2024年7月3日から発行される「新一万円札」の顔である渋沢栄一はさまざまな名言を残しました。ロングセラーになっている日経ビジネス人文庫『渋沢栄一 100の訓言 「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵』『渋沢栄一 100の金言』から、テーマごとに5回に分けて紹介します。第2回は人生についての名言です。
大きな目標へ、ゆっくりと急げ
Hurry, one step at a time
前途の遼遠(りょうえん)なる事物は、ゆっくり急いで努めねばならない。
【『渋沢栄一訓言集』一言集】
現代の言葉で言うと……
遠いゴールを目指すならば、着実に、かつなるべく早く進むべきである。
物事は迅速に始め、着実に前進させるべし
今は叶(かな)えられないかもしれない、そんな壮大な目標に向かって進む場合、道のりが遠いだけに、気ばかりが焦りがちなものです。
しかし、せかせかと走り回るだけで空回りしたり、気持ちだけ先走って行動が伴わなかったり、それではゴールはなかなか近づいてきません。
大事なのは、とにかく前進することです。
それも、「明日から」ではなく、「いつか環境が整ってから」ではなく、絶対に、「今日、この瞬間から」です。
急にスタートダッシュをかける必要はありません。
それよりも、なるべく早く一歩を踏み出し、着実にその歩みを重ねていくこと。
それは、大した負担ではありませんよね?
さあ、歩みはゆっくりと、けれどスタートは急ぎましょう、今日、ここから。
志が立派なだけでは、世間は信用しない
Thought it was kindness,but it was not
志がいかに善良で忠恕の道に適っていても、
その所作がこれに伴わなければ、
世の信用を受けることができぬ訳である。【『論語と算盤』常識と習慣】
現代の言葉で言うと……
どんなに素晴らしい志があり、思いやりの心を持っていても、それに従った行動ができなければ、世間の誰にも信用されるはずがない。
善意や親切は、行動で示して初めて意味を持つ
こんな話があります。
卵からかえろうとしている鳥のヒナが、卵のカラからうまく離れることができず、困っているようです。
これを見た人が、優しい気持ちでカラをむきました。
でも、そのせいで、逆にヒナは死んでしまいました――。
親切な心でしたことが、相手のためにならないこともある、という教訓です。
心と行動を一致させることは、難しいことですね。
ただ善意がある、というだけでは、人から信用を得ることはできません。
これに反して、志が多少捻じ曲がっていても、行動がすばやくて的確な人が、信用されることもあります。
そのような人のほうが、善意の人よりも早く、成功を手にする場合もあるかもしれません。
そんな理不尽なことのないよう、善意は必ず正しい行動で示したいものです。
目前の成敗は人生の泡に過ぎない
Success or failure is merely a temporary bubble
一時の成敗は
長い人生、価値の多い生涯に於ける
泡沫のごときものである。【「論語と算盤」成敗と運命】
現代の言葉で言うと……
そのとき、そのときの成功や失敗は、長い人生、価値ある生涯において、一瞬のバブルに過ぎない。
生まれたときからすでに「成功」している
そのときの成功とか失敗というものは、長い人生において泡のようなものです。それほど神経質になる必要はありません。
自分という存在がこの世に生まれてきたことを確率的に計算しようとすれば、すぐにわかります。まさに我々一人ひとりの存在は奇跡であり、生まれてきただけですでにあり得ないほどの倍率で勝ち残った「成功者」であることに。
記憶を超える古代からの世代で、自分の先祖のたった一人でもそのときに違う相手と結ばれていたら、今の自分は存在していません。
せっかく頂戴した命です。楽しく前向きに生きるべきではないでしょうか。
志した方向に向かって、必ず進みましょう。
行わない志は、空砲であり、無駄花に過ぎません。
最終的には、我々皆には死という同じ「結果」が待っています。誰も、避けることができません。しかし、「結果」が同じだから意味がないわけではありません。「結果」が同じであるからこそ、意味ある人生を送れる貴重な幸運に、私たちは感謝すべきです。
『 渋沢栄一 100の訓言 「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵 』
「満足は衰退の第一歩」「『他人をも利すること』を考えよ」――。企業500社を興した実業家・渋沢栄一。ドラッカーも影響された「日本資本主義の父」が残した黄金の知恵を、5代目子孫がいま鮮やかによみがえらせる。
渋澤健著/日本経済新聞出版/定価713円(税込み)
『 渋沢栄一 100の金言 』
「物事は順序を踏み、焦ってはならない」「何もせずに暮らすのは罪悪である」「なんでも政府に頼るのはだらしがない」「誰にも得意技や能力がある」「文明とは人々の知識能力で決まる」「みんなのためを口実にするな」――など「日本資本主義の父」渋沢栄一の100の熱い言葉を一冊にまとめました。
渋澤健著/日本経済新聞出版/定価880円(税込み)


