そろそろ学校は夏休みですね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 読者のみなさんの中には、夏休みはお子さんの勉強を見るという方もいらっしゃるかと思います。夏休みの勉強は、多くのお子さんにとって人生で初めて取り組む「長期計画」。そこで今回は「長期計画の遂行」について考えてみたいと思います。

 おいおいおい、と、思った読者の方もいらっしゃるかもしれませんね。この連載のテーマは「頭がいい人とそれ以外の人の違い」です。長期計画が頭のよさと、どう関係するのか、と。

 けれど、偏差値35から東大に合格した僕の考えでは、「頭がいい人とそれ以外の人の違い」は、生まれつきの才能というより、日々の積み重ねの差が大きくて、長期計画の遂行も、後天的に頭をよくするために欠かせないピースの一つです。

 長期的な計画を立ててそれを実行していく、というのは非常に重要なことですが、いざやってみるとなかなかうまくいかない、という人も多いのではないかと思います。目的をしっかりと見据えて、努力を積み上げていくということが「できる人」と「できない人」は確かにいて、それは学力の面でもそれ以外の面でも大きな差を生むものではないでしょうか。

夏休みの勉強に「時間割」を作ってはいけない

 夏休みは受験の天王山といわれています。漫画『ドラゴン桜』の桜木先生もいっています。

『ドラゴン桜』第8巻・75限目「夏休みの過ごし方」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第8巻・75限目「夏休みの過ごし方」©Norifusa Mita/Cork
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 夏休みの勉強は受験の合否を分ける重要なものですが、そうであるにもかかわらずあまりうまく勉強できない、という人も一定数います。だからこそ天王山なんですよね。僕もそうでした。夏休みに勉強するぞ!と意気込んでも、夏休みの最後には学校の宿題すら終わっていない……なんてことがよくありました。

 夏休みの勉強のような長期計画をしっかりと遂行していくために必要なのは、気力だけではありません。スキルが必要です。というわけで、今日の本題は「長期計画を遂行するスキル」です。

 最初に断言しておきたいのは、長期計画を立案する際には、スケジュールを作ってはいけないということです。

 「え?」と思う人は、こちらの漫画を読んでみてください。

『ドラゴン桜』第8巻・75限目「夏休みの過ごし方」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第8巻・75限目「夏休みの過ごし方」©Norifusa Mita/Cork
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『ドラゴン桜』第8巻・76限目「マーキング勉強法」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第8巻・76限目「マーキング勉強法」©Norifusa Mita/Cork
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『ドラゴン桜』第8巻・76限目「マーキング勉強法」©Norifusa Mita/Cork
『ドラゴン桜』第8巻・76限目「マーキング勉強法」©Norifusa Mita/Cork
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計画には願望が混じりがち

 勉強に限らず、長期計画を「スケジュール」で考える人というのは多いですよね。

 「10時から12時まで数学!」
 「12時から13時まで昼休み!」
 「13時から1時間で英語を終わらせる!」

 ……といった具合です。

 しかしこれ、意外と非効率なんです。桜木先生も指摘する通り、事前に作ったスケジュールには願望が混じりがちで、うまくスケジュール通りにいかないということが多く発生します。突然のトラブルもありますし、気分の問題だってありますよね。「今は数学の気分!」ってときに、スケジュールが英語だったらやりたくないですし、単純に「気乗りしないな」ってこともあると思います。そして何より嫌なのは、そうやってスケジュール通りにいかなくなったとき、やる気も一気になくなってしまうことです。

 だからといって、無計画に勉強してもダメですよね。じゃあ、どうしたらいいか。桜木先生は、コンビニのチェーン展開の方法にヒントが隠されているといいます。

『ドラゴン桜』第8巻・76限目「マーキング勉強法」
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 「スケジュールを決めるな、ノルマを決めろ」というわけです。

長期計画はスケジュール式より、ノルマ式

 いつまでに、これだけのことを終えるという、ざっくりしたノルマだけを決めておいて、細かいスケジュールまでは考えないようにする。こうすることで、毎日の気分に応じて勉強できますし、ノルマが終わったら遊んでもいいと考えると、やる気も湧いてきます。「今日は英語の気分! 一気にやって、早く終わったらゲームでもするか」と、のびのび勉強できるわけです。また、突然の用事が入って予定通りにいかなくなっても調整がきくので、やるべきことを着実に実行できます。

 つまり、長期計画はスケジュールではなくノルマにした方が勉強ははかどる。

 だとしたら、スケジュールを作る必要はなくなります。

 必要なのは、ノルマを作るのに不可欠な「ToDoリスト」です。

夏休みの最終日に、何を終わらせていたいか?

 夏休みを前にした学生に、僕はよく、こんなことを聞きます。

 「8月31日、みなさんは何を終わらせていたいですか?」と。

 こう聞くと、みんないろんな答えをくれます。学生には大抵、夏休みの間に「終わらせておきたい勉強」があるわけです。「夏休みの宿題」とか「1学期の復習」とか、それを終わらせないことには、夏休みなんて終われない、というものが存在しています。

 まず必要なのは、それをきちんとリストにするということです。

 やるべきことが終わらないのはなぜかといえば、大抵の場合、そもそもその「やるべきこと」がきちんと明確になっていないままに、ただぼんやりと勉強していたり、仕事をしていたりするからなんですよね。

 だからこそ、長期計画を立てる最初の段階で、「終了時点で終わらせておきたいこと」を全部、箇条書きにしてまとめた「ToDoリスト」が必要で、長期計画の立案と遂行のポイントは、ここにあると思います。

やるべきことを細分化しよう

 重要なのは、細分化です。具体化といってもいいでしょう。最初の段階で、まず自分はこの長期計画の最終日に何を終わらせていればいいのか、ということを細分化して考えてみる、ということです。

 学生の多くは、なんとなく「数学を頑張りたい」とか「英語の復習をちょっとやっておきたい」とか、そういうぼんやりした目標しか持たずに夏休みに突入します。しかし、ぼんやりした目標ではやるべきこともあやふやで、結局、何も終わらないまま夏休み最終日を迎えてしまいます。

 長期計画で大切なのは、終わらせるべき課題が何なのかを最初に具体的にすること。

 「数学を頑張る」ではなく「この問題集を70ページ終わらせる」、「英語を復習する」ではなく「英語の1学期のまとめノートを作りなおす」など、タスクを細分化して、終わらせたいものを明確にすることです。仕事の計画にも、似たところがあるのではないでしょうか。

合格する人には「これだけやれば受かるリスト」がある

 東大生を取材すると、受験生時代に「自分が試験当日までにやっておかなければならないToDoリスト」を準備していた人が多いです。そこに「願書提出」といった事務的なタスクまで入れているケースもあります。

 この「ToDoリスト」は、言い換えれば「これだけやれば受かるリスト」です。このリストがあれば、「これだけはやりきる」という軸をブラさないで毎日過ごせます。しっかりゴールを見据えて勉強できるというわけです。

 僕のお勧めは、それぞれの「ToDo」をすべて付箋にして、一枚の紙の上に全部貼っておき、終わったら付箋を剥がしていくという勉強法です。付箋の枚数を数えておいて、毎日何個の付箋を終わらせればいいのかだけ把握しておけば、その日の自分の気分に合わせてどの付箋のタスクをやるかを選べます。数学をやりたい気分なら数学、英語をやりたい気分のときに英語をやるという具合に、無理なく取り組んでも、やるべきことはきちんと全部、終えられます。やらなくてはならないことの総量は見えているので、やりたいことをやりながら、やるべきことが終わるように、柔軟に調整していけばいいのです。

 いかがでしょうか?

 どんなに才能があっても、勉強を「継続」できなければ、なかなか「頭がいい」とはなりませんよね。自分に無理を強いることなく継続するために、ToDo型の長期計画を試してみていただければと思います!

 ちなみに「気分に合わせて勉強する」ことの大切さは、ジャパネットホールディングス社長兼CEO(最高経営責任者)の高田旭人さんも、強調されていました。そんな高田社長に東大受験したときのことを取材して聞いたお話は『 東大メンタル 』という本に書いたので、ご興味がある方はぜひ読んでみてください。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2021年7月21日付の記事を転載]

本コラムを基にした新刊が好評発売中です。偏差値35から東大を目指し、合格した著者だからこそわかる、「頭がいい人と、そうでない人の違い」とは? 「分解力」「裏技力」「アップデート力」など20個の力に分けて、漫画『ドラゴン桜』を使って解説します。「頭のよさ」をつくるのは、思考と行動、心の習慣。だから、誰だって、いつからでも、頭をよくできる! そんなメッセージをこめて、解き明かします。

西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)