「なぜ?」の問いかけに、相手が納得する的確(論理的)な答えを返すことは意外に難しい。論理的に話すためには論理的思考力が必要なのだ。この論理的思考力は、失敗の原因追究手法のひとつである「なぜなぜ分析」のやり方で話のロジックがつながるように考えるトレーニングをすることで身につけることができる。『表現でロジックは変わる 「なぜなぜ分析」で磨く論理的言葉力』から抜粋・再構成してお届けする。

「なぜなぜ」の世界へようこそ

 極めて論理的な思考が求められる「なぜなぜ」の世界へようこそ。

 「なぜなぜ」とは、「なぜ、そうなったの?」に対して「~だったから」と答えるたびに、その答えに対して「では、なぜ、~だったの?」と、「なぜ?」の問いかけを繰り返していくことで、考えを掘り下げていくやり方をいう。

 まずは、ケンタさんとお母さんのやりとりで考えてみよう。

事例1

 ケンタさんのはいているズボン全体が泥で汚れているのを見て、お母さんはケンタさんに尋ねた。

お母さん 「なんで、ズボン全体が泥で汚れているの?」
ケンタさん 「それは、『なぜなぜ池』に落ちたから」

お母さん 「じゃあ、なんで『なぜなぜ池』に落ちたの?」
ケンタさん 「それは、『なぜなぜ池』の縁で滑ったから」

お母さん 「じゃあ、なんで『なぜなぜ池』の縁で滑ったの?」
ケンタさん 「それは、『なぜなぜ池』の縁まで近づいたから」

お母さん 「じゃあ、なんで『なぜなぜ池』の縁まで近づいたの?」
ケンタさん 「それは、『なぜなぜ池』に落ちたボールを取ろうしたから」

お母さん 「じゃあ、なんで『なぜなぜ池』に落ちたボールを取ろうしたの?」
ケンタさん 「それは、キャッチボールしていたときに、ボールが池に落ちたから」

 このように、「なぜ?」の問いかけに答えるたびに、その答えに対して「それは、なぜ?」と、しつこく問いかけを繰り返していくのが、「なぜなぜ」である。

 日ごろの会話のやりとりとは異なり、論理的につながるように答えていかなければならない。

ズボンが汚れる理由にもいろいろある(写真:Halfpoint/stock.adobe.com)
ズボンが汚れる理由にもいろいろある(写真:Halfpoint/stock.adobe.com)

「なぜなぜ」とは、表現と表現とをつないでいくこと

 「なぜ?」を論理的に繰り返していくには、表現がカギを握る。事例で説明しよう。

事例2

 木板の四隅にそれぞれ1本ずつ、合計4本の釘をハンマーで打ち込もうとしていた太郎さん。3本目の釘を板に垂直に立てて、釘の頭にハンマーを振り下ろそうとしたとき、部屋のどこかで何かが転がる音がした。

 太郎さんはハンマーを振り下ろす手を止めず、物音のほうに一瞬顔を向けた。

 「痛っ!」

 ハンマーを振り下ろした先には、釘を支えていた左手の人差し指があった。

 さて、ここで質問。

 なぜ「ハンマーが釘を支えていた左手の人差し指をたたいた」のか。

 論理的につながる答えを出すには、問いの文を要約して、いくつかの言葉に分解するとよい。要約するとは、「要するに、~ということ」といったように、人に伝えるのに必要なところだけを残して、文を簡略化することを指す。

 問いの文を要約すると、
 「ハンマーが左手の人差し指をたたいた」
 となる。

 さらに、要約した文を言葉に分解すると、次の3つになる。
 「ハンマー」
 「左手の人差し指」
 「たたいた」

 これらの言葉をもとに考えると、問いの答えは次の2つになる。
 ①「ハンマー」を主体とした答え
 ②「左手の人差し指」を主体とした答え

 したがって、問いと答えは、こうなる。

 問い:なぜ「ハンマーが釘を支えていた左手の人差し指をたたいた」のか?
 答え:それは、「①釘を支えている左手の人差し指に向かって、ハンマーが振り下ろされた」から。
    それと、「②ハンマーを振り下ろしたところに、釘を支えていた左手の人差し指があった」から。

論理的に考えるときは、キーワードを入れる

 さらに、別の事例で考えてみよう。

事例3
 太郎さんは、待ち合わせ時刻より10分遅刻した。待っていた花子さんは、顔を合わせたとたんに太郎さんを問い詰めた。
 「なんで、遅刻したの?」

 ここで、質問。
 「なぜ、太郎さんは遅刻したのか?」の問いに対して、太郎さんはどんな答えを返したらよいのか。

 このような問いだと、「家を出るのが遅れた」といった、頭に浮かんだ答えをそのまま出してしまいがちだ。

 そもそも「太郎さんは遅刻した」では、的確な答えが出にくい。なぜなら、「遅刻した」には「遅刻」に関わるキーワードが入っていないからだ。

 論理的に考えるとは、表現と表現とをつなげていくこと。そのためには、表現のなかにキーワードがしっかり入っていなければならない。この場合、遅れた時間が10分だとすると、その「10分」がキーワードになる。キーワードの「10分」を入れて、改めて考えてみよう。

 問い:なぜ「太郎さんは待ち合せ時刻に10分遅刻した」のか?
 答え:それは、「①太郎さんは、家を出るのが予定より6分遅れた」から。
   それと、「②太郎さんは、家を出たあと、財布を取りに家に戻るのに4分かかった」から。

 「なぜ、10分遅れたのか?」と問われれば、その「10分」の内訳を答えればよいと、すぐわかる。このように、キーワードを入れると、答えを出しやすくなる。キーワードを省いた表現で日ごろ会話をしていると、意外とこの点に気づかない。論理的に考えるときは、キーワードを入れることが肝心だ。

物事の本質をつかみ、論理的に説明できるようになるトレーニング手法を実践的に解説。

大量に情報が発信されるいま、それらに惑わされず論理的に問題の本質をつかみ言語化する力を身につけることが欠かせない。失敗の原因追究の際に使われる「なぜなぜ分析」の「なぜ?」を繰り返していくやり方で論理的言葉力を磨くトレーニング手法を実践的に解説する。

小倉仁志著/日本経済新聞出版/2200円(税込み)