『梨泰院クラス』『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』など数々の名作を生み出し、世界中の視聴者の心を盗む韓国ドラマ。新刊『韓国式 ストーリーのつくりかた』の著者パク・ソンスは、韓国で30年の現場経験を持つドラマプロデューサー兼脚本家、そして脚本術の先生として人気です。その彼が、どのような人が作家に向いているのかご紹介します。本文から抜粋してお届けします。
作家に必要な資質とは何だろうか。これから、実際に見ていこう。生まれながらにしての作家は、次の要素を備えている。
① センスがある
作家として「センスがある」とは、状況や人をきちんと把握しているという意味だ。どのような場でも、相手の意図や感情を把握し、感情や雰囲気の微妙な変化をうまく感知できる。
センスのある人は語彙(ごい)力が豊富で適切だ。その語彙は周囲の人々をうなずかせ、そういった経験がその人をさらに特別にする。
センスのある人は五感が敏感だ。人が見もしないものを見て、聞き逃している音を聞く。特別で、抜きんでた観察力の持ち主だ。センスのある人は味覚が発達し、食べ物の材料や調理過程を吟味し、本場同様につくられたブリュッセル式のムール貝のワイン蒸しは、スープまでおいしく楽しむ。
センスのある作家にとって、ただの緑色なんてない。エメラルド、ライム、翡翠(ひすい)、ミント、黄緑、うす緑、ケリーグリーン、青磁、ピスタチオなど、その微妙な色味の違いを正確に表現する。自分だけのセンスで、人生の美しさを追究する。
② 想像力にリミットがない
想像力は突破力だ。単純に自分が求めるものを頭の中で描く、感情の快楽ではない。
では何を突破するのか? 想像力は常識を突破し、道徳を突破する。年齢を突破し、性別を突破する。国籍を突破し、時間を突破する。論理を突破し、人間関係を突破する。二項対立や、利害関係を突破する。視聴者の予想や期待を突破する。自分自身を突破する。
これらは、目の前に見えるものを壊し、さらに前へと進んでゆく力だ。本能であり勇気だ。
③ 表現力がすぐれている
どんなに想像力がすぐれていて無尽蔵だといっても、それを文章で表現できなければ何の意味もない。
その驚くべき想像力を、詳細に、緻密に、熱く、すさまじいほどに、甘く、まるで目の前でくり広げられていて息をのむような、そして、読んだ人が思わず誰かに話したくなるように、言葉で表現しきる人が作家だ。
作家は、文章を書くときだけは1ミリも恐れを知らない。作家は、この世でもっとも卑劣で醜悪で残忍な人間の、唯一の友人だ。彼らの話を聞いて書いてあげる、ただひとりの人間だからだ。
どんなに鼻持ちならなくて、むごたらしくて、汚くて、バカみたいな姿でも、作家は直視して表現する。人間の内面に隠された真実の探求をためらわない。
④ 幽体離脱できる
あなたは、あなたの体から出て、第三者の視線で自分を見ることができるだろうか? あなたが向かっている机から1.5メートル離れた高さが適当だ。そこからあなた自身を見下ろして、その距離から台本をもう一度見てみる。
ただ見守るだけでいい。あなたが今何をしているのか、どのような考えや感情になっているのか、それがわかればいい。
幽体離脱とは、自分自身を見る視点を一人称から三人称に変えることだ。第三者の目という前頭前皮質を活性化させ、「外から自分の心を読む術を学ぶことであり、自分の脳と距離をとること」だ。
あなたはあなたと別の人になるのだ。このような幽体離脱能力により、あなたは平常心を得て、自己の客観化の境地に達する。客観化は、あなたをプロフェッショナルな作家へと成長させるのに必要不可欠な資質だ。
作家に向いている人は、このような資質を備えている人である。あなたはどうだっただろうか。『韓国式 ストーリーのつくりかた』では、自分のストーリーをよりおもしろくアップグレードさせる具体的な方法を紹介している。気になった人はぜひ読んでほしい。
パク・ソンス著、松原佳澄訳、日経BP、2200円(税込み)

