「このイス、不安定だな!」――そう言われてすぐに対応できる人はいない。なぜなら、何が、どのように不安定なのか、そもそも「不安定」とはどういう状況なのかがわからないからだ。しかし、私たちは得てして、このような会話で問題を考えがち。「なぜなぜ」では、「なぜ?」の問いをどう表現するかで、的確な答えが出てくるかが決まるのだ。『表現でロジックは変わる 「なぜなぜ分析」で磨く論理的言葉力』から抜粋・再構成してお届けする。

問いの表現次第で、的確な答えが出てくるかが決まる

 「なぜ?」の問いをどう表現するかで、的確な答えが出てくるかが決まる。次の事例で考えてみよう。

事例6
 ヒロシさんは、スーパーマーケットで店員として働いている。
 ある日、ヒロシさんは、店長のトオルさんから「商品の見え方が悪い」と指摘を受けた。

 早速、ヒロシさんは考えた。
 なぜ「商品の見え方が悪い」のか。
 それは、「ううむ……」
 なかなか次の答えが出てこない。

 ヒロシさんがいくら考えても答えが出ないのは、無理もない。そもそも「商品」といっても、どの「商品」を指すのか、はっきりしない。また、「見え方が悪い」とは、どういう状態を指すのかもはっきりしない。

 さて、ここで質問。
 「商品の見え方が悪い」を、どのような表現に変えれば、ヒロシさんはしっかり考えることができるだろうか。

 「商品」と「見え方が悪い」の両方を、解釈がはっきりする表現に変える。たとえば、「商品『なぜなぜクッキー』が通路から見えない」といった表現だ。そして、「なぜ?」を考える。

 問い:なぜ「商品『なぜなぜクッキー』が通路から見えない」のか?
 答え:それは、「商品『なぜなぜクッキー』が棚の前面に並んでいない」から。

店長が「商品の見え方が悪い」と言うのだが、どうすればよいのだろう?(写真: Рудой Максим/stock.adobe.com)
店長が「商品の見え方が悪い」と言うのだが、どうすればよいのだろう?(写真: Рудой Максим/stock.adobe.com)

意味がはっきりしない言葉を使うと、考える方向も定まらない

 別の事例で考えてみよう。

事例7
 会社から帰宅した太郎さんは、ほっと一息つこうと、めったに座らないイスに腰かけた。その直後、太郎さんはつぶやいた。
 「なんだかこのイス、不安定だな」
 太郎さんは、続ける。
 「なんで、このイスは不安定なんだろうか」

 実際にイスに座って、「なぜ、このイスは不安定なんだろう」を考える場合は、表現が曖昧でも、現物を見ながら考えるので、なんとか答えを出すことができる。だが、現物を見ずに、問いの文だけで答えを出そうと思っても、答えがなかなか決まらない。

 事例6の「悪い」と同様、「不安定」という言葉の意味がはっきりしない。言葉の意味がはっきりしないから、考える方向も定まらないのだ。そこで、意味がはっきりするよう、「不安定」という表現を変える。

 たとえば、「座ると左右にゆらゆら揺れる」に変えて、「なぜ?」を考える。
 問い:なぜ「このイスは、座ると左右にゆらゆら揺れる」のか?
 答え:それは、「イスの座板に対して、足の付け根が揺れている」から。

 今度は、「ゆらゆら揺れる」ではなく、「ガタガタ揺れる」に表現を変えて、答えを考えてみる。そうすると、上記とは異なる答えが出てくる。
 問い:なぜ「このイスは、座るとガタガタ揺れる」のか?
 答え:それは、「イスの4本の足先と床面が平行になっていない」から。

状況をしっかり押さえて表現すれば、論理的な答えが出てくる

 さらに、別の事例で考えてみよう。

 事例8
 ある日、一郎さんは太郎さんが作成した書類をチェックしていた。しばらくして、記載内容に誤りがあるのを見つけた。早速、一郎さんは太郎さんに書類の誤りを指さしながら、「誤入力が見つかったけど、なぜかな?」と尋ねた。

 太郎さんが答える。
 「あっ、見間違えです」

 果たして、このやりとりは、論理的に合っているといえるのだろうか。
 実は、このやりとりは、全く論理的ではない。そもそも、問いと答えのどちらも表現が非常にあいまいだ。表現があいまいだと、論理的な思考から、どんどん遠ざかってしまう。

 「誤入力があった」……「誤入力」とは、どのような誤りなのか。
 「見間違えた」……「見間違えた」とは、何を何と見間違えたのか。

 実は、それだけではない。「誤入力があった」は、人によって解釈がブレる表現なのだ。「誤入力があった」は、一郎さんが見つけたときの「状態」を指すのか。それとも、太郎さんが誤って入力したという「行為」を指すのか。「誤入力があった」という表現(文)そのものが、極めてあいまいなのだ。

 一郎さんが誤りを見つけたときの「状態」を表現すると、次のようになる。
 「××の数字が、『109』ではなく、『100』 になっていた」
 そして、「なぜ?」を考える。

 なぜ「事象 ××の数字が、『109』ではなく、『100』になっていた」のか?
  それは、
 「(なぜ1)太郎さんが、『109』ではなく、『100』と入力した」から。

 表現を変えることで、論理的につながる答えが出しやすくなる。

 さらに、「なぜ?」を続けよう。では、なぜ「(なぜ1)太郎さんが、『109』ではなく、『100』と入力した」のか?
  それは、
 「(なぜ2)太郎さんが、使った資料のなかの『109』の『9』を『0(ゼロ)』と見間違えた」から。

 もし、ノートブックパソコンを使っていた場合には、キーボード上に「9」と「0」は隣同士にあることから、下記の答えもあり得る。

 なぜ「(なぜ1)太郎さんが、『109』ではなく、『100』と入力した」のか?
  それは、
 「(なぜ2)太郎さんが、『9』の隣にある『0(ゼロ)』キーをうっかり触ってしまった」から。

 状況をしっかり押さえたうえで、しっかり表現すれば、誰もが納得する、論理的な答えがすんなり出てくるのだ。

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大量に情報が発信されるいま、それらに惑わされず論理的に問題の本質をつかみ言語化する力を身につけることが欠かせない。失敗の原因追究の際に使われる「なぜなぜ分析」の「なぜ?」を繰り返していくやり方で論理的言葉力を磨くトレーニング手法を実践的に解説する。

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