ちょっとしたことでイライラしたり、モヤモヤを引きずってしまったり。そんな自分の感情とどう付き合うかは、永遠のテーマです。会話の技術や怒りとの向き合い方、伝え方、認知科学など、さまざまな角度から「機嫌」をマネジメントするヒントをくれる本を5冊、選びました。

1. 『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』

中野信子著

 職場、取引先、身内、ママ友、隣人…イヤなことをされても、その関係性を壊せないから、つい「この場さえ我慢すれば」と飲み込んでしまう。そんな経験はないでしょうか。

 脳科学者である著者が、「本音は正義」という風潮に一石を投じ、本音を言わないことを美徳としてきた京都の人間関係の知恵に着目。相手を傷つけずに自分の気持ちを賢く伝える技術を解説します。

 「褒めているように見せかける」「遠回しな質問で相手に答えを出させる」「証拠のない第三者を引っ張り出す」といった具体的なレッスンを通じて、我慢して自分の機嫌を損ねるのではなく、上手に「毒」を吐きながら心を守る方法を、豊富なシチュエーション別に丁寧に学べます。

  • 長居する訪問客を帰すには?
  • 来てほしくないと伝えるには?
  • いらないものを断るには?
  • 「汗臭い」と指摘するには?
  • 仕事ができない相手への接し方は?

2. 『コーチングの神様が教える 「できる人」の法則』

マーシャル・ゴールドスミス著、マーク・ライター著、斎藤聖美訳

 「ちょっとしたことですぐイライラしてしまう」「どこにいっても人間関係がうまくいかない」…。それは、自分でも気付いていない「悪い癖」のせいかもしれません。その「悪い癖」を発見したのが、本書の著者であり、コーチングの神様と呼ばれるマーシャル・ゴールドスミス氏。ファイザーやゼネラル・エレクトリック、グーグル、世界銀行など名だたる企業のトップを指導し、時給25万ドル超ともいわれた伝説のCEO専門コーチです。

 本書は、そんな著者が発見した「20の悪い癖」と、人間関係を劇的に好転させる癖の直し方をステップごとに解説する世界的ベストセラー。

 「極度の負けず嫌い」「人を傷つけるコメントをする」「怒っているときに話す」「八つ当たりする」などの癖の中に思い当たるものはないでしょうか。フィードバックの受け止め方や謝罪の仕方、感謝の伝え方など、自分の機嫌と人間関係を同時に整えるための7つのステップを、豊富な事例とともに学べる一冊です。

  • あなたをさらなる成長から遠ざける「20の悪癖」
  • よいつながりを長続きさせる7つのステップ
  • 「自分を変える」8つのルール
  • 部下やスタッフの扱い方

3. 『アンガーマネジメント』

戸田久実著

 怒ることが、子どもや後輩社員の教育や士気高揚につながり、個人の成長を促すという考えは、もう古いものになりました。「怒る」で解決できることは何もありません。ただ、頭では分かっていても、つい感情的になってしまう人は多いはず。

 そんな人に読んでほしいのが、『アンガーマネジメント』です。パワハラ防止法の施行を機にニーズが高まる「アンガーマネジメント」について、年100回以上、ビジネス研修に登壇する著者が、怒りの感情とうまく付き合う方法を分かりやすく解説しています。

 怒りは自分自身が生み出しているものだと認識すること、「こうあるべき」という思い込み(コアビリーフ)を書き換えること、日常の怒りの場面を記録して振り返ることなど、実践的なトレーニング法も多数収録。さらに、怒っている人を見て自分まで嫌な気分になってしまう「巻き込まれ」に対処する方法も紹介しており、自分の機嫌を自分で守るための基礎が身に付きます。

  • 怒りはどこから来てどこへ向かうのか
  • 怒りの構造を知ろう
  • アンガーマネジメントの実践
  • 怒りに巻き込まれたときの対処法
  • 指導の仕方、叱り方

4. 『「言葉にできる」は武器になる。』

梅田悟司著

 「うまく自分の言葉で話せない」「思いを伝えられない」…。そんなもどかしさが、知らず知らずのうちにストレスや不機嫌の種になっていないでしょうか。

 本書では、缶コーヒーやリクルートのCMの名コピーを手掛けてきたトップコピーライターの著者が、心の中にあるモヤモヤを言語化し、人の心を動かす言葉に変える技術を伝授します。著者自身が手掛けた広告コピーや、古今東西の有名な事例を踏まえて、「メッセージとしての明確性」「そこにいかに自分を投影するか」「伝えたい思いをいかに生み出すか」という視点から分解し、「意志を言葉に込める技術」を解説。感情を整理し、自分自身と上手に向き合うヒントにもなるはずです。

 言葉にできないイライラや違和感を抱えたときこそ手に取りたい、思考と感情の整理術が詰まった一冊です。

  • 言葉には2つの種類がある
  • 「内なる言葉」の解像度を上げる
  • 伝えたい思いを自ら認識することから始まる
  • T字型思考法で、自分の意志を言葉に込める
  • 日本語の「型」を知る

5. 『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』

今井むつみ著

 15万部を突破しているロングセラーのコミュニケーション本。数多くのメディアに取り上げられ、各方面から評価されてきた背景にあるのは、多くの人がコミュニケーションの課題に悩んでいるという事実。何度説明しても相手に伝わらなくて、そのたびにイライラが募る。そんな経験は誰にでもあるはずです。

 本書は、『言語の本質』(中公新書)で「新書大賞2024」大賞を受賞した認知科学者の今井むつみさんが、「話せば分かる」という幻想がなぜ生まれるのか、人はなぜ都合よく誤解してしまうのかを、認知科学の知見から解き明かします。

 感情や認知バイアスが思考をどうゆがめるかを知ることは、伝わらないことへのイライラの正体を理解し、感情的にならずに他者と向き合うための第一歩になります。「相手の立場」に立つメタ認知の技術など、伝え方だけでなく、自分の心の持ちようを整えるヒントも満載の実践的な一冊です。

  • 「話せば分かる」は「幻想」かもしれない
  • 「言っても伝わらない」とき、何が起きているのか?
  • 「言えば → 伝わる」「言われれば → 理解できる」を実現するには?
  • 「伝わらない」「分かり合えない」を越えるコミュニケーションの取り方
  • コミュニケーションを通してビジネスの熟達者になるために

構成・文/磯部麻衣