パーソルテンプスタッフ、パーソルキャリアなどをグループ会社に持ち、人材ビジネスを幅広く展開するパーソルホールディングス。同社は、社員が学ぶためのプラットフォーム「みんなのパレット」を開設し、その中で「ベストセラー斜め読みリレー」という本を紹介する取り組みを行っています。同社グループ人事本部HD人事部の石原早希さんと山﨑諭さんにその取り組みが始まった背景や内容を聞きました。
学びのコミュニティ「みんなのパレット」
日経BOOKプラス編集部(以下、──) パーソルホールディングスでは社員のための学びのプラットフォーム「みんなのパレット」があるそうですね。まずはお2人が所属しているグループ人事本部HD人事部HD採用開発室の仕事について教えてください。
グループ人事本部HD人事部HD採用開発室 室長 石原早希さん(以下、石原) まず、持株会社であるパーソルホールディングスは「グループ経営をリードする存在」として、「ナレッジを蓄積しグループ会社に横展開を行うCoE機能」「経営判断や監査を行うガバナンス機能」「経理や給与、社会保険などの代行サービスを行うシェアード機能」の3つをカバーしています。そのなかで、グループ人事本部HD人事部ではパーソルホールディングスの採用および人材開発・組織開発といった業務を担っています。
パーソルホールディングス グループ人事本部HD人事部HD採用開発室 室長
現在、ホールディングスには何人ぐらいの社員がいるのですか。
石原 700人ぐらいですね。
「みんなのパレット」はその約700人の社員に向けた学びのプラットフォームであると。なぜ、こちらを開設されたのですか。
石原 本施策は社員の自律的な学びやキャリア形成を支援する取り組みの一環です。パーソルではこれまでも、グループ全体で行う公募型の異動制度、他部署の業務体験ができるジョブトライアル、グループ内の他部署から直接スカウトを受けて異動することができる制度や、海外転勤へのチャレンジなどさまざまな機会提供を通じて社員1人1人が「自分らしくはたらくこと」を支援してきました。
ホールディングス個社としてこの取り組みを走らせるきっかけになったのは、グループの未来を創ることをリードするプロフェッショナル集団となるために、2023年4月に実施した抜本的な人事制度の改定です。制度改定と同時に、プロフェッショナル集団になるためにはホールディングス社員一人一人のキャリアオーナーシップの促進をしていく必要があると考え、人材開発体系についても一部見直しを行いました。
今まではどちらかというと、組織が決めたスケジュールで、学ばせたい社員に知識や概念をインプットする画一的な研修機会の提供が大半となっていました。しかし、現在は多様なはたらき方や価値観が重視されるなかで、これからは社員が必要なときに必要な学びを自ら選択できることが重要だと考え、自律的に学習の機会を得ることができる学びのコミュニティとして「みんなのパレット」を開設しました。
ちなみに「みんなのパレット」(みんパレ)という名称は、おのおのの学びをアウトプットやシェアすることで、パレットに色を重ねるように、おのおのの学びを重ねながら新しい学びを創発する──という意味を込めています。
みんパレが始まったのは2023年12月ですね。具体的にはどんな活動をしていますか。
グループ人事本部HD人事部HD採用開発室 山﨑諭さん(以下、山﨑) みんパレは「ラーン・クラフティング」をコンセプトにしています。まず「学びたい」という動機を明確にし、次に実際に学ぶ。そして学んで終わりではなく、その学びや知識を誰かと共有し、学びのサイクルを回していく。そうした他者の学びを見て「面白そうだな」「自分も学んでみたい」といった相互学習が広がり、浸透していくと考えています。
みんパレではマイクロソフトの「Viva Engage」を使い、社員の誰もが見られるプラットフォームを作っています。イベントの告知をしたり、「一緒に情報処理技術者試験に合格しませんか」といった呼びかけをしたりしてもかまいません。今はまだ社員からの投稿は少ないので、人事主催の勉強会やイベントも実施しています。
執行役員を招いた「しくじり先生」という勉強会では、執行役員がどんな失敗をしたか、どう切り抜けたかの体験を共有してもらいました。また、社員のお薦め本を紹介してもらう「ベストセラー斜め読みリレー」も行っています。参加者の満足度は高く、イベント全体の平均で97%です。
パーソルホールディングス グループ人事本部HD人事部HD採用開発室
気軽に参加できる本の紹介イベント
97%とはすごいですね。さまざまなイベントが行われているとのことですが、なぜベストセラー斜め読みリレーという本を使った取り組みを始めたのですか。
石原 まず、みんパレは「学びの風土醸成」も目的としているため、お互いの学びをライトにシェアできる手段だと考えました。さらに、1日がかりで研修やセミナーを受講するとなると結構コストが重くなりますが、本であればすきま時間に読めますし、コスパ、タイパ的に優れているのも大きかったです。互いに書籍の内容をシェアすることで、インプットのタイパもよいなと。
山﨑 潜在的に社員は「本を読みたい」と思っているのですが、やはり時間がないんですよね。でも、誰かがお薦め本の中身を紹介してくれるオンラインセミナーがあって、それがお昼休みに顔出しなしで参加OKであれば、ラジオ感覚で参加してくれるのではないかと。
その読みが当たり、今まで6回開催して、1回の平均参加者は45人ほど。時間はだいたい40分で、最初に社員の自己紹介、そして本の紹介で、僕がゲストと対話をしながら進めます。ポッドキャストの番組をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。質問はチャットで受け付け、どんな質問もウエルカムです。
社員は誰でも参加できるのですか。
山﨑 はい。初回は約100人が参加しました。ベストセラー斜め読みリレーは社員の相互学習が目的ですが、実は裏の目的は社員がお互いに知り合うこともあります。
というのも今、当社はリモートワーク率が9割で、自分の部署以外の人と業務以外で知り合う機会がほとんどありません。しかし、当社の社員は面白い人がめちゃくちゃ多いんですよ。さまざまなバックグラウンドや専門的なスキルを持つ人が多いので、知らないままではもったいない。「面白そうな本だと思って参加してみたら、ゲストの面白さまで知れた」「今度、あの人に連絡してみよう」という横のつながりが生まれてほしいと願っています。
なるほど。登壇するゲストや本は、どのように決めていますか。
山﨑 初回は「ベストセラー斜め読みリレーという会を立ち上げたらどうか」と提案してくれた人事本部の土本晃世をゲストに招きました。選書に関しては私たちはノータッチで、ゲスト本人のセレクトに任せています。ゲストはエキスパート職の社員が中心ですが、所属本部や業務内容、バックグラウンドもさまざまで、選書もバラエティー豊かです。
それでは次回、これまでどんな本が登場したかについて教えてください。
(後編に続く)
取材・文/三浦香代子 撮影/品田裕美


