モデルとして、タレントとして、そして女優としても活躍している滝沢カレンさん。幼少期から「本だけはいくらでも買ってくれる環境」だったこともあり、手に取った本は大量でありながら、その読書スタイルは人とはちょっと違います。本との出合い方、そして、読書の自由な楽しみ方について語ってもらいました。
本屋さんで本に呼ばれて出合う
小中学生の頃、ものすごく本が読みたい時期があって。ずっと「誰かの頭の中に入ってみたい!」と思っていたんです。本だけはいくらでも買ってくれる家だったので、お母さんやおばあちゃんを連れて本屋さんに行っては、欲しい本を買ってもらっていました。
本屋さんで、本棚の前に立って、ずらーっと並んだ背表紙を眺める。気になった題名の本を、片っ端から手に取っていくんです。
『霧のむこうのふしぎな町』 (講談社青い鳥文庫) と出合った時もそうでした。夏休みの宿題の読書感想文のための本を選びに行ったら、本棚の中で1冊だけ、背表紙が輝いていた。「これだ!」と思いました。
今でも本屋さんでは、そのピンとくる感覚を信じるようにしています。本に呼ばれているというか。一度通り過ぎた後に、肩をたたかれた気がして「ん?」ってまた戻ることもあるくらい。逆に、何か買うつもりで本屋さんに行っても呼ばれる感覚がなくて、1冊も買わないこともあります。
そして、時に結末から読むことも……。
並行読みで誕生するオリジナルの物語
というのも、私は本の途中で話の流れや登場人物の感情などに「ん?」と違和感があったら、そこから読み進められなくなってしまうので、その物語に関して無知の状態から読んでいくのは、苦しいこともあるんです。
学校の宿題なんかでどうしても読まなくちゃいけない、でも読めなさそうな本があったときは、よく、先に結末を知ってから、「じゃあもしかしてこういうことが起こるのかも」と想像を膨らませて自分をワクワクさせてから読んでいました。
でも、結末を読んで面白そうだと思ったのに、最初から読んだら結末に至るまでストーリーが想像と違っていた、っていうこともありまして。それで、途中でやめたり、しばらくたって読み直したりを繰り返していくと、何冊も並行して読んでいる状態になります。
すると、頭の中で、いろんな本の内容が混ざっちゃったりするんです。自分の中ではものすごく壮大な物語が出来上がっていて、めっちゃ“読んだ気”になって、結局1冊も読み終わらないまま終わる、みたいな(笑)。だけどそれがすごく楽しくて。5冊並行読みしている、なんて時もあります。
古今東西の名作をタイトルだけで“読む”
ここ数年、文章を書くお仕事も増えてきました。
書くことはすごく好きで、うまくなりたいと思っているのですが、仕事の忙しさや、見た映画に引っ張られがちで、安定した文章を書くのは難しいなあと実感しています。さくらももこさんが好きすぎて。語尾が“さくらホール”に引きずらがちですし(笑)。改めて、自分の世界を表現する作家さんてすごいなあ、と。
Webで月1連載している 『滝沢カレンの物語の一歩先へ』 (朝日新聞社デジタル)では、本のタイトルだけを見て、そこから物語を書くということを続けています。
かれこれ40冊ほどの作品名で書いてきましたが、本当に1冊も読んでいません。記事の最後に、編集部の方が「本当はこんな物語です」としてその本のあらすじを書いてくださっているようなのですが、それも読んでいません。でも、私の中では、『みだれ髪』も『阿Q正伝』も『砂の女』も自分の物語としてあるので、ある意味、読書量はどんどん増えていることになっています(笑)。
自由すぎるでしょうか。作者の方には申し訳ないのですが。でも、本は大好きなんです。これからも、どんどん出合いたい。本を通して、たくさんの世界を旅したい。夢中になって読了できる本にまた巡り合いたいと思っています。
取材・文/剣持亜弥 スタイリスト/兵藤千尋 ヘアメイク/沼田真実 写真/中川容邦 構成/平島綾子(日経エンタテインメント!編集部)
衣装協力/ニット2万6400円、パンツ3万5200円(チノ/モールド)、ピアス2万2000円(イー・エム/イー・エム アオヤマ)