めているからです。

 日々の仕事の積み重ねが「企業価値の向上」につながることをイメージすると、業務に対する視座が一段高くなる感覚を覚えます。ビジネスパーソンの皆さんにぜひ読んでいただきたい1冊です。

サステナビリティと経営戦略の関係は?

 2冊目の『 図解でわかる ESGと経営戦略のすべて 』(株式会社KPMG FAS著/日本実業出版社)は当社のサステナビリティ担当の社員が推薦した本です。おそらく、今はどの企業でも、投資家を呼び込み自社の企業価値を上げるため、サステナビリティに資する企業活動に取り組んでいると思います。しかし、それが単なる建前になってしまっては意味がありません。そこで、企業の経営戦略(中長期的な価値向上)とサステナビリティ(持続可能な社会の実現)を統合して捉えることの重要性(「統合思考」)について書かれたのがこの本です。

『図解でわかる ESGと経営戦略のすべて』(株式会社KPMG FAS著)。画像クリックでAmazonページへ
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 ベストセラー斜め読みリレーで紹介した際には、その社員がパーソルホールディングスの各本部の役割と「価値協創ガイダンス2.0」(経済産業省が発表した、企業と投資家をつなぐための“共通言語”となるもの)の関連性をスライドにまとめ、「それぞれの本部(組織)が担っている役割が企業の価値創造につながっており、まさにホールディングス内を統合していくことだ」ということを示してくれました。おのおのの仕事に専門性は必要ですが、専門領域にとどまっているだけでは企業価値の向上にはつながりません。

 その人自身もキャリアを銀行の財務担当としてスタートし、経営企画、そして当社のサステナビリティ担当と、さまざまな業務を経験しています。そうした中で企業価値を上げるには、財務だけで完結してはいけない、経営企画だけでもダメ、サステナビリティも含めたいろんな観点を統合しなくては、と思うところがあったようです。「これまでの自分のキャリアをつなげてくれた(まさに統合してくれた)、腹落ちした1冊」として紹介してくれました。

岩田聡・元任天堂社長の言葉

 3冊目は『 岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。 』(ほぼ日刊イトイ新聞編/ほぼ日)。岩田聡さんは天才プログラマーとして数々の名作ゲームを生み出し、任天堂の社長としてニンテンドーDSなどを世に送り出した人物です。この本には岩田さんが語った言葉や、岩田さんと親交のあった「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の糸井重里さんのインタビューなどが収められています。

『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』(ほぼ日刊イトイ新聞編)。画像クリックでAmazonページへ
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 岩田さんは本の中で「おもしろさを見つけることのおもしろさに目覚めると、ほとんどなんでもおもしろいんです」「やったほうがいいことを全部やると、みんな倒れちゃうんです」というような言葉を残しています。誰しも仕事をしていると、改善に追われ、何かプロジェクトを振り返るときも「もっとこうすれば」「次はこうしよう」と考えがちですよね。

 でも、そのプロジェクトに投下できる資源は翌年もあまり変わらないことが多く、「他にもこんなことをすべき」とアドオンにアドオンを重ねていくと、それを担っていく人たちがどんどん疲弊し、やがて破綻する恐れもある。「ついつい詰め込みがちだけど、一歩立ち止まって考えられるような「余白を残しておくことの大切さ」に、本書を紹介してくれた社員と対話しながら気づかされました。

 この本を取り上げたのは財務部の社員ですが、「岩田さんの言葉は合理的、かつ俯瞰(ふかん)的。エンジニアだけではなく、すべてのはたらく人に読んでほしい」という思いで紹介してくれました。

最初に手に取ってほしい問題解決の本

 4冊目は『問題解決の全体観 上巻 ハード思考編』(中川邦夫著/コンテンツ・ファクトリー)。この本は問題を解決するために、汎用の「型」や13の「論理ツール」と「仮説思考」が書かれています。

 問題解決の本は世の中にたくさんありますが、この本は「そもそも問題解決とは何か」「何をどこから問題だと捉えればいいのか」という最初の入り口部分を説明してくれているので親切だと思います。まず、この本で問題解決の全体地図を手に入れ、そこから個々の事情やフェーズに応じた解決策を模索するほうが効果的だと感じます。

 この本を紹介してくれた社員はかなりの読書家ですが、「この本を問題解決のバイブルとして、最初に手に取ってほしい」という思いで推薦してくれました。この社員に限らず、ゲストで登壇してくれる人はみなさん読書家、勉強家ですね。

パーソルホールディングス グループ人事本部HD人事部HD採用開発室の山﨑諭さん(左)と同室長の石原早希さん
パーソルホールディングス グループ人事本部HD人事部HD採用開発室の山﨑諭さん(左)と同室長の石原早希さん
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山﨑諭(やまざき・さとし)
パーソルホールディングス グループ人事本部HD人事部HD採用開発室
新卒で専門商社に入社し、物流、人事、営業と3つの領域を経験。その後、これまでの経験を生かしつつ、さらに人事の専門性を高めるために、2022年にパーソルホールディングスへ入社。ホールディングスの人事として、新卒採用やオンボーディング、人材開発を担う。2023年、社内の学びのコミュニティ「みんパレ」を立ち上げ、コンテンツの企画や運用を推進。本業以外では、若年層へのキャリア教育の活動に注力し、小中校生へのキャリアワークショップの実施や、就活生向けのセミナーなどに登壇。

官僚組織の典型を改革

 5冊目は『 どんな会社も生まれ変わる 国鉄と銀行を変えた男の再生論 』(細谷英二著/日経BP)です。

『どんな会社も生まれ変わる 国鉄と銀行を変えた男の再生論』(細谷英二著)。画像クリックでAmazonページへ
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 著者の細谷英二さんはりそなホールディングスの元会長で、旧国鉄と銀行という「官僚組織の典型」といわれた2つの組織を立て直した経営者でもあります。組織の一員でもある細谷さんが、なぜ官僚組織の改革に成功したのか、その知られざる経営哲学や方法論について書かれています。この本を紹介してくれた社員は経営戦略部門ですが、前職が大手オフィス機器メーカーでした。そこから経済同友会に出向していたとき、細谷さんの活躍や人徳の高さを目の当たりにしていたそうです。

 パーソルホールディングスには5つの行動指針がありますが、その5つ目が「挑戦と変革」です。言うは易く行うは難しで、新たなことに挑戦し、現状を変えていくのは本当に難しい。でも、細谷さんのように一組織人としての立場でも変えていけるんだ──と非常に勇気をもらえる1冊です。

企業価値を高めるにはどうすればいいか

 6冊目は『 企業価値経営 第2版 』(伊藤邦雄著/日本経済新聞出版)。正直なところ、この本が一番難しく、この本を紹介した社員の対話役を務めるのも大変でした(笑)。でも、証券用語などが頻発する内容にもかかわらず、この本を紹介してくれたのが、財務ではなく、人事畑の社員というのがポイントです。その社員はこの本を「辞書代わり」に使っているそうです。

『企業価値経営 第2版』(伊藤邦雄著)。画像クリックでAmazonページへ
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 本の著者は企業価値の向上を提言した「伊藤レポート」でも有名な一橋大学名誉教授の伊藤邦雄さんで、「そもそも企業価値とは何か」「企業価値を高めるにはどうすればいいか」といった問題に真正面から答えています。

 僕は得意分野ではないので、ベストセラー斜め読みリレーの前にこの本を読み、最近の企業買収のニュースなども見返して勉強したのですが、本書を紹介した社員が語るように、「企業価値向上は、総合格闘技だ」という言葉にとても共感しました。1冊目に紹介した『CFO思考』や2冊目の『図解でわかるESGと経営戦略のすべて』にもつながる考えですが、パーソルホールディングスの全社員が専門性を高めるだけではなく、一丸となって企業価値を高めていかなければいけないと再確認しました。

 これまでに6回開催したベストセラー斜め読みリレーですが、開催後のアンケートでは「学びのヒントが得られた」という声も多く、好評です。

 前回 「パーソル 自律的な学びを促進『ベストセラー斜め読みリレー』」 でもお伝えした通り、社内にはさまざまなバックグラウンドを持った“面白い”社員が多いのですが、そんな他部署の社員と気軽に出会えて、その人の考え方や価値観にも触れることができます。分厚いビジネス書は読むのにハードルが高い場合もありますが、ベストセラー斜め読みリレーのように、お昼休みに顔出しなしで、ランチのお供にラジオ感覚でインプットできるのも、ゆるく楽しく学べる一つの方法だと思います。

取材・文/三浦香代子 撮影/品田裕美

バリューとサステナビリティ、同時追求の世界

人的資本経営やSXなど進化・発展する「伊藤レポート」に対応。分析・評価・創造で企業価値ストーリーを紡ぐ。いま日本企業が直面する環境激変、あらゆる課題を盛り込んだ経営実践のための必読書。

伊藤邦雄著/日本経済新聞出版/4840円(税込み)