「頭がいい人とそれ以外の人の違い」について、偏差値35から東大合格した僕(西岡壱誠)が考える、このコラム。今回のテーマは「タイプ別の勉強法」です。
「頭がいい人」がクリアすべき条件は数多くあると僕は思うのですが、なかでも「メタ認知」は重要なピースの一つです。「メタ認知」とは、要するに「己を知る」ということで、『ドラゴン桜2』で、桜木建二先生も言っています。

人は「保全型」と「拡散型」に分かれる
『ドラゴン桜2』ではさらに、受験生が「己を知る」ためのツールとして「FFS理論」が紹介されています。
「FFS」というのは、「Five Factors & Stress」の略称です。まったく同じシチュエーションが、ある人にとってはストレスで耐えられないのに、別の人には全然苦にならない、といったことがありますよね。このような個性による感じ方や行動の違いを5つの因子で説明するのがFFS理論で、組織心理学者の小林惠智博士が開発したものです。5つの因子とは、具体的には……
- 保全性:維持しながら積み上げる力
- 拡散性:飛び出していこうとする力
- 弁別性:白黒はっきりさせる力
- 受容性:無条件に受け入れる力
- 凝縮性:自らの考えを固めようとする力
……の5つです。
この5つのなかで、「保全性」と「拡散性」は、先天的に決まっている要素が強いそうです(逆にいえば、ほかの3因子は後天的な影響も強いということですね)。保全性と拡散性には相反するところがあり、人間はだいたい、保全性のほうが拡散性より強い「保全型」か、拡散性のほうが強い「拡散型」のどちらかに分けられます。
みなさんはどちらのタイプでしょう。『ドラゴン桜2』に、簡単な見分け方が載っているので、紹介しますね。
「本の読み方」だけでわかるタイプ診断
いかがでしょうか?
この2つのタイプの違いは、ざっくりいうと……
- 保全型:慎重で、丁寧に物事を進めたいタイプ。
- 拡散型:自分が興味を持ったことを、どんどんと進めたいタイプ。
…… です。こちらの漫画を読むと、分かりやすいと思います。
もっと詳しく知りたい方は、こちらの サイト でも診断できますし、『 ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型 』や『 宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み 』といった、WEB診断付きの本もあります。
「東大生に多いタイプ」は、特にないけれど
僕は今まで、多くの東大生にFFS診断をしてもらってきましたが、「東大生にはこっちのタイプが多い」ということはありませんでした。ただ、みなさん、自分のタイプに合った勉強法をうまく選んでいて、頭がいい人というのはやっぱりメタ認知にたけているんだな、という印象を受けます。
では、「保全型に向く勉強法」「拡散型に向く勉強法」とは、具体的にはどんな勉強法でしょうか。この問題を探るため、僕は今回、『ドラゴン桜とFFS理論が教えてくれる あなたが伸びる学び型』の著者である古野俊幸さん(古野さんのプロフィルなどはこちら)を取材しました。ここからは、古野さんとのディスカッションから見えてきた、それぞれのタイプに合う勉強法を紹介していきたいと思います。
慎重な「保全型」に向く勉強法とは?
まず、保全型です。日本人の65%は保全型といわれていて、多数派です。
保全型は、慎重で、丁寧に物事を進めていきたいタイプでしたね。だから、どちらかというと基礎を積み重ねるのが得意です。漢字の書き取りや計算問題、あるいは英文法といった基礎問題で失点することがほとんどない、という人はだいたい保全型です。逆に、応用問題には少し気後れしてしまうところがあります。
要するに、簡単な問題を繰り返し解くのは苦にならない。けれど、思い切って難しい問題にチャレンジしたときに「できない!」となるのが嫌というのが保全型です。でも、応用問題に初めてチャレンジして、いきなりパーフェクトに解ける人なんてほとんどいませんよね。それなのに、応用問題で挫折するのが怖くて、いつまでも基礎固めばかりやり続けてしまうというのが、保全型の弱点といえるでしょう。
保全型にはもう一つ、細かい指示がないと動きにくいという弱点があります。逆にいうと、言われた通りにやるのは得意で、いい先生がいて「いいか、この問題集のここからここまでのページを、こういうやり方でこの日までに終わらせるんだぞ」と、しっかり指示してもらえれば、非常に高いパフォーマンスを発揮します。
古野さんによると、拡散型の人には、独学しながら自分に合ったユニークな勉強法を開発できる人が多いそうですが、保全型は逆に、そういうことが苦手です。
独自性なんて不要。「完コピ」勉強法でいけ!
けれど、僕が知っている「保全型の東大生」に、ほとんど塾に通わず、独学で合格した人がいます。不思議だなと思って、よくよく話を聞いてみると、その人は高校生のころ、予備校などが配っている「合格体験記」を、よく読んでいたそうです。過去に東大に合格した人のなかに、自分と性格やタイプが似ている人はいないかと探して、「この人だ!」という人を見つけたら、その人の勉強法を「完コピ(完全にコピー)」したそうです。それで迷うことなく勉強に集中できて、合格することができたのだとか。
つまり、独自の勉強法を開発できないという保全型の弱みを、「まねする対象」を見つけることで克服したわけです。「完コピ」はある意味、保全型ならではの技ですから、強みを生かして弱みを克服したともいえます。
以上をまとめると、保全型の勉強法のコツは……
- 基礎固めが得意でケアレスミスが少ないという強みを最大限生かす
- 応用問題にチャレンジする習慣を意識してつける
- 効果的な勉強法について、第三者にアドバイスをもらったり、書籍やインターネットで情報を集めたりする
……ということになると思います。
次に拡散型です。
拡散型は、自分が興味を持ったことを、どんどん進めたいタイプでしたね。例えば、「拡散型の東大生」には、難しい応用問題をゲーム感覚で楽しみながら解けちゃう人が多いです。簡単な問題よりも、難しい問題に燃える。古野さんによると、拡散型の人は「ひらめき」が好きで、だから、ひらめきを求められることが多い応用問題と相性がいいのだと思います。
一方で、拡散型は、基礎をコツコツと積み上げるのは苦手で、漢字の書き取りや計算問題など、正答率が高い分野で取りこぼしをしやすいのが弱点です。また、いくら応用が得意といっても、応用問題をパーフェクトに正解するのは、基礎問題より難しいので、成績に波が出やすいのも泣きどころです。こっちのテストはとてもよかったけど、あっちのテストは全然ダメだった、という経験を持つ学生が多いのが拡散型です。
そんな拡散型の学生が基礎力を高めるには、どうしたらいいのでしょうか。
「コツコツ勉強」が苦手なら「応用→基礎」の順で!
「拡散型の東大生」によくあるのは、今の実力よりもレベルが上の参考書をあえて選んで、ちょっとあやふやなところがあっても何とか1冊読み通してしまうといった勉強法です。何とか読み通すうちに、あやふやだった基礎も理解してしまう……ということができる人がいるのですね。
要するに、保全型の東大生が「基礎→応用」へ手堅くコツコツ進んでいくのに対して、拡散型の東大生には「応用→基礎」の順で学んで、うまくいっているケースが多いようです。例えば「英単語帳を使ったことがない」という人がいたりします。英語の長文問題をひたすら解いて、そこで出てきたわからない単語をその都度、覚えていく。この勉強法なら市販の英単語帳は要らない、というわけです。
「言われた通り」が嫌な人は、素材をたくさん用意しよう!
拡散型の人は「言われた通りにやる」のが苦手な代わりに、オリジナルの勉強法を開発して成功しているケースが多いです。逆にいえば、自分に合った勉強法を自力で確立できるかどうかが、勝負どころなのかもしれません。
僕自身は保全型なのですが、拡散型の学生に、僕がお勧めしたいと思うのは、とりあえず参考書や文房具をたくさん用意することです。拡散型の人にとっては「自分に合う参考書」や「自分に合う文房具」との出合いがとても重要なので、最初の間口は広げておいたほうがいい気がします。なおかつ複数の参考書、複数の文房具があれば、それらを組み合わせたオリジナルの勉強法を開発しやすくなりますよね。
以上をまとめると、拡散型の勉強法のコツは……
- 応用問題を解くのと同時並行で、基礎も固める
- 基礎が弱くなりがちなことを意識し、ケアレスミスに留意する
- オリジナルの勉強法を開発するため、参考書や文房具などの「素材」は多く集める
……となるでしょう。
いかがでしょうか? 今回は保全性と拡散性について考えてみました。裏技的な話が多かったかもしれませんが、自分のタイプに合った勉強法を選ぶのは大事ですよね。
[日経ビジネス電子版 2021年7月30日付の記事を転載]
西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)





